焙煎に使うガスであるが、都市ガスで最高1700-1900℃、LPGで1900℃に達するされているが、実際は平均すると1000℃程度だそうである。
一方で、アルミニウムの融点は660℃、鉄が1536℃なので、鉄製の網は耐えても煎り上手のアルミは溶けてしまいそうであるが、実際はビクともしていない。
コーヒー焙煎には強火を使うが、一番厳しいのは空で予熱しているときだろう。しかも僕は、煎り上手に厚手のアルミ箔を折ったフタを取付て、予熱時には本体を裏返して加熱したりもするので、アルミ箔に直接強火が当たるが全く溶けも変形もしていない。
これはアルミの熱伝導率の高さが効いているからだろう。火が直接当たる部分が熱くなっても即座に周りに熱を逃がして、結局焙煎中は全体的に偏りない温度になっていると思われる。
また、挿し込んでいる熱電対温度計の先端は宙に浮いているが、安定してきれいに温度上昇していく。これも考察すると、実は熱電対の先端が珈琲豆が接することで温度を示しているというよりは、熱電対を覆う円筒金属ケース全体が煎り上手と一体化してほぼ同じ温度になっていると考えられる。
温度計の接続コードは木製の柄に開けたトンネルに通してあり、熱電対の金属ケースは厚手のアルミ箔を押し固めて、煎り上手本体の接続部に固定してある。素材がアルミ同士なので、滞りなく本体からの熱が熱電対に伝わるものと思われる。
ここでちょっと妙なアナロジーを考えてしまった。
人間の匂いセンサーは鼻の奥にあるが、実は同じセンサーに辿り着く道は鼻孔からのストレートと、もう一つは口腔から遡る道がある。いわゆる鼻先香と口中香である。この2つの道を通って辿り着いた芳香成分を、匂いセンサーが感じ取るわけだが、煎り上手の熱電対も珈琲豆や容器内の熱い空気からのストレートな熱と、本体を伝わって後ろからくる伝導熱の2つの力で温度表示している、ということである。
話が長くなってしまった。
焙煎コントロールに必須の豆温度を知るためには、熱電対温度計に頼るしかないが、構造上、熱電対の先端を珈琲豆の塊に常時沈めておくことは困難で、結局、上記のごとく、様々な要素がミックスされた平均温度のようなものをみながら焙煎するしかない、ということである。
幸いにして、冒頭に書いたとおりアルミは熱伝導性がとても良いため、煎り上手の小さな本体はひとたび全体が予熱されれれば、熱電対温度計も同じ温度で、さらに珈琲豆の投入後は、中点を過ぎたところで珈琲豆も一体化して、結局はさほど実際の豆温度と温度計の表示には開きがないと考えて良いと思う次第。
となると、他に考察すべきことは、いかに火力源からの熱を効率よく豆の内部にまで伝えて、珈琲豆(1粒)全体をなるべく同じ温度にして、さらに全部の珈琲豆を同じ温度にキープしながら、適切な温度上昇率(RoR)で温度上昇させていくか、ということになる。
熱の伝導は、金網では①+②で、セラミック網ではほぼ①のみとなる。
①火力源 ⇒ 金網 ⇒ 煎り上手の底
②火力源 ⇒ 煎り上手の底
端的に言って、セラミック網より金網の方が使いやすい。セラミック網は時間をかけてゆっくりと焙煎するには便利だが、予熱だけでも7,8分もかかるし、何しろ瞬発力がないため結局コントロールしにくい。
そんなか、先日見つけたのがこんなセラミック網で、これは珍しく底部の鉄板の多いがないため、①+②タイプの加熱方式である。本日早速これを使って焙煎してみたところ、やはり火から遠くなるせいか、使い勝手は金網と普通のセラミック網の中間であった。
下記のプロファイルは意図したものではなく、勝手に1ハゼ直前に加熱が失速してしまい、瞬発力のないセラミック網ではリカバリに時間がかかり、長くフラットな部分が生じてしまった。ついでにいうと、このような加熱をするとほとんど1ハゼが起きずに200℃を超えていく。これはこれで一つ、小回りの利く煎り上手ならではの面い焙煎方法ではある。
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ということで使い勝手では金網に軍配が上がるが、問題は耐久性である。アルミほど熱伝導性がよくないためか、焙煎中、炎が当たる部分だけ真っ赤になり、他の部分は暗い色のままなので、百均の網のような細い針金で出来た網では10回と使わないうちに網が切れて使えなくなってしまう。現在、愛用しているものはホルモン焼き用という頑丈なもので、こちらは既に30回以上は使っているが、今のところ破損はない。
ただし中心部は熱で多少変形している。
ただし中心部は熱で多少変形している。
最後の考察は金網なし、すなわち②のみの加熱方式である。本日それも改めてやってみた。
いつも金網を使っているので少し違和感があったが、結論としては、金網があるときとコントロール性にさほど違いはなかった。敢えて言うならば、金網があれば予熱時など煎り上手を金網の上に置くことも可能であるが、コンロだけだと最初から最後までずっと手に持っていなければならない、ということくらいか。
う~む、随分と色んな網を買っては試してきたが、結局要らないのか!?
こうして僕の煎り上手を使った実験はまだまだ続く。