香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

Artisan

煎り上手用のArtisan 設定ファイル

KAZUHICOFFEEの提供する焙煎ロガー付きの煎り上手を使う際のArtisan Scope の設定ファイルを公開します。

このファイルは現在、KAZUHICOFFEEが煎り上手を使う際に使用している設定ファイルですが、よりコントロールしやすい設定を探して頻繁にパラメータを変えていますので、推奨設定も随時更新される予定です。


<2022年6月5日現在>


ついでに、最近投稿したロガー付き煎り上手の使い方と、開閉フラップの作り方の動画のリンクも紹介します。なお、ロガー対応の煎り上手は、近日中にサポート付きで販売を開始する予定です。

ラズパイでArtisanを使う方法

丁度ブログのコメントで質問が来たので、ここでラズベリーパイ(Raspbery Pi 4B)を使って Artisanを使う方法をまとめてみたい。まずラズパイであるが、Artisanは結構重たいソフトなので、モデルとしては最上位の4Bを使う方が無難である。実はまだ3Bで動作するか調査したことはないのであるが。

一方、メインメモリについては、2GB/4GB/8GBと選べるが、2GBのもので十分に動作することは確認済みである。

さて、OSについてであるが、今月ついに 64bit版「Raspberry Pi OS」の正式リリースが発表されたが、現在のラズパイ用Artisanインストーラは32 bit用なので、今は64bitに飛びつく必要はない。ちなみに僕が使っているのは Raspbian OS は Debian 10.11 ベースの 32bit版である。

$ getconf LONG_BIT
32

$ cat /etc/debian_version
10.11

# uname -a
Linux pi2 5.10.83-v7l+ #1499 SMP Tue Dec 7 14:08:09 GMT 2021 armv7l GNU/Linux

念のため、Artisanの使用メモリを確認すると以下のとおりである。

〇Artisanを立ち上げる前
pi@pi2:~ $ free
              total        used        free      shared  buff/cache   available
Mem:        3930868      189572     2600300       74232     1140996     3526776
Swap:        102396           0      102396

〇Artisanを立ち上げた後
pi@pi2:~ $ free
              total        used        free      shared  buff/cache   available
Mem:        3930868      305716     2468376       89936     1156776     3394928
Swap:        102396           0      102396

Artisanのもっさりとした動作からもっとメモリを消費しているかと思ったが、実際は113MB程度でありメモリ使用量はさほど多くない。体感上も、2GB版と4GB版のラズパイで操作性の差は見られない。

さて、ラズパイでArtisanを使うためには王道は、Phidget社の熱センサーボードと対応する熱電対(K-Type)を使うことである。この前提で、セットアップ手順を簡単にまとめる。

1. gcc コンパイラを用意
2. USBドライバをインストールする
3. Phidgetドライバのソースコードをダウンロードして、コンパイル、インストールする
4. 必要に応じてUSBのポート設定を行う

1については割愛、2については以下のようになる。
% sudo apt update
% sudo apt full-upgrade
% sudo apt install libusb-1.0-0-dev

3についてはこんな感じ。
% cd /tmp
% wget http://www.phidgets.com/downloads/libraries/libphidget.tar.gz
% tar zxvf libphidget.tar.gz
% cd libphidget-2.1.9.20190409/
% ./configure
% make
% make install

僕は上記のようにセットアップしたが、うーむ、もしかしてコンパイルしなくても、これだけでも良いかも(^^)

$ sudo apt install libphidget22

4については取り合えず、PhidgetボードをUSBポートにつなげて、どう認識されているか確認する。

% usb-devices | grep -i phidget

T:  Bus=01 Lev=02 Prnt=02 Port=03 Cnt=03 Dev#=  8 Spd=12  MxCh= 0
D:  Ver= 2.00 Cls=00(>ifc ) Sub=00 Prot=00 MxPS=64 #Cfgs=  1
P:  Vendor=06c2 ProdID=003f Rev=01.1a
S:  Manufacturer=Phidgets Inc.
S:  Product=HUB0000_0
S:  SerialNumber=619152
C:  #Ifs= 1 Cfg#= 1 Atr=80 MxPwr=100mA
I:  If#=0x0 Alt= 0 #EPs= 1 Cls=03(HID  ) Sub=00 Prot=00 Driver=(none)

後は Artisan側の設定かな。
Phidget 1051/1048であれば ConfugureのDevice⇒Meterタブで Phidgetのその型番を選び、VINT HUB接続であれば、Machineタブから Phidget VINT TMP 1101 を選ぶ。 

Phidget1051

最後に気を付ける点を挙げるなら、USB Type-Bの接触不良が結構多いのでしっかり挿し込むことくらい。ちなみに 百均などでも手に入る USB Type-B/C アダプタを使えば、USB Type-C ポートにも接続可能である。

<追記>
Artisanのインストールも必要でした。当然ですが。

Artisanのwebsiteから最新パッケージをダウンロードしてインストールする。

% sudo dpkg -i  artisan-linux-2.4.6_raspbian-buster.deb


クラウドファンディングに挑戦

実は今月、クラウドファンディングで、おうちでクラフト焙煎教室x科学的アプローチ、というプロジェクトの参加者(支援者)を募ろうと計画している。

僕が若かった昭和から平成時代前半には、ちゃんとしたコーヒーは喫茶店や専門店で飲むものであり、家飲みはインスタントか、せいぜい挽売りのコーヒー粉をペーパーで淹れるくらいであった。でも僕は大学1年生のときに既に木製の手廻しコーヒーミルを持っていて豆で買っていたが、今から思うと焙煎から時間が経っていたのか、挽き立てでもちっとも膨らまなかったように思う。

自分で焙煎を初めて試みたのは社会人になった直後で、手網から始まって、いるいるという道具での焙煎、そして電気式焙煎機と進んでいった。
いるいるノパンフ

時代はずっと進んで今ではどうだろう。自宅でのコーヒー焙煎がこんなに身近になったのは、やはりSNSの影響が大きいと思う。ベールに包まれていた焙煎の神秘性がすっかり暴かれて、今では、なんだ、こんなに簡単に焙煎出来るぞ、と気が付いた人が、さらにSNSや動画で発信したりするので、少しでも焙煎に興味を持った人なら直ぐに色んな情報に目が行くだろう。

そんなかで僕がやりたいのは、おなじ焙煎教室でも、科学的アプローチ である。

クラファンの紹介文の中に書いている内容を少し抜粋すると、コーヒー焙煎にもナビゲーションがある、それは焙煎ロガーだ、ということである。

もしコーヒー焙煎を車の運転に例えるならば、こんな感じである。

目的地  ⇒ 焙煎度、目的のフレーバー、味
方位磁石 ⇒ 温度計(豆温度)
地図   ⇒ 珈琲豆の様子、音、匂い
カーナビゲーション ⇒ 焙煎ロガー

そう、僕がやりたいのは、煎り上手という、乗り物で言うと原付バイクか自転車にみたいなものにも、ナビゲーションをどうぞ、ということである。自宅焙煎をしている人も、しばらくやっていると、ほとんどの人が温度計の重要性には気が付き、そこまではなんとか導入しようとするが、焙煎ロガーにまで辿り着いている人はほんの一握りである。温度計だけではコンパスと地図だけでドライブするようなもので、やはり現代ならカーナビ付きでドライブしたいだろう。焙煎だって同じである。

今回のプロジェクトを手始めに、自宅焙煎にも一気に焙煎ロガーを浸透させていく、ちょっとしたムーブメントを起こしたいのである。

現在、事前公開中であるが、正直、まだあまり手応えを感じるところまでは来ていない。
なんとか賛同して頂ける方が少しでもいて、今回の定員の40名に到達してくれることを祈りたい。

中身を読んで頂ければ、内容に対してかなり良心的な価格設定にしていることを理解して頂けると思う。しかしこれでも高いと言われるのであれば、真摯に受け止めて、なんとかギリギリまでコストを削って価格を下げてでも、一人でも多くの方に焙煎ロガーの面白さ、有用性を味わって頂きたいと思っている。 一般公開まであと1週間ほど。公開後はリターンの設定は変更できなくなるので、今のうちに皆さんの率直なご意見を頂けるととても有難い。是非よろしくお願いいたします。

CAMPFIRE クラウドファンディング(事前公開)

ドライブイメージ


煎り上手焙煎と相性の良い網の研究

煎り上手の焙煎は、ガスコンロの上に直接かざすよりも、間に網を置いた方がずっと使い勝手がよくなるが、どんな網が適しているかという課題がある。網を使うことのメリットは以下の3つである。

  • 熱源が面状になり、均一に火を当てやすい。
  • 網自体も熱容量があり、煎り上手を網に押し付けることで伝導熱を積極的に使える。
  • 煎り上手を網の上に置いて休める
セラミック網+煎り上手
焼き肉網+煎り上手

網の種類としては、普通の焼き網か、セラミックがついた餅網のようなものに2分されるが、前者は煎り上手に直接火が当たるのに対して、後者は間接的になり、まるで高級焙煎機で使われる二重ドラムのような恰好になる。それぞれのメリット・デメリットは以下のとおり。

  • 焼き網:加熱の加速度がよく一気に温度を上げれるが、RORがピーキーな動きになりやすい。
  • もち網:安定した温度上昇が可能だが、失速気味のときに一気に過熱しようと思っても出来ない
ちなみに、百均の網は針金が細くて、10回程度使うと既に金網が崩壊して使い物にならなくなる。やはり金物屋で購入したい。僕が今回見つけたのは、ホルモン焼き網というもので、如何にもガッチリと太い針金で作られている。一方、セラミック網は最初、近所のスーパーSANWAの500円のものを買ったら7,8回の使用で金属が崩壊してきたので、カインズホームで買い直し。こちらは300円程度と安い。
焼き網2種類

今回は、セラミック網の加熱力の弱さを補うために、真ん中にドリルで7,8個の穴を開けて直火が少しでも通るようにしてみた。
セラミック網の改造

さて、これらを使って、セラミック網で3回、ホルモン網で2回焙煎してみた。
Artisanのプロファイルは下記のようになったが、正直、5回目の焙煎は油断していてちょっと失敗気味。よそ見している間に一気に過熱し過ぎて慌てて火から遠ざけて強引にリカバリした形。まぁ、それでも結果的にはトータルのバランスはさほど悪くないところが、Artisanのパワーである。

まず、セラミック網+煎り上手での焙煎3連発。東チモールだけはインドネシアに近いのでフルシティにしてみたが、その他はハイローストに仕上げた。最初の水抜きフェーズ(緑)がどうしても長くなりがちであるが、その後は徐々に加速してトータルでは悪くない。特にDTRという指標を見ると、Scott Raoが理想とする、20-25%に容易に収めることが出来る。
セラミック網での焙煎3連発

次は、煎り上手に直火が当たるホルモン網での2連発、4回目、5回目。
どうしてもRORのライン(青)が暴れやすいが、焙煎をコントロールする楽しさはより大きい。
5回目は前述したように、よそ見のせいで、中点温度が140℃もあり、リカバリのために、RORを一度ゼロにして故意に失速させている。その後は通常っぽいラインに乗せて、DTRは理想範囲の24.6%。

焼き肉網での焙煎2連発

5つの焙煎の焼き上がりはこんな感じ。
今回の豆はどれも今回初めてサンプルで取り寄せたもので、明日以降飲むのが楽しみである。
煎り上手焙煎5連発

ちなみに、雲南省のトリプルファーメンテーションという珍品も入っており、これは昨年のSCAJで入手したものである。生豆は見た目が結構汚く、欠点豆が区別できないほどで、匂いもかなり強烈。完熟果実のような発酵臭がプンプンする。しかし焙煎すると意外にも均一な色合いに焼き上がり、穏やかな香りになっている。不思議な豆である。

雲南トリプルFermant

Identical Roast の実践

コーヒー豆を焦げ茶色になるまで適当に焙煎するだけなら、それこそ百均で売っているような身近なものでも工夫次第でいくらでも出来てしまうし、まぐれで案外、美味しく焙煎出来てしまうこともあるかもしれない。しかしそういった簡易的なものでは絶対にできないこととして、うまくいった焙煎の再現という課題がある。これを、取り合えず Identical Roastと呼ぶことにする。

Papua400g_Batch1&2

例えば、上記の例は昨日、僕が Cormorant CR600焙煎機を用いて、横浜のKOPE花伝カフェさんの豆を2回に分けて焼いたときのプロファイルである。バッチ量、投入温度を揃えて、さらにリファレンスとなる焙煎プロファイルをバックに表示させて、そのラインを辿るように火加減や風量を調節していく。そして、豆温度がターゲット温度になったら素早く排出して迅速に冷ます、ということをやっているが、重ねてみると、中点温度こそ少しずれているが、ほぼ同じラインに乗っていることが分かる。
Papua400g_焙煎度再現

この2例ではAUCは1回目が243、2回目が241である。これは実は狙って同じ数字に揃えてみた。

この例のように、AUCの値まで一致すると、さすがに重量減でも18.5%と完全に一致、香りにも何も違いが感じられない、完璧な Identical Roastが完成する。
PapuaIdentical焙煎

なかなかここまで一致させるのは大変で、通常は0.1-0.5%程度の誤差は出るが、まぁ、飲んでわかるほどの差ではない。そしてArtisanを使えばこの程度の追い込みは、ほぼ成功する。

Identical Roastの実践で重要なポイントは、豆温度の測定開始点とも言える中点温度を揃えることである。中点に至るまでの下がり続ける温度は仮想のものであり、何の温度でもない。
そして中点温度を揃えるためには、投入時の生豆の温度まで考慮することが必要になる。

冬のログハウスは夜間には零度前後になることもあり、ログハウス内に置いてあった生豆は冷え切っており、朝一番にそのまま焙煎しようとするとなかなか思い通りにいかない。そこで最近は、前日から焙煎予定の生豆を暖かい室内に取り込んでおくようにし始めた。

ログハウスに暖房を入れておいて午後から焙煎するような場合は問題ない。例えば焙煎機に火を入れる前に生豆を投入して回してみたところ、ログハウスの室温とほぼ一致していることが確認できた。15.1℃と15.3℃である。
室内温度と焙煎機ET,BT


さて、この概念を煎り上手にも応用して、中点温度を狙いどおりにしていこう、というのが次の目的で、取り合えず、煎り上手の中に生豆を少し多めに放り込んで生豆の温度を計ってみたところ、やはり室温とほぼ一致している。まぁ、当たり前なのだが、実際にこうして温度計で比べると、やはり納得してしまう。
煎り上手と室内温度

さて次は、煎り上手の予熱温度と生豆の温度の差が中点温度にどう影響するかを調べていきたい。

前提として投入する生豆の量は毎回ピッタリ70gとする。当然ながら生豆が冷え切っていると、焙煎器を同じ温度に予熱しても、中点温度は低くなるはずである。 豆の熱容量 vs 焙煎器の熱容量 である。ただし、そもそも熱容量の小さい煎り上手の場合、予熱しても、生豆を投入するために火から離すと直ぐに温度が下がり始めるため、素早く投入しなければ誤差が大きくなる、という問題がある。

煎り上手と生豆の温度
室温よりも冷たい生豆を入れて、しばらく放置すると温度が下がっていく様子が測定できる。

煎り上手テスト - Artisan ロガーなし vs 有り 比較

ブルンジ焙煎by煎り上手(粉)横

今日は僕のクラウドファンディングの中で使いたい動画を、パートナーのT氏に撮って頂いたが、それは 煎り上手だけで焙煎する場合と、ロガーを繋げて焙煎する場合の比較テストでもあった。使った生豆はブルンジ水洗式のニュークロップで、密度が高く火が入りにくい豆である。この手の豆は焙煎初心者には少々手強い。合計4回焙煎をして、最初の3回はArtisanなし、4回目だけいつものようにArtisanを繋げて焙煎した。Take-1、Take-2は1ハゼ開始から2分程度の中煎りを目指して焼いた。しかし温度計がないとつい火に近づけ過ぎてしまう。

Take-1:説明書どおり予熱なしで焙煎。5分いかずにバチバチ爆ぜだしたので7分弱で排出
Take-2:Take-1よりは時間をかけた。しかし結果は逆に少し浅くなってしまった
Take-3:2ハゼまで焼く意思を持って10分以上かけて焙煎。2ハゼ開始から10秒で排出
Take-4:Artisan画面を見ながらミディアムローストに焙煎 (プロファイル参照)


焙煎直後ではあるが、早速カッピングで味を確認。

結果は予想以上に歴然とした差が出て、大変興味深いものであった。つまり焙煎豆の見た目は大差ないのに、コーヒーにしてみると圧倒的に Take-4だけが美味しく、その他は明らかに美味しくない。Take-2に至っては芯残りが酷く、廃棄するしかないレベルであった。深く煎ったTake-3は苦みを強調した誤魔化しの味。ミルクを入れればそれなりに美味しいかもしれないが、ブルンジの良さは消失している。

まず焙煎豆の様子を全体からみたのが下記の写真。この様子だけを見て、Take-1, Take-2が明らかな失敗焙煎と見破ることは困難である。
ブルンジ焙煎by煎り上手


カッピングのために、7gずつ計量して並べたのが下の写真。この時点では、Take-1,4の豆面、色は類似しており、同程度の焙煎度に見える。Take-2はこの時点で既に浅い。
ブルンジ焙煎by煎り上手(豆)


粉に挽くとこんな感じ。Take-1は豆のときより色が薄い。つまり、豆の外側の焙煎進行に比べて、豆の内部の進行が遅れていたことがこの時点で既に分かる。
ブルンジ焙煎by煎り上手(粉)


水色はこんな感じ。ブラインド・カッピングとして、お湯をかける前に位置をシャッフルしているため、明らかに水色が濃い左上のTake-3 以外は、どれが何番かここでは分からない。
ブルンジ焙煎by煎り上手(ブレイク前)


カッピングするまでもなく、ブレークの香りだけで Take-2の芯残りは分かってしまうレベル。一方、Take-1, Take-4は香りだけでは区別がつかない。この2つを並べてみると水色も似ており、やはり区別がつかない
ブルンジ焙煎by煎り上手(水色-1,4)

しかし! カッピングしてみると、もう明白に Take-4だけが本来のブルンジの美味しさ、心地よいオレンジ系の甘い柑橘フレーバーが出ており、一見よく似ている Take-1はシャープな酸味ばかりが目立ち、甘みが全く感じられない。 煎り上手だけで焙煎するのは長くやっていなかったが、正直、ここまではっきりと差が出るとは思っていなかった。ちなみにTake-4の焙煎プロファイルはこんな感じ。Artisan付き煎り上手があれば、これと同じ味になるように焙煎することも容易である。
ブルンジ焙煎by煎り上手(Take4プロファイル)

追記: 2022/01/27
本日、上記の Take-1, 4 だけ、V60で普通に抽出した場合の比較も行った。
なるべく同じ抽出になるように、2つ並べて同量の豆を粉に挽いたものをドリッパーにセットし、同じポットから同時抽出を行った。結果は以下のとおり。
ブルンジ焙煎by煎り上手(抽出比較)

Take-1:
 アロマ:粉の状態ではキャラメルのような果実感も感じられ心地よい香り
 フレーバー:
  - 熱いとき:酸味が多少きつめだが悪くない味。3rd wave風の浅煎りの味
  - 冷めとき:酸味が尖ってきて甘みが少なくなる。

Take-4: (with Artisanロガー)
 アロマ:とてもバランスの良い気持ち良い香り。Take-1より深く複雑な香り 
 フレーバー:
  - 熱いとき:酸味・苦み・コクのバランスが程よく、とても美味しい。
  - 冷めたとき:完全に冷めきって飲んでも、全く尖った部分がなく、円やかで美味しい。

結論として、カッピングのときよりは優劣の差は少なく、Take-1の焙煎も悪くないという結果であった。しかしいずれにせよ、Take-2のように完全に失敗することもあり、狙った味を安定的に再現する、という意味ではロガー付きが圧倒的によい。ロガーで確認して、慣れてくれば、温度計が付いているだけでも、かなり狙いどおりに焙煎出来るようになると思われる。

煎り上手でどこまでCR600の焙煎に迫れるか?

現在、煎り上手+Artisanを使った焙煎教室プロジェクトをクラウドファンディングに出そうと準備をしていることもあり、連日、煎り上手を使った色んなテストを行っている。本日は一昨日、僕のメイン機 CR600で焙煎したブラジルの豆を、煎り上手を使って全く同じように焼くにはどうすればよいか、ということで実験してみた。
煎り上手でCR600を再現様子


焙煎度合いを同じにするために考慮すべき点としては以下が考えられる。

①同じ排出温度で取り出す
②一ハゼから排出までの時間を揃える
③AUC(Dry End/Yellow Pointから排出までに与えた熱量)を揃える
④焼き色を揃える
⑤プロファイルをなるべく同じラインに乗るようにして、同じ時点(温度 or 時間)で排出

焙煎道具が全く異なり、容量の違い、蓄熱量の違いも大きく、まず⑤は無理、④も煎り上手の形状から豆色を直接見るには暗いので、これも除外。理想は①②③が全て揃うことであるが、それはなかなか難しいので、取り合えず①を採用しようとまず考えた。

しかしながら、そもそも1ハゼ開始温度に約3-4度の差があり、煎り上手の方がいつも高めの温度でハゼが開始する。 そのことも考慮すると、煎り上手でCR600と同じ温度で排出すると、そのオフセット分だけ実際には低い温度で排出することになる。実際やってみたら、明らかに焼きが浅く、焙煎指数(Weight Loss)で見てもCR600の-15%に対して-13%程度となっていた。
煎り上手で同じ焙煎比較
<見た目も豆面もまずまずそっくり>

そこで4℃ほど先まで進めてみた結果がこれ。なかなかのもので、見た目はほぼ同じ。焙煎指数もほぼ完全一致、となり、どうやら再現出来たようである。


こちらがCR600での焙煎した時のプロファイル(バッチ量:500g)
ClassicoHR_by_CR600

こちらが煎り上手での焙煎した時のプロファイル(バッチ量:70g)
ClassicoHR_by_IriJozu


二つのプロファイルを並べると確かに似ているかな。

ブラジル焙煎CR600vs煎り上手


あとは味の方であるが、今回使ったブラジルはいつもの横浜のカフェへの納品用であるため、比較テストに使った豆はそっと袋に戻しておいた。

煎り上手+Artisanでの焙煎テスト(丸紅グァテマラ編)

本日はずっと雨で、ログハウスのテラスには屋根があるとはいえ、なんとなく肌寒いので、キッチンで煎り上手テストの続きを行った。使った生豆は、先日、センチュリーフレンドの坂下さんから入手したグァテマラ・ウェウェテナンゴで、丸紅から購入しているとのこと。 リファレンスとして、坂下さんが焙煎した中煎り豆を購入しておいた。ちなみに 600円/100gの豆である。

坂下さんが使うのは自社で取り扱っている韓国製ハイテク焙煎機で、PRO1CEというもの。この焙煎機は水タンクを備えており、ハゼる直前に加熱している珈琲豆に霧吹きのように水をかけることで一瞬温度を下げて、ハゼ(音)を起こさないように焙煎を進めるという特殊な焙煎機である。このように焙煎するとロースト臭が付かないそうである。スターバックスの焙煎士のアイデアを、この韓国の開発メーカーが取り入れたそうで、非常に興味深いモデルである。
PRO1焙煎機

今回は同じグァテマラ生豆を、僕が開発中の焙煎道具、煎り上手+Artisanで焙煎してみた。
最初の2回は、坂下さん焙煎の珈琲豆と同じ焙煎度(ミディアム)で、DTRの比率を変えて焙煎。
次の2回は焙煎度合いを深めて、ハイローストとフルシティ・ローストといったところである。

今回のチャレンジは、セラミック網の導入でどこまで滑らかに焙煎出来るか、である。網は近くのスーパーSANWAで500円ほどで入手したもので、斜めスリットの開いた鉄板+セラミック網+鉄網の3層構造で直火は抜けない。
セラミック網

煎り上手+Artisan焙煎中

キッチンのガスレンジは温度センサーが稼働して勝手に弱火になってしまうため使用を断念。代わりに換気扇の下にカセットコンロを置いて焙煎した。

結論から言うと、セラミック網のお陰でRORの変動は抑えられ、とても安定することが分かった。一方で、直火が当たらないため全体的に火力不足で、早焼きは難しくなる。十分な予熱を行って、失速しないように加熱し続ける必要がある。

まず下記写真が、丸紅のグァテマラ生豆とリファレンスとした坂下氏焙煎の珈琲豆である。コーヒーにしてみると、焙煎が浅い割にとても穏やかな酸味で、苦味はほとんどなくマイルドなフルーティさがとても飲みやすい。生豆はスクリーン選別がない典型的なグァテマラ豆の様子で、大きな豆~極小の豆まで大きさのバラツキがとても大きい。クロップ年の表記はなかったが、丸紅の生豆の回転の良さからみて2021年ものだと思われる。
グァテマラ・モカベアー
<右は坂下氏がPRO1CEで焙煎した中浅煎りのグァテマラ豆。モカベアーというブランドで販売中>


なお、Take-1は予熱温度が低く加熱を失速させてしまい途中で中断。したがってグラフは Take-2から始まる。

Guatemala-Take2


Guatemala-Take3

グァテマラ・Take2,3

この2つは、重量減で判断すれば同じ焙煎度合い、投入カロリーで考えると、230C*minと308C*minなので、理論的にはTake-3の方が焙煎度が深いことになる。明日以降、カッピングで違いを確かめたい。

Take-2:  投入カロリー 230C*min、重量減 (84.4%)  ミディアム・ロースト (DTR=20)
Take-3:  投入カロリー 308C*min、重量減 (84.3%)  ミディアム・ロースト (DTR=25)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Guatemala-Take4

Guatemala-Take5
グァテマラ・Take4,5

後半の2つは、それぞれ以下のとおりである。

Take-4:  投入カロリー 333C*min、重量減 (83.1%)  ハイロースト
Take-5:  投入カロリー 419C*min、重量減 (80.9%)  フルシティ・ロースト

さすがにこのくらいまで焙煎すると、焙煎直後からとても良い香りがしている。豆面も当然、綺麗になってくる。味わいは同じく明日以降のカッピングで確認するとして、Take-2, 3とは全く別のフレーバーとなっていることは間違いないだろう。

ちなみに、坂下さんは丸紅から購入した生豆はハンドピックはしないと言われていたが、ざっと見渡しただけで、やはり取り除いた方がよい欠点豆が多少含まれている。特に左上の方に見える発酵豆はまずい。1粒でカップ全体をダメにするという、あれである。
丸紅のグアテマラ欠点豆

さて、煎り上手+Artisanを使ったテストは明日以降も続く。

焙煎プロファイルの再現

パプア・天空の森

これは昨晩焼いたパプアニューギニア・天空の森・修道院のコーヒーである。
生豆で1KG分は、僕の焙煎機の場合、2回に分けて焙煎する必要がある。写真は2回分の焙煎豆を混ぜてしまった後であるが、写真からも均一な色合いは見て取れるだろうか。

1ハゼのタイミングと温度、排出温度、投入カロリーなど焙煎プロファイルはほとんど一致、当然ながら焙煎指数は完全一致といってよいレベルである。

<1回目の焙煎プロファイル>
プロファイル1(天空の森)

<2回目の焙煎プロファイル>
プロファイル2(天空の森)

<1回目、2回目を重ね合わせたもの>
プロファイルの再現(天空の森)
注) 濃い線が2回目のグラフ、後ろに薄い線で示されているのが1回目のグラフ

焙煎ロガーの威力は如何なものであろうか。高価な本格的な焙煎機では当たり前のことも、小さな焙煎機、焙煎道具では容易ではない。しかし焙煎は思いどおりにコントロール出来て、同じプロファイルが再現できなければプロとは言えない。

そして、たとえ「おうち焙煎」であっても、思い通りにコントロール出来るならば、焙煎を毎日やったとしてもマンネリ化せず、成長感もあってずっと楽しく続けられると思う次第である。この楽しさを広く皆に伝えていきたいと切に願う今日この頃である。
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