2月半ばにマクアケ・クラウドファンディングで申し込んだ台湾製の小型焙煎機 SandBox Smart Roasterが先日ようやく届いたので使ってみた感想を少しばかり報告したい。この焙煎機が画期的なのは、このサイズと価格でスマホとBluetoothで繋がって、焙煎中のプロファイルを管理できる点である。

最大焙煎量100gに対して、マクアケ先行価格でも88000円というのは少し高いと思う人も多いかもしれない。しかし各種焙煎機を持っている僕にとってはサンプルローストするのに都合が良いサイズである。同様なことができるIKAWA/Panasonic The Roastの本体が20万円以上することを考えると、まぁ安いとも言える。実際、マクアケ達成率は6000%となっており、採算分岐点の60倍も人気があったようである。この焙煎機は分類的には「電気式&直火式 」であり、僕のコレクションにはないタイプであることも購入動機となった。
SandBox_Laos比較準備

<僕の焙煎機コレクション>
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手網(普通の手網、Dr MAHN) 直火、ガス
手網  (煎り上手) 半熱風に近い直火、ガス
Union 手廻しロースター 半熱風、ガス
GeneCafe Roaster 完全熱風、電気
Cormorant CR600 直火/半熱風切替、ガス、
SandBox Smart Roaster 直火、電気

さてSandBoxの話に戻って、使い勝手はどうかというと、これがなかなか微妙である。
電気式小型焙煎機の課題は一般的に焙煎豆の冷却性能であるが、SandBoxはここをあっさりと諦めて外で冷却する方式である。これは焙煎している者から見れば良い決断だと思うが、初心者にとっては恐らく以下の点でハードルが高くなると思われる。
SandBox生豆投入

1) 予熱で熱くなった焙煎機本体に焙煎カゴを手で入れるのがちょっと原始的
2) 熱い焙煎機から焙煎カゴを取り出して、焙煎豆を冷却機に移す作業が大変
3) 焙煎機の内部や外に飛び散ったチャフの掃除が煩雑
SandBoxチャフ汚れ

特に2番はトリッキーで、実際僕は初回焙煎では慌ててしまい、焙煎カゴを開ける際に熱い焙煎豆をログハウスのベランダにぶちまけてしまった。付属のグローブが馬鹿デカく指先が不自由なせいでもある。でもこれは、熱い焙煎カゴをまず冷却装置のザルにそのまま乗せてから、落ち着いて蓋を開けることで解決した。

SandBox焙煎豆冷却

一方で、焙煎自体は開始から終了までスマホでモニターしながら、お任せもできるし、慣れれば少し自分の味付けで制御も可能な点はとても快適である。

ただしお任せとはいっても、この焙煎機は一ハゼ開始のタイミングを自分で入力してあげる必要がある。従来の小型焙煎機は温度と時間だけで自動的に焙煎度合いを決めて豆排出まで行うのに対して、より実際の焙煎士が行う作業に近いことをやらせる点が第2の画期的な点である。一ハゼ開始ボタンを押すと焙煎停止までのカウントダウンが始まるが、これはDTR (Development Time Ratio)の概念を取り入れたのかもしれない。つまり1ハゼ開始~豆排出までの時間(Development)が焙煎トータル時間の何パーセントかが大事、という考え方である。
SandBox焙煎モニター

付属のプロファイルでは、RORは焙煎開始時に高く、その後は単調に減っていくようになっている。

SandBox焙煎度設定

ということで今回は、随分前に珈琲問屋のバーゲンで買って少しだけ残っていたラオスのナチュラル精製を、浅煎り、中煎りの2つに煎り分けてみた。この豆は正直、相当オンボロで、欠点豆のオンパレード、浮豆だらけ、というものであるが、丁寧にこれらを取り除いたものを同量に分けたものを用意した。

自動焙煎モードは3段階のみ、それを通常スピード、スロースピードの2段階に分けて6種類が選べるようになっている。なお、VIP会員という有料サブスクに入ると、珈琲豆の産地毎に開発した特別焙煎プロファイルを使えるようになるが、今ある選択肢はとても限られていてサブスクまでする価値は薄いかもしれない。
Sandbox焙煎度メニュー

結論から言って、焼き上がった豆に浅煎り、中煎りともムラは全くなく大変綺麗である。また、3段階だとさすがに浅煎りと中煎りで、かなりくっきりと差が分かる色合いとなった。
SandBox焙煎度比較1


予熱の設定は初期設定では190度となっており、到達するのに4分弱の時間がかかった。2回目の焙煎では、Coolingプロセスを途中で止めて直ぐに次の焙煎に入ることで半分以下の時間に短縮できる。この手の小さな電気式焙煎機で、Back to back焙煎OK、と明言しているものは意外と珍しいかもしれない。
SandBox焙煎開始合図


次は同じ生豆を100gずつ6セット作って、それらを6種類の自動焙煎モードで焙煎して、見た目の違いや珈琲液にした時のカップの違いなどを確かめてみようと思う。