香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

2022年07月

まき直し焙煎のコツ

2年以上前に、まき直しマジックというブログを投稿したが、未だ「まき直し焙煎」という用語は市民権を得ていないようで、グーグル検索をかけても何もヒットしない。

要するに再焙煎のことを僕がそのイメージから名付けたものであり、どう呼んでもいいのだが、やはりこの言葉が僕にはしっくりくる。
エルサルバドル巻き直し

今回この焙煎を行ったのはエルサルバドルの豆で、お客様からの注文で通常の焙煎より浅いシナモンローストに焼いたわけだが、ちょっと大量に焼きすぎて300g以上残ったため、久しぶりにやってみるか、ということで行ったのがこのプロファイル。

ElSalvador巻き直し焙煎


改めてやってみると、同じバッチ量の通常焙煎と比べて同じ火力でも火の入りが速い。

元の焙煎豆の水分量は恐らく3%かそれ以下で、狙いとしては僅かでもコーヒー豆の中に結合水が残っている間に芯まで火を入れてしまおう、という作戦。そしてその後はゆっくり目に表面だけ焦がさないようにじわっと熱していった。それでも通常焙煎よりはずっと進行が早い。

まき直し焙煎は取り合えず成功で、特にムラや焦げもなく、スモーク臭もフレンチとしては適切なレベル。まぁそれなりに美味しい深煎り焙煎豆が完成した。ただ、通常焙煎でフレンチローストにした場合に比べて、香りや味ははどうなのか、という点では検証不足である。



さて、まき直し焙煎に関して、先日こんなことがあった。

僕が時々お邪魔させて頂いている某ロースター販売所にふらりと立ち寄ったら、ちょうど店主が焙煎を開始しようとしていたので横で見物していたら、ちょっと目からうろこが落ちる話を聞いてしまった。

店主が行おうとしていた焙煎が、まさに「まき直し焙煎」であったわけだが、やっていたことは、

 店頭で売れ残った焙煎豆を複数混ぜ合わせてアイスコーヒーを作る

であった。なかなか器用なお方で、豆の大きさや種類、元の焙煎度合いなどを考慮して、一部の豆は投入タイミングを変えておられた。しかし1回目のまき直し焙煎ではまだ深さが足りず、冷却後に2回目のまき直し焙煎をして、最後には綺麗なフルシティ・ロースト豆が完成

これを袋に詰めてお得意様に納品するとのことで、思わず僕が「そんなんで大丈夫ですか?」と訊いたら、昔からみんなやってるよね、とのお言葉。う~む、そうだったのか。。

まぁ、そうだよね、、廃棄したくないもんね。香りが抜けたコーヒー豆をそのまま売ってしまうよりはいいし。と思いつつもちょっと複雑な思いが駆巡ったのであった (^^;

焙煎豆の中に見つかった石

ちなみに、焙煎中に覗き窓から見ていたら小石が混じっているのを発見し、それはさすがにマズいですよね、といったら、「日本人はこういうことに細か過ぎるんだよね」とのコメント。

わぉ! なんとまぁ、おおらかな (^^;

とはいえ、焙煎後にぐるぐる回る冷却トレイの中で一応その小石を探しておられたが、なかなか見つからず、なかったことにしようとされているように見えたので、さすがにそれはと、僕がお手伝い。

まるで池の水を抜くように、珈琲豆を少しずつ別の容器に移していったら、最後の最後で発見!!  

大量の珈琲豆の中で、これは簡単には見つからないよ、というサイズ。
でももしそのままミルにかけたら、きっと悲惨だよね。

欠点豆の混入した生豆
<こんな感じの生豆をそのまま焙煎機に投入されている>

ここの店主は、欠点豆のハンドピックも全くやらない主義で、ことごとく、僕がふだん皆さんに伝道している内容と真逆のことをされているのである。

ただそれで20数年間ちゃんと商売出来ている、という事実はなにを物語っているのか。

了。


イエローポイントについての考察

今回は水抜きフェーズの最終地点、俗にイエローポイントといわれる段階について考察してみたい。
一般的な解釈は「水抜きフェーズによって生豆から十分に水分を抜いておけば、その後の焙煎がムラなく進む」というものだと思うが、僕はこれは俗説だと考えている。もし本当であれば「超高速ノルディックロースト」は成り立たないはずである。

さて、まずこのグラフを見て頂きたい。
MoistureContent-RoastTime

これはスコットラオの著作 「THE COFFEE ROASTER'S COMPANION」の30ページに掲載されているグラフで、生豆を焙煎していく中で、コーヒー豆の中の含水量が焙煎するにつれてどう変化するかを表したものである。縦軸の単位が明記されていないが、どうやら1目盛りが2%で約13分半で深煎りにしていったときの実験データがプロットされている。最初12%強から開始して、最終的に2%を切っているわけであるが、注目すべきは含水量は最後まで一貫して減っているという事実である。前半に減少速度が速い、微かな逆イールド・カーブになっているのはある意味当然であろう。

Drying Phase, Middle Phase, Development Timeという3つのステージについて、彼の本の中には以下の説明がある。

「水抜きフェーズという言葉は誤解を呼びやすい俗説である。水抜きは焙煎の間つねに発生している。ただ、十分に含水量が減って豆が少し黄色っぽく(shade of tan)になると、豆が膨らみ酸や芳香が生じ始める。メイラード反応は121~149℃で活発だが、約171℃に達するとカラメル化反応が始まり、ショ糖(還元糖)を横取りするためメイラード反応は(燃料を奪われて)速度が鈍化する」

また別の本で、彼は焙煎を4つの段階に分けて説明している。つまり、
  • Drying Phase (水抜きフェーズ)
  • Browning reactions (メイラードフェーズ)
  • Development time (カラメル化フェーズ、最終フェーズ)
  • Carbonization (2ハゼ後半からの最終フェーズ?)

さて、話が長くなってきたが今回僕が行った実験は、僕がこの水抜きフェーズの終わり(DE)としている160℃の前後で、実際に豆の色はイエローポイントになっているのか、である。

クロロフィルを含有することで生豆は緑色を帯びているが、これが熱分解されて黄褐色になっていく、とされているが、実際はどうであろうか。実験では、CR600焙煎機を使って、135~175℃の間、5度おきに Trierで少量のサンプル豆を取り出していった。イメージは以下の感じ。なお焙煎では最初にガッと熱を入れた後は、RORを落として、意図的にDEまでの時間を長引かせている。
YellowPointTestエルサルバドル
テストに使ったのは、非常に火が入りやすい中米産コーヒー代表、エルサルバドルの水洗式生豆である。これをシナモンローストにするまでに少しずつ取り出したのが下の写真である。
色の変化を見やすいように、真ん中に焼き上がったコーヒー豆のサンプルを置いてみた。

イエローポイント確認(エルサル・通常)


次にこの豆を50℃のお湯と水でしっかり洗って水分が増加した状態で焙煎してみた。
お湯・水洗い直後の生豆の状態はこんな感じで、焙煎してもほぼチャフが出なかった。
エルサル生豆(お湯洗い後)

イエローポイント確認(エルサル・お湯洗い)


最後が、比較的、火が入りにくい南米産の水洗式ニュークロップ、ペルーホープである。エルサルバドルに比べて生豆の緑が濃い。
イエローポイント確認(ペルーホープ)


どうであろうか。

ちょっと贔屓目もあるかもしれないが、僕の目にはどのケースでも160℃で緑の色相が消失しているように見える。


ScottRaoGraph

ちなみに、上記のScott Raoがネットに上げているグラフを見ると華氏302℃をDEとしており、これは約150℃である。なぜ僕が160℃をDEと決めたのか実は今思い出せないのであるが、やはりScott Raoの著作の中にその記述があったような気がしている。

いずれにせよ、今までの説明を振り返ってみても分かるように、水抜きフェーズやDEには明確な定義も範囲もないし、よってイエローポイントという明確な地点も実は存在しない。そして仮にイエローポイントをアグトロン値などで正確に定義出来たとしても、それにより焙煎が制御しやすくなるなどの効果があるとも思えない。

要するに理解すべきは以下のサマリーだと考えている。

  • 生豆の含む水分(10-13%)は焙煎により2%前後まで一貫して減り続ける。
  • 含水量が十分に減って、ある温度(121度)に到達するとメイラード反応が活発になる。
  • さらにある温度(171℃)になるとカラメル化反応が活発になり、ショ糖を使い尽くすことでメイラード反応は収まっていく。

してみると、僕自身も説明によく使っている焙煎の3つのフェーズとは何か?
敢えて定義するなら、それは「焙煎プロファイルを理解しやすくして、同様な焙煎を再現しやすくするため仮に置いたマイルストン」というところであろうか。

以上、勝手な意見を述べてみましたが、反論・異論などのコメントがあれば歓迎いたします。





2つの焙煎機どうしで同じ焙煎度にするための温度補正プロファイル

僕の焙煎道具と言えば、最近では専らメイン機のCormorant CR600と「煎り上手」で、その他の焙煎機、GeneCafe, Sandbox Smart R1, UNIONサンプルロースター、あるいは手網、といった焙煎道具はほとんど出番がない。 要するに最初の2つがあれば大抵は事足りてしまうのである。
Peruオフセット確認

さて、どちらの焙煎道具でもArtisan焙煎ロガーを使っており、役割としては、新しい豆に当たるときには煎り上手が常に先鋒で、バッチ量70gと小回りが利くこと、そして自由自在にプロファイルが描けることが大いに役立つ。 そうやって焙煎度を決めたら、その時のプロファイルもあることだし、それをバッチ量600gのCR600で再現したいわけだが、ことはそう簡単ではない。

複数の焙煎機を使っている方ならご存じかと思うが、焙煎機によって温度表示がかなり異なるという事実があるのである。

例えば「1ハゼ開始」という比較的分かり易いイベントで比べると、CR600と煎り上手では 6-8度程度のズレがある。CR600の1ハゼは194度前後で来るのに対して、煎り上手では200-202℃くらいの時が多い。
Peruオフセット焙煎豆

本日は当初は煎り上手でなんとなく水洗式のペルー豆の煎り分けテストをしていたのだが、途中から方針変更して、KOPE花伝カフェさん用にCR600で焼くときのペルーの焙煎度合い(重量減83.5%前後)を煎り上手で再現する、ということに挑戦してみた。

結論から言うと、オフセット分を勘案した排出温度で取り出すと、かなり近い焙煎度合いになることが改めて確認できた。CR600の排出温度が225度で、同じ程度のDev時間(1ハゼ開始~排出までの時間)であれば、煎り上手の場合のオフセットを6度として、231度で排出すればちょうど同じ焙煎度合いになる。今回はDev時間はほぼ同じであるが、オフセットが5度弱と少し足りなかった分、目標の83.2%に対して83.9%となり、若干浅い焙煎となった。

Peruオフセット確認

4回の各試行の焙煎度は、Take-1: フルシティ、Take-2: シナモン、Take-3: ミディアム、Take-4: ミディアム・ハイ といったところである。

焙煎順がバラバラな点はご容赦願いたい。取り合えず焙煎順にプロファイルを掲載する。

Take-1: フルシティ(※途中でArtisanの設定を弄りながらで、かなりいい加減な焙煎)
PeruHope-Take1-241

Take-2: シナモン
PeruHope-Take2-219

Take-3: ミディアム
PeruHope-Take3-225

Take-4: ミディアム・ハイ (※これが一番、ターゲットに近い焙煎)
PeruHope-Take4-230

ちなみに、テストしているうちに少しずつ気合が入ってきて、Take-4は Take-3のプロファイルをBackgroundに出して、それを辿りながら少しその先まで焙煎する、という焙煎であったが、こんな感じでしっかりと重なっている。頑張ればこのような焙煎が可能なのが、煎り上手+焙煎ロガーの醍醐味である。

PeruHope-Take4-with-Take3













マンデリンの煎り止め判断

マンデリン・アチェ・ディープ・グリーン

マンデリン豆の特徴は、スマトラ島のテロワールがなせるものというよりは、やはりスマトラウォッシュトという精製方法に負うところが大きいと思う。そもそも、スマトラ島の湿潤な気候の中では、ナチュラル精製など乾燥に時間のかかる処理をしていたら発酵が進み過ぎるか、カビが生えてしまってどうしようもないに違いない。

ウォッシュト精製でもパーチメントコーヒーの乾燥には通常は1~2週間かかると言われており、これをスマトラ島でやったら、恐らくいつまで経っても乾かないのだろう。

そこで、とにかく3日間だけ乾かして、さっさとパーチメントを外して種子だけの状態で乾かしてしまえ、というのがスマトラウォッシュトである。

ちなみに、同じインドネシア産でも、ジャワ・アラビカで有名なウォッシュト精製のコーヒーは全く風味が異なる。ということで、やはり最大のフレーバーの違いは精製方法からくる考える次第である。

閑話休題。

そのスマトラ・ウォッシュの豆は一般に焙煎が難しいとされるが、やってみれば納得してしまう。
まずハンドピックが難しい。どこに欠点豆の線引きをするか実に悩ましい。それによりどれくらいの風味が変わるのか、雑味が増減するのか、いずれじっくり実験してみたいが今回は別の話題、煎り止めの判断について取り上げたい。

先日、お客さんからの注文のマンデリンをフルシティーローストに焙煎しようとして、うっかり浅くなってしまい、納得できずに再度焙煎した際の2つのプロファイルが興味深かったので紹介したい。

まずこちらがハイ~シティロースト程度になってしまった焙煎プロファイル
豆の排出温度は230度で、取り出したときは2ハゼがバチバチしていた。

マンデリン・アチェ・Drop230度AUC242

そしてこちらがちゃんとフルシティまで焙煎したときのプロファイル
こちらも排出時の温度は230度である。

マンデリン・アチェ・Drop230度AUC375

しかし焙煎された豆を見て頂くと分かるように、2段階くらい焙煎度合いが異なる

重量減も83%と80.5%と全く異なる。焙煎ロガーを使っているので、滅多にここまで外れた焙煎度にはならないのであるが、1回目の焙煎では、勢いのある2ハゼの音と、焙煎最中の豆の色に惑わされて、つい早めに排出してしまった。この辺がマンデリンの焙煎の難しいところか。

マンデリン・アチェの煎り止め(同一排出温度)



同じ排出温度でも1ハゼ開始から排出までの時間は3:46と5:38と全く異なり、投入熱量に比例すると言われるAUC(Area Under the Curve)の値は242と375である。

結局、煎り止めの判断は、ロガー上では排出温度(つまり1ハゼ温度からの上昇温度)以外に、1ハゼからの排出までの時間、全体の焙煎時間などを見て、さらには音、色、匂い、煙りといった状況を見ながら最後はエイヤで決める必要がある。

同じ豆どうしであれば、焙煎度合いの一致を確認するには重量減を比べるのが一番確実である。

焙煎も数をこなしていると、バッチ量が違ったり、投入温度や中点温度がかなり違ったりしたとしても、途中のリカバリーで最終的にほぼ同じ焙煎度合いに出来るものである。そのときの自分の煎り止めの判断は言葉ではうまく説明できないが、とにかく大抵うまくいってしまうから不思議である。

僕は焙煎ロガーで、焙煎に科学的アプローチを持ち込むことで、誰でも簡単に目的の焙煎が出来るようになることをモットーとしているが、結局は職人的な勘の有無で結果に差が付くことも否定できない。

そういえば、焙煎ロガー Artisanとは「職人」という意味だな。

超高速焙煎の限界を探ってみるテスト

最近、超高速ノルディックローストに関する質問や問い合わせが度々くるようになったが、この焙煎方法は一種の偶然の発見であり、こんな焙煎が成り立つはずがない、と思われている方のためにも、なぜこれでちゃんと焙煎出来るのか、なんとか証明したいし、自分としてもこれが最善なのか深堀していく必要があると感じている。

そこで今回は短時間焙煎の限界を探るため、煎り上手を使って 10粒ローストに挑戦してみた。選んだ豆はペルーの水洗式の生豆でニュークロップである。もっとも火が入りにくいタイプの豆でもある。

10粒であれば予熱次第でどんな高速焙煎も意のまま200度に数秒で達することも可能というわけである。10粒だけなので、ここはポジティブ・ハンドピックによりガタイのよい豆だけを選別してみた。以下がテスト内容のサマリーである。

Take-1: バッチサイズは10粒、200度で投入、火力は強火
Take-2:
バッチサイズは10粒、160度で投入、火力は強火
Take-3: 
バッチサイズは10粒、
160度で投入、火力は弱火~中火
Take-4: バッチサイズは40g、超高速ノルディック・ロースト (220度で投入, 火力は強火)



<Take-1>
そもそも10粒では煎り上手の熱容量の方が大きくて豆投入による温度下降は生じず、200度の予熱は10粒に対しては高過ぎであった。入れた瞬間からどんどん温度が上がり、どんなに攪拌してもあっと言う間に焦げ出したので、1分半ほどで取り出したが、アルチザンは反応せず記録に残すことも出来なかった。明らかに焦げており、割ってみると当然見事なグラデーションであった。失敗。
10粒焙煎 Take1-変化



<Take-2>
投入温度をグッと下げて160度としたが火力は強めのままで、1ハゼ開始までどこまで短縮できるか頑張ったが、Take-1の失敗から、ちょっとビビってしまい、排出が少し早過ぎた。
10粒焙煎 Take2-変化

まあまあ均一ではあるが1分40秒では流石に浅過ぎた。
割ってみるとグラデーションも見える。火が入り切っていない。これも失敗。

10粒焙煎 Take2断面

プロファイルはこんな感じで、投入直後から豆温度は上昇している。

10粒焙煎-Take2 プロファイル

<Take-3>
今度は、投入温度は160度のまま、弱火で慎重に焙煎してみた。
1ハゼ開始まで2分9秒と短いが、超高速ノルディックよりは遅い。トータルも3分である。
これくらい時間をかけると10粒でもかなり綺麗に焙煎できる。
しかも、こころなしか、通常より大きく膨らんでいる

10粒焙煎 Take3-変化

割ってみてもグラデーションは生じていない。
10粒焙煎 Take3断面

ただ、超高速焙煎よりも長い時間をかけたのでは、あまり意味がない。
プロファイルを見ると、初っ端に一気に熱が入っている様子が見える。
10粒焙煎-Take3 プロファイル

<Take-4>
そして最後にいつもの超高速ノルディック・ローストをやった。
ただし、今回は敢えてサイズがとても小さい豆を10粒ほど意図的に混ぜて、これらがどういう色付きをするのか確認してみた。

バッチ量は40gで、これくらいあると豆投入によりちゃんと温度下降が生じる。
焙煎時間は2分40秒。いつものように220度で投入して、最大火力で熱し続けて、再び220度に達したら火を切って、余熱で230度近くまで振り続けてから排出する。

ペルー超高速ノルディック

焙煎した豆をお皿に取り出すと、見た目は普通のミディアムローストの風情である。
超高速ノルディック焙煎(ペルーホープ)

では小さな豆がどうなったか。 
さらに4粒ほど他の豆より大きなものも混じっていたので、これらを分離してみると、やはり豆の平均的な色づきは、大きな豆 > 普通の豆 > 小さな豆 となっている。

これはたぶんこの焙煎方法の限界であり、超短時間焙煎の宿命だと思われる。

以前のブログに書いた通り、ある程度のバッチ量があり、10分前後かける普通の焙煎では、塊として挙動するため、小さい豆でも貝殻豆でも、通常のサイズの豆と同じ色に焙煎される

しかし超高速焙煎では流石にこれは成り立たないらしい。

超高速ノルディック焙煎(ペルーホープ)拡大


超高速ノルディックローストのプロファイルはこんな感じである。

ペルー超高速ノルディック

白っぽい生豆、ムラのある生豆

皆さんは生豆をハンドピックする際に、白っぽい生豆を見つけたら取り除く方が多いと思うが、もしそれが多数点在している生豆に当たった場合はどうしますか? 

先日初めて購入してみた エルサルバドルSHG ジュリア Qグレードという生豆、見た目はあまり綺麗とはいいがたいものであった。白っぽい生豆が点在しており、密度が低そうに見える。実際には、高度1200mのSHGグレードなので、決して低地産ではないのだが、焼いてみるまでは少し心配であった。

ElSalvadorJuria生豆



白っぽい豆を軽く分離してみると、こんな感じである。
ElSalvadorJuria白い生豆

さらにブラックライトを当てると、やはり白っぽい豆の方がよく光る。
ElSalvadorJuria生豆+BlackLight


これを焙煎していくわけだが、取り合えず白っぽい生豆も敢えて取り除かずに焙煎してみた。
途中経過を見たかったので、今回は1ハゼの少し前で一度煎り止める「ダブル焙煎」にしてみた。

すると下記の写真のように、この時点でもうほとんどムラがない。少し意外であった。

ElSalvadorJuriaダブル焙煎途中

最終的に浅煎りに仕上げてみたが、やはりほとんどムラがない仕上がりである。
ElSalvadorJuria浅煎り


というわけで、結論として分かったことは、色が他の豆に比べて白っぽいからといって必ずしも死豆というわけでなく、取り除かなくてもちゃんと焙煎される豆もある、ということであった。

焙煎中の攪拌量についての考察

先日面白い現象に出くわしたのでここに紹介する。

もし、浅めの焙煎したときに妙な酸味が出て困っている方がおられれば、是非参考にして頂きたい。

発端は、僕が提供したロガー対応・煎り上手を使ってくれているある方(S氏)からの報告であった。

自分のセットはいつも1ハゼ開始温度が高い」と何回も言われるので、熱電対の取り付け位置やArtisanの設定を色々と変えて頂いたり、僕自身も同じ条件になるように色々試してみたが、どうにも話が噛み合わず、ついに先日、検証のために僕のログハウスまで来て頂いた。

S氏は、Artisanのデザイナー機能で作成した理想形フェーズ比率のプロファイルのカーブを、見事にトレースするような焙煎をされるのだが、一方で「自分が焼いた豆が美味しいと思ったことがない」とおっしゃるのである。

そこで同じ豆をまず僕が焼いてみせて、次にS氏にいつものやり方で、同じような焙煎度合いに焼いて頂いたのが下記のプロファイルである。これだけ見たら、どうみてもS氏の焙煎の方が上手いし、美味しいコーヒーになったと思うであろう。

攪拌の違い

それぞれのプロファイルを拡大するとこんな感じである。

<S氏の焙煎>
シダマ高攪拌焙煎


<僕の焙煎>
シダマ普通攪拌焙煎



ところが実際に飲んでみると、S氏の焼いたものは妙なエグ味や酸味が出ていて、僕には非常に飲みにくい味なのである。一方で僕が適当に焙煎した方のコーヒーは期待どおりの浅煎りモカの味わいであった。

焙煎する様子を見て直ぐに気付いたのは、S氏はカーブを綺麗に描くために、投入直後から物凄く細かく振り続けることである。高攪拌焙煎である。それに対して、僕の焙煎は至って暢気で、開始から1ハゼ投入くらいまでは、1~2秒に一回、ザッ、ザッと振る程度であるが、これでムラになったことはない。

さて、この違いは何かと考察してみる。
まず、煎り上手は半熱風式の焙煎道具であることを思い出して頂きたい。

攪拌量を増やすということは、コーヒー豆の間の空気を動かし、より多くの空気を外から取り入れることになる。結果として対流熱は減り、加熱は予熱した煎り上手本体から伝わる伝導熱が主体となる。つまり加熱効率が落ちるということである。

同じ予熱であれば、伝導熱+対流熱を使った方が一気にコーヒー豆内部まで加熱が可能である。
もし予熱が十分でなく、加熱効率が低いと、コーヒー豆の芯に熱が浸透する前に、表層部の自由水が失われて内部に熱が伝わりにくくなるのではないか、というのが僕の推察である。

ちなみに超高速ノルディックローストでは、初っ端からS氏の焙煎同様に細かく振り続けるが、これは220度という物凄い予熱を与えているからバランスが成り立っていると考えている。

何はともあれ、あとは実験を重ねることで、ここでの推察が正しいのか帰納法的に検証していきたい。
現在、ルワンダ・スカイヒルという生豆を使って、高攪拌・低攪拌・超高速ノルディックの3種類の焙煎を行ったサンプルを用意して、友人のバリスタ N氏にカッピングを依頼したところである。

さて、そんなことを考えていた矢先に、別の顧客から同じような報告が寄せられたので、そちらも紹介したい。その方もかなり細かな高攪拌焙煎をされるそうで、自分の焼いたケニアの浅煎りが、「トマトのような鮮やかな酸味を期待したのに、クリア感はなく、変な香ばしさと甘さを伴ったトマトケチャップのようなフレーバーでマズくて飲めませんでした」とおっしゃられる。

そこでプロファイルを送って頂いたら、なんだかS氏の焙煎と似ているのである。
これはなんだか偶然ではないような気がするのである。

ケニア高攪拌焙煎2





僕が自宅焙煎を勧める理由(その他、順不同で)

表題のとおり、KAZUHICOFFEEが考える自宅焙煎の魅力について語ってみます。
あまり大上段に振りかぶるつもりはないですが、一応、焙煎の流れの中に魅力と思われるポイントを嵌めこんでいきます。

1. 生豆の選択
基本的にネット購入です。業者向き販売会社の会員になるのが基本で、会員になると価格が見れます。すると世界中の高品質なスペシャルティコーヒーへの扉が開きます

購入単位は大きくなりますが、焙煎豆に比べて圧倒的に単価が安いので、憧れの珈琲豆がぐっと身近になります。まとめて購入した生豆はジップロックに小分けして密閉して冷暗所に置いておけば、とても長持ちします。

ちなみに一般に、生産国や栽培品種よりも、精製方法の方が味わいの違いを大きくします
昨今流行りのアナロビック精製などはその典型ですね。
ルワンダ生豆


2.焙煎道具の選択
色んな道具がある中で、初めての方にお薦めは、ずばり「煎り上手」です。
理由は以下のとおり。

  • 手振りタイプの焙煎道具としては珍しい半熱風方式で、簡単に綺麗にムラなく焼ける
  • 焙煎量が70g程度なので、様々な実験的焙煎を繰り返しても被害が少ないので冒険できる
  • アルミ製の本体は頑丈で、僕の知る限りどんなに酷使しても、木製の柄が焦げることはあっても本体が変形したり破損したりしたものを見たことがない。
  • 価格がお手ごろ(先日、発売以来初めて3割ほど値上げされましたが、それでも安い!)

KAZUHICOFFEEではこれに、焙煎ロガー「Artisan」と取り付ける改造を行っていますが、
この場合、恐らく世の中で最も安価なロガー付き焙煎が可能となり、これはもう掛け値なしで楽しい! とてもお勧めなのです。

焙煎道具-キャプション付3


3.焙煎準備
前回のブログに書いたとおり、好きなだけ丁寧なハンドピックが出来ます。
その気になれば究極のポジティブ・ハンドピックなんて技も使えます。
少量で自分のためと思えば、いくらでも手をかけられますね。

<追記>
お米農家が、出荷用とは別に、自家消費用のお米は特別に手をかけて低農薬で作付けしているという話をよく聞きますが、自家消費用のコーヒーに手をかけるのはそれに少し近い感覚かもしれません。実際そんな自家消費米を頂いたことがありますが、確かに別格に美味しかった覚えがあります。

4.焙煎
焙煎の魅力は経験すれば分かります。
焙煎度合い、焙煎の仕方で、同じ生豆から無限の味が作り出せる喜びに気付くと、大半の人はその楽しさに嵌ることでしょう。

ただし、焙煎環境が確保できるかどうか、という問題が付きまといます。例えばキッチンのコンロで、500g級の手廻し焙煎器などを使うと、後半の物凄い煙のために、ほとんどのケースでご家族からクレームがくることでしょう。 その点、「煎り上手」程度なら、換気扇で普通に対応出来ます。

5.焙煎豆のエージング
珈琲豆は腐りません。焙煎後どんなに時間が経っていたとしても、そのコーヒーでお腹を壊すことはまずありません。

そのような理由で、市販の珈琲豆は賞味期限が半年~1年くらいのものが多いようです。
しかし! 問題は味、フレーバーです。これは時間経過とともに歴然と劣化していきます。

一方、ちゃんと焙煎された珈琲豆は焙煎直後から美味しいです。
そして豆のまま密閉容器に入れておけば、常温で1~2か月は美味しいです。
自分で焙煎すれば、2週間後くらいに香りがピークに達するものが多いことにも気づきます。
しかし半年とか1年も経っては、元がどんなに素晴らしい珈琲豆でもスカのような味になります。
特に粉に挽いたものはたとえ密閉容器に入れていても1週間も置いたら飲む価値なし、のスカです。

1000円/Kg 程度の生豆でも、焙煎後の鮮度が良ければ、時間が経った高級豆よりずっと美味しいことにも気付くことでしょう。

6.抽出、その他

自分で焙煎するようになると、必然的に同じ珈琲豆を何回も飲むことになります。
すると同じ豆に対して色んな抽出を試す機会も増えて、どんなに同じように抽出したとしても
毎回味わいが異なることにも気づくことでしょう。これは勉強になります。

道具やペーパーの種類を揃えても、粉の挽き目(微粉の量)、お湯の温度、お湯との接触時間やお湯の経路(注ぎ方)などは安定させることが困難で、最終的な味わいに違いを与えます。

しかし! ちゃんと焙煎された珈琲を鮮度が良いうちに使っている限り、どんな淹れ方をしても結局、美味しさのスィートスポットの範囲に入ってくれるのです。

ということで、長々書きましたが、もし焙煎未経験であれば一度経験してみることを強くお勧めします。もしお近くであれば、KAZUHICOFFEEでも様々な焙煎体験やっています。

ログハウス2

お薦めとして、具体的に最初に何を揃えたらよいかについては、また次の機会にでも。
もちろん直接コメントを頂ければ、直ぐにお伝え致します。

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