香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

Scott Rao

ナチュラル・ローストについての考察

Scott Raoが定義するナチュラルローストはエッセンスにすると以下の一文だけである。

Allways-declining ROR

これは要するに、加熱加速度(ROR)を最初はMaxで開始して、豆のDropまで常にRoRを減らし続ける、しかもなるべくなだらかに、というものであるが、実際にやってみれば、これは結構自然の摂理に反している。かなり頑張っても下記のグラフのように、普通は1ハゼ開始からしばらくして急にRORが下がるクラッシュ、そしてそのリバウンドのフリックが続く。(RORのカーブは青いライン)

UnNaturalRoastKochare

以下はスコットラオの説明の一部である。

焙煎プロセスのうち、2/3程度が吸熱反応とされ、これは豆の外側から内側に熱を伝えている状態。
そして焙煎の初期段階では、Inner/Outer bean のΔTは50℃かそれ以上あると推測される。
早焼きではΔTのピークは大きくなり、ゆっくり焙煎すればΔTは小さい。

加熱していくと最初は front of evaporation (蒸発の最前線)は一番外側の層だが、 それが徐々に内側に進んでいく。内部は外側より温度が低く水蒸気が植物繊維(cellulose)の中に閉じ込められたまま膨張しようとするため豆が膨らんでいく。

そして、1ハゼ時直前には植物細胞の内部気圧は5-25気圧にも達する。
限界まで行くと1ハゼを起こし水蒸気とCO2を放出し、一時的に気化熱が豆の表面から熱を奪うためにクラッシュが起きて、水蒸気の放出が終わると今度は反転して豆中心部の温度が一気に上昇するフリックが発生する。

要するに、普通に焙煎していくと、RORのカーブは:

 - FCの直前でRORがflatになり、その約1分後に plummets、さらに1分弱でreboundする

ということである。

さてこれを防ぐ方法はいろいろ書いてあるが、一番の基本はDry End以降は火力を少しずつ下げていき、水蒸気を徐々に放出させながら豆の外部・内部の温度差を小さくしていき、静かにFC開始に入ること、だと理解した。ただしだからといって、だらだらとメイラードフェーズを引っ張るとRORがフラットやマイナスに近くなり、(メラノイジンの重合が進み)甘さがなくなるそうだから厄介である。

まるでロケットが地球に帰還するときのようにFCには正しいアングルで入る必要がある、ということである。するとクラッシュはほとんど起きず、ゆえにリバウンドも起きにくくなる。
以下は僕が焙煎したかなり完成度の高いナチュラルローストの例である。

NaturalRoastHaruSuke

このコーヒーは焙煎直後にカップを確認したが、期待どおり上品な甘みと酸味が素晴らしく仕上がっていた。数日置けばきっと素敵なフレーバーが立ち上がってくるものと思われるが、お客さんの注文分であったため、残念ながら手元には残っていない。

ところで僕は、ナチュラルローストが成り立つのはハイローストくらいまでだと想定している。

というのは、DTRという考えがあり、1ハゼ開始以降のデベロップメント・フェーズを引っ張り過ぎるとやはり甘さが消える、とされているが、RORをどんどんと小さくしていくと、例えば豆温度で200℃で1ハゼが来たものを、225℃まで上げたいと思ったら、異常に長いデベロップメント・フェーズになってしまうからである。

そもそも深煎りのロースト臭を楽しむのであれば、こんな理論はナンセンスで、まぁせいぜい、珈琲豆を炭化させないように均等にじわじわ熱を入れて焼いていく、というくらいの割と単純な理論でどうにかなるようにも思われる。

確かオオヤミノルさんの本で見たような気がするが、世の中には、「一本焼き」と称して、最初から最後まで同じ火力で一気に焼いてしまう人もいるそうである。きっと深煎りだから成り立つ世界だ
この場合1ハゼ以降、発熱フェーズに入ったらバチバチと元気よく暴走気味に焙煎が進むので、煎り止めタイミングは相当にシビアになるだろう。

それはそうと、ちょっと検証してみたいことがある。

・焙煎開始時にどんなに強い火力で熱しても、攪拌している限り豆の表面が焦げることはない。

煎り上手ならこういう検証も簡単である。早速明日あたりやってみたいと思う。

Scott Raoの焙煎理論の実践比較

Scott Raoの著作、THE COFFEE ROASTER'S COMPANIONCOFFEE ROASTING - BEST PRACTICE- を読むと、全編を通して主張していることは以下の一文にまとまる。

For the vast majority of the world's roasters, achieving a steadily declining ROR and a 20%-25% DTR were revolutionary ideas that improved their average roast quality.

1) 投入から排出まで一貫してROR(温度上昇率)をスムースに下げ続けること
2) FC開始から排出までの時間(Development Time)を、全体焙煎時間の20-25%にする


彼はこれの科学的根拠は示せていないが、多数の焙煎機を経験して、何百というロースターを指導してきた結果、統計的にそうなる、と演繹法的に述べている。そして、こういったプロファイルを安定的に得るためにはどうすればよいか、ということを2冊の本に延々と記述しているわけであるが、ちょっと現実的ではないことも要求しており、実際にやろうとするとそう簡単にはいかない。Rao氏もこの理論は浅煎り~中煎りまでには当てはまるが、それ以上深い焙煎は検証できていない、と白状している。

そこで0か1かのレベルで完璧を目指すのではなく、理想形に近づけるという考えに切り替えている。特に「煎り上手」のように外気が常に流入する形状の焙煎器具では、そもそも安定した温度測定は不可能で、グラフの波打ちを頭の中でスムージングしながら、実際の豆温度を推定するしかない。

さて、今回はちょうど横浜のカフェに納めるブラジル500gを3バッチ焙煎する中で、焙煎指数は一致しているのに、明らかに感じる香りの違いが出ていたため、7gずつサンプルを取っておき、それらのプロファイルを検証してみた。

Brazil_Samples_焙煎豆

焙煎指数(重量減%)
Sample1:14.9%
Sample2:14.8%


仮定
2回目の焙煎(Sample2)の方が香りが良いと感じたわけであるが、これは1回目に発生したクラッシュ&フリックというRoRの大きな波打ちを、極力抑えるように火力調整したからだと思われる。
Rao氏の言う、DIPという操作である。

以下の2つのプロファイルを比べて頂きたい。

Brazil_500g_Sample1
Brazil_500g_Sample2


主な違いは1ハゼ開始以降である。
投入温度は同じだが、サンプル2の方が焙煎時間は少し長く、排出温度は少し低い。
これは経験から、焙煎指数を揃えるための直感的なバランス操作である。

操作内容が分かるように重ねたグラフが下記になる。
色の薄いラインがサンプル1、濃い方がサンプル2である。

Brazil_500g_Samples_重ねて解析

--------------------
焙煎の翌日、粉に挽いてカッピング評価してみた。
光の具合で写真の上では色合いに差がある様に見えるが、左右を逆に置くと明るい方が逆転することから、粉に挽いても見た目の差はないものと考える。

一方で、香りはサンプル2の方が甘く強く、サンプル1はロースト臭が少し強めに出ている

Brazil_Samples_珈琲粉


ブレイク前の様子はこんな感じ。
Brazil_Samples_Break前


ブラインドカッピングの結果

いつものようにカップの位置をグルグルと変えて、どちらのサンプルか分からないようにしたうえで、ブラインドカッピングとした。

味の差、フレーバー差は確実にあり1つは苦みが強めで微かな雑味も感じるのに対して、他方は心地よい酸味が残っておりロースト臭も少な目で、明らかにこちらがサンプル2だと思い、確認したところ、やはり正解であった。

ただしどちらの焙煎方法が正しいという話ではなく、そもそもこのブラジルはハイ~シティローストに焼いて苦みとローストの香りを意図的に強めているので、人によってはサンプル1の方が美味しいと感じるだろう。

~大事なことは、「こう焼けばこうなる」という理論が確かめられた、ということである~

Rao氏が言うように、極端なCrash&Flickは生豆の持つ繊細なフレーバーを損ねることは間違いなさそうである。しかしこのブラジルは普通に焼くと特に Crash&Flickが大きく出やすいのである。

なお、本格的にやるなら3つずつ同じ豆のサンプルを作って合計6個のカップをブラインドで全問正解できるか、で検証すべきであるが、今回はお店のものなのでそこまでは出来なかった。

そしてバッチ毎の多少のブレはあっても最終的にすべてのバッチを混ぜてしまうので均質化され、最終的には毎回同じ味に仕上がるのである。
Brazil_Samples_Blind_Cupping


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