香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

煎り上手

煎り上手の温度プローブの位置についての検証

焙煎結果6種類

さて、煎り上手に取り付けている温度プローブの取り付け位置についてであるが、以下のような観点で取り付けてきた。

プローブの先端の位置(標準):
  1. 焙煎中のコーヒー豆に塊に潜りやすい
  2. 前面の蓋に近過ぎない(先端のパンチ穴からの熱風の影響を減らす)
  3. 底面に近過ぎない(プローブが焙煎中の攪拌を妨げない高さ、豆が下をくぐれる高さ)

このうち、1と2、及び1と3は相反する条件なので、結局その中間あたりにちょうどいい位置がある、という考えである。ということで現在、標準では以下のような位置に取り付けている。
  • プローブの先端は前面の蓋から2㎝離す
  • プローブの先端の高さは底面から7-8mm 

プローブの位置(新品)


しかしユーザの一人の方から、どうしても1ハゼ開始温度が高く表示される傾向がある、という連絡を受けて、以下の比較実験を行った。
  • プローブの先端の位置が標準的な位置 (Take1, Take2)
  • プローブの先端を極端に下げた場合 (Take3, Take4)
  • プローブの先端を極端に前に出した場合 (Take5, Take6)
焙煎条件は、同じ豆(ペルーの水洗式)、同じ焙煎量(70g)を使って同じ投入温度、同じ排出温度にする
というもので、各2回ずつ合計6回の焙煎を行った。ただし途中経過はある程度、自然に任せたため、プロファイルはあまり揃っていない。

また外で焙煎していたところ、Take5の途中でゲリラ豪雨前の強風が吹き出してしまい火力が暴れている。そのため、Take6だけかなり時間をおいて行っている。つまりTake6だけは連続焙煎ではなく、プローブが完全に冷えた状態で開始したわけであるが、結果として、これが安定焙煎の一つの鍵に思われる結果となっている。(ただし風が止んだせいかもしれない

テスト前の想定では、(多少攪拌を妨げてでも)プローブの先端を低くして、コーヒー豆の塊にプローブをなるべく潜らせた方が温度が実際の豆温度に近くなり温度表示も下がるのでは(?)、と考えていたが、実際はそのような結果にはならななかった。

プローブ位置テストの結果表

傾向として見えてきたのは、
  • プローブの位置が低すぎると温度が高く表示される傾向があり、結果として同じ排出温度で煎り止めした場合、浅い焙煎になる。(DT=FC開始から煎り止めまでの時間)に注目
  • 連続焙煎すると1ハゼの温度表示が高くなっていく傾向??  (要追加検証)
  • 前面蓋までの位置はそれほど気にしなくてもよさそう?? (要追加検証)
といったところである。

もう少し検証していく必要があるとは思うが、そもそも焙煎機よって標準的な1ハゼ温度は相当に開きがある低いものでは170度台、高いものでは200度以上という感じで、熱電対プローブの取り付け位置、豆の当たり具合、熱風のかかり具合、等に相当な影響を受ける。

僕のCR600の場合で、ET/BTで焙煎の最後の方までずっと30度ほど開きがあるが、煎り上手の場合、計測している温度は、豆温度(BT)に近いもの、熱風による影響(ET的な要素)、開口部からの空気の流入など常に影響を受けており、焙煎量が少ないために蓄熱の観点でも外的影響を受けやすいため、焙煎時の温度はかなり波打つ。

またFC開始温度が大きくずれるもう一つの要因として、FC開始の判断が難しい、ということがある。最初の数発でボタンを押すか、かなりバチバチ連続音がしてからボタンを押すかで、簡単に3-5度も変わってしまうのである。また、豆のよってハゼる音がとても小さいものもあり、ゆっくり1ハゼに突入するとさらに小さな音になるため、ますます難しい。

少し言い訳じみてくるが、結局は、焙煎は総合判断であり、焙煎ロガーの表示はコントロール焙煎のための有用なデータであっても絶対的なものではない。これはたとえ本格的な焙煎機でも、程度の問題はあっても同様だと思う。

そしてもちろん、気温・湿度、豆の水分量、焙煎機の蓄熱状態などでプロファイルは影響を受ける。

<プローブの先端を極端に下げた取付け - Take3,4>
プローブの位置(低い)


<先端を極端に前に出した取付け - Take5, 6>
プローブの位置(先端まで)


6回分の焙煎プロファイルは以下のとおりである。

<標準位置での焙煎 - Take1, 2>

プロファイループローブ位置(標準)

<プローブの先端を極端に下げた取付けでの焙煎 - Take3,4>
プロファイループローブ位置(低い)

<先端を極端に前に出した取付けでの焙煎 - Take5, 6>

プロファイループローブ位置(先端まで)

煎り上手用のArtisan 設定ファイル

KAZUHICOFFEEの提供する焙煎ロガー付きの煎り上手を使う際のArtisan Scope の設定ファイルを公開します。

このファイルは現在、KAZUHICOFFEEが煎り上手を使う際に使用している設定ファイルですが、よりコントロールしやすい設定を探して頻繁にパラメータを変えていますので、推奨設定も随時更新される予定です。


<2022年6月5日現在>


ついでに、最近投稿したロガー付き煎り上手の使い方と、開閉フラップの作り方の動画のリンクも紹介します。なお、ロガー対応の煎り上手は、近日中にサポート付きで販売を開始する予定です。

カセットコンロでの焙煎

煎り上手や手鍋、手網などで焙煎する場合の火力源としては、カセットコンロを使っている方が多いと思う。というのも、昨今のキッチンのガスコンロにはSiセンサーという安全装置が付いており、勝手に火が消えたり小さくなったりしてしまうからである。

そういう場合に便利なのがカセットコンロなわけだが、やはり暑かったり寒かったり、風雨の心配もある外で使うより、出来ればキッチンの換気扇の下で焙煎したい。この場合、火力のコントロールも楽である。僕はガスコンロの上に板を敷いて平面を作り、そこにコンロを載せて焙煎している。
キッチンでの焙煎


さて、便利なカセットコンロではあるが、問題はカセットボンベは容量が小さく直ぐに空になってしまうこと。そして最後の方になると、いつ空になるか分からず使い切るのが難しいため、中途半端に残っているボンベが増えていくことである。

イワタニあと5ml

最近気が付いたのだが、イワタニのボンベは新品はちょうど350gの重さに作られている。そして内容量は250gである。ということは、使用前後の重さを計れば、残量で使える回数が予測できるのである。ということで、早速やってみた結果がこんな感じである。

イワタニ使用中


当然ながら深く焙煎したり、1回目の焙煎で予熱時間が長いと使用量が増える。一方で、連続焙煎の2回目以降や浅煎り~中煎りの焙煎では使用量は少ない。その差は20g-28g 程度であり、平均すると一回あたり24gであった。ということは、250gのガスで10回は焙煎可能、ということが計算できる。

要するに、使用前のボンベ重量が125g以上であれば、中煎りなら大丈夫、ということである。

今までは残り少ないボンベは予熱に使うくらいしか手がなかったが、この管理方法を用いれば安心してギリギリまで焙煎に使うことが出来る。

ただしこれは「タフまるJr+煎り上手」の話であり、カセットコンロの種類や焙煎スタイルが変われば一回当たりの平均使用量は違ってくるので、ご興味のある方はご自分の環境で確認して頂きたい。

使用回数とボンベの重さの変化

<数本調べると、新品は350g ±0.1g となっていた>
イワタニ新品


実際に使い切ったボンベを計量してみると、100.5gとなっていた。
イワタニ空っぽ


ちなみに、イワタニの250gボンベは一缶が250円ほどなので、1回の焙煎に25円かかる計算である。これで70gの生豆を焙煎すると、約60gの焙煎豆が出来て、5杯分程度のコーヒーになるため、一杯あたり5円ほど燃料費がかかっていることになる。

これがプロパンガスなら、5kgのガス充填が約1800円で、もし同じ計算式を当てはめると一杯あたり 1.8円である。もちろん、ちゃんとした焙煎機ならバーナーが密閉構造でドラムを加熱するため、もっとずっと熱効率がよいし一度に沢山焼けるので、燃料費はほとんど計算に入れなくてもよいほどの小さなものになるはずである。

金網vsセラミック網

焙煎に使うガスであるが、都市ガスで最高1700-1900℃、LPGで1900℃に達するされているが、実際は平均すると1000℃程度だそうである。

一方で、アルミニウムの融点は660℃、鉄が1536℃なので、鉄製の網は耐えても煎り上手のアルミは溶けてしまいそうであるが、実際はビクともしていない

コーヒー焙煎には強火を使うが、一番厳しいのは空で予熱しているときだろう。しかも僕は、煎り上手に厚手のアルミ箔を折ったフタを取付て、予熱時には本体を裏返して加熱したりもするので、アルミ箔に直接強火が当たるが全く溶けも変形もしていない。

これはアルミの熱伝導率の高さが効いているからだろう。火が直接当たる部分が熱くなっても即座に周りに熱を逃がして、結局焙煎中は全体的に偏りない温度になっていると思われる。

また、挿し込んでいる熱電対温度計の先端は宙に浮いているが、安定してきれいに温度上昇していく。これも考察すると、実は熱電対の先端が珈琲豆が接することで温度を示しているというよりは、熱電対を覆う円筒金属ケース全体が煎り上手と一体化してほぼ同じ温度になっていると考えられる。

温度計の接続コードは木製の柄に開けたトンネルに通してあり、熱電対の金属ケースは厚手のアルミ箔を押し固めて、煎り上手本体の接続部に固定してある。素材がアルミ同士なので、滞りなく本体からの熱が熱電対に伝わるものと思われる。

ここでちょっと妙なアナロジーを考えてしまった。

人間の匂いセンサーは鼻の奥にあるが、実は同じセンサーに辿り着く道は鼻孔からのストレートと、もう一つは口腔から遡る道がある。いわゆる鼻先香と口中香である。この2つの道を通って辿り着いた芳香成分を、匂いセンサーが感じ取るわけだが、煎り上手の熱電対も珈琲豆や容器内の熱い空気からのストレートな熱と、本体を伝わって後ろからくる伝導熱の2つの力で温度表示している、ということである。

話が長くなってしまった。

焙煎コントロールに必須の豆温度を知るためには、熱電対温度計に頼るしかないが、構造上、熱電対の先端を珈琲豆の塊に常時沈めておくことは困難で、結局、上記のごとく、様々な要素がミックスされた平均温度のようなものをみながら焙煎するしかない、ということである。

幸いにして、冒頭に書いたとおりアルミは熱伝導性がとても良いため、煎り上手の小さな本体はひとたび全体が予熱されれれば、熱電対温度計も同じ温度で、さらに珈琲豆の投入後は、中点を過ぎたところで珈琲豆も一体化して、結局はさほど実際の豆温度と温度計の表示には開きがないと考えて良いと思う次第。

となると、他に考察すべきことは、いかに火力源からの熱を効率よく豆の内部にまで伝えて珈琲豆(1粒)全体をなるべく同じ温度にして、さらに全部の珈琲豆を同じ温度にキープしながら、適切な温度上昇率(RoR)で温度上昇させていくか、ということになる。

そこでどういう形が有効かを考えて、いろいろな金網やセラミック網を試してきた。
色々な金網、セラミック網



熱の伝導は、金網では①+②で、セラミック網ではほぼ①のみとなる。

  ①火力源 ⇒ 金網 ⇒ 煎り上手の底
  ②火力源 ⇒ 煎り上手の底

端的に言って、セラミック網より金網の方が使いやすい。セラミック網は時間をかけてゆっくりと焙煎するには便利だが、予熱だけでも7,8分もかかるし、何しろ瞬発力がないため結局コントロールしにくい。

そんなか、先日見つけたのがこんなセラミック網で、これは珍しく底部の鉄板の多いがないため、①+②タイプの加熱方式である。本日早速これを使って焙煎してみたところ、やはり火から遠くなるせいか、使い勝手は金網と普通のセラミック網の中間であった。

直接火が当たるセラミック網

下記のプロファイルは意図したものではなく、勝手に1ハゼ直前に加熱が失速してしまい、瞬発力のないセラミック網ではリカバリに時間がかかり、長くフラットな部分が生じてしまった。ついでにいうと、このような加熱をするとほとんど1ハゼが起きずに200℃を超えていく。これはこれで一つ、小回りの利く煎り上手ならではの面い焙煎方法ではある。
AzoteaByCeramicGrill


********

ということで使い勝手では金網に軍配が上がるが、問題は耐久性である。アルミほど熱伝導性がよくないためか、焙煎中、炎が当たる部分だけ真っ赤になり、他の部分は暗い色のままなので、百均の網のような細い針金で出来た網では10回と使わないうちに網が切れて使えなくなってしまう。現在、愛用しているものはホルモン焼き用という頑丈なもので、こちらは既に30回以上は使っているが、今のところ破損はない。
ホルモン焼き網

ただし中心部は熱で多少変形している。
ホルモン焼き網


最後の考察は金網なし、すなわち②のみの加熱方式である。本日それも改めてやってみた。
いつも金網を使っているので少し違和感があったが、結論としては、金網があるときとコントロール性にさほど違いはなかった。敢えて言うならば、金網があれば予熱時など煎り上手を金網の上に置くことも可能であるが、コンロだけだと最初から最後までずっと手に持っていなければならない、ということくらいか。

う~む、随分と色んな網を買っては試してきたが、結局要らないのか!?
こうして僕の煎り上手を使った実験はまだまだ続く。

煎り上手での Identical Roast

安価な簡易焙煎機や焙煎道具でたぶん一番難しいことは同じ焙煎の再現である。
例えば手網でも上手くやればプロが本格的焙煎機を使って焙煎したものと遜色のない仕上がりになることもあるが、それを毎回再現せよ、と言われると困ってしまう。

では、僕が今、テーマとして追及している、煎り上手+Artisanロガーではどうか、ということで早速やってみた。

今回は使った珈琲豆は、スペシャルティではなく、コモディティ豆のコロンビアである。なぜこの豆かというと、単にSANDBOX焙煎機を購入したときの付録豆が放置されていたからである。
コロンビア・ナリーニョ

煎り上手での焙煎はいつものようにログハウスのベランダで行ったが、今日もかなり風が強く、炎が揺らぐのと、煎り上手を火から外した途端に風で急速に冷えるため、RoRの青いラインはかなり乱れてしまった。

しかし兎にも角にも、1回目のハイロースト焙煎の曲線を、2回目はなるべくなぞる様に焙煎してみた。
グラフで見ると下記のようになり、そもそも中点までの時間が1分近く開いてしまったため、DE(ドライエンド)までのラインは全く一致していない。しかし徐々に同じラインに乗せて、最終的にはかなり近い数値に揃えることが出来た。

煎り上手でIdentical_Roast_Challenge
<下のグラフは2つを重ねたもの>

数値は以下のとおり。

煎り上手でのIdenticalRoast(数値比較)


どうであろうか。
歩留まりから見ても、たぶんほぼ完ぺきなIdentical Roastと言えるだろう。

さて、次はこの豆を抽出で確かめたわけであるが、見た目はなぜだかTake2の方が微かに赤味がかって見え、こちらの方が美味しそうに感じた。粉にしてみるとさらに微妙であるが、やはり少し色が違うようにも見える。Take2の粉の方が少し明るい。Take1は最初の温度上昇に、もたついてしまったのが悪影響したのかもしれない。
煎り上手でのIdenticalRoast(コロンビア)

抽出方法はなるべく公平にするため、クレバードリッパーを使って浸漬式とした。
煎り上手でのIdenticalRoast(抽出)

CBR=15、湯温=90℃、浸漬時間2分として、熱いときと冷めたときを確認してみたところ、熱いときはTake2の方が少し酸味が立って美味しく感じTake1はフラットな味がした。しかし冷めてくるとその差はもう感じなくなり、正直、違いは全く分からなくなってしまった。 

つまり、煎り上手でIdentical Roastを行う実験としては成功 したと言える。

追記:
久し振りに焙煎したコモディティ豆は、ちゃんと焙煎したにも拘わらず、全般にコンビニ・コーヒーのようなノペっとした味がした。もう何か月もSpecialty級以上のコーヒーしか飲んでいなかったので、後口の悪さが逆に新鮮であった (^^)

煎り上手焙煎と相性の良い網の研究

煎り上手の焙煎は、ガスコンロの上に直接かざすよりも、間に網を置いた方がずっと使い勝手がよくなるが、どんな網が適しているかという課題がある。網を使うことのメリットは以下の3つである。

  • 熱源が面状になり、均一に火を当てやすい。
  • 網自体も熱容量があり、煎り上手を網に押し付けることで伝導熱を積極的に使える。
  • 煎り上手を網の上に置いて休める
セラミック網+煎り上手
焼き肉網+煎り上手

網の種類としては、普通の焼き網か、セラミックがついた餅網のようなものに2分されるが、前者は煎り上手に直接火が当たるのに対して、後者は間接的になり、まるで高級焙煎機で使われる二重ドラムのような恰好になる。それぞれのメリット・デメリットは以下のとおり。

  • 焼き網:加熱の加速度がよく一気に温度を上げれるが、RORがピーキーな動きになりやすい。
  • もち網:安定した温度上昇が可能だが、失速気味のときに一気に過熱しようと思っても出来ない
ちなみに、百均の網は針金が細くて、10回程度使うと既に金網が崩壊して使い物にならなくなる。やはり金物屋で購入したい。僕が今回見つけたのは、ホルモン焼き網というもので、如何にもガッチリと太い針金で作られている。一方、セラミック網は最初、近所のスーパーSANWAの500円のものを買ったら7,8回の使用で金属が崩壊してきたので、カインズホームで買い直し。こちらは300円程度と安い。
焼き網2種類

今回は、セラミック網の加熱力の弱さを補うために、真ん中にドリルで7,8個の穴を開けて直火が少しでも通るようにしてみた。
セラミック網の改造

さて、これらを使って、セラミック網で3回、ホルモン網で2回焙煎してみた。
Artisanのプロファイルは下記のようになったが、正直、5回目の焙煎は油断していてちょっと失敗気味。よそ見している間に一気に過熱し過ぎて慌てて火から遠ざけて強引にリカバリした形。まぁ、それでも結果的にはトータルのバランスはさほど悪くないところが、Artisanのパワーである。

まず、セラミック網+煎り上手での焙煎3連発。東チモールだけはインドネシアに近いのでフルシティにしてみたが、その他はハイローストに仕上げた。最初の水抜きフェーズ(緑)がどうしても長くなりがちであるが、その後は徐々に加速してトータルでは悪くない。特にDTRという指標を見ると、Scott Raoが理想とする、20-25%に容易に収めることが出来る。
セラミック網での焙煎3連発

次は、煎り上手に直火が当たるホルモン網での2連発、4回目、5回目。
どうしてもRORのライン(青)が暴れやすいが、焙煎をコントロールする楽しさはより大きい。
5回目は前述したように、よそ見のせいで、中点温度が140℃もあり、リカバリのために、RORを一度ゼロにして故意に失速させている。その後は通常っぽいラインに乗せて、DTRは理想範囲の24.6%。

焼き肉網での焙煎2連発

5つの焙煎の焼き上がりはこんな感じ。
今回の豆はどれも今回初めてサンプルで取り寄せたもので、明日以降飲むのが楽しみである。
煎り上手焙煎5連発

ちなみに、雲南省のトリプルファーメンテーションという珍品も入っており、これは昨年のSCAJで入手したものである。生豆は見た目が結構汚く、欠点豆が区別できないほどで、匂いもかなり強烈。完熟果実のような発酵臭がプンプンする。しかし焙煎すると意外にも均一な色合いに焼き上がり、穏やかな香りになっている。不思議な豆である。

雲南トリプルFermant

煎り上手・霧吹き焙煎(ハゼなし焙煎に挑戦)

センチュリーフレンドさんが取り扱っている PRO1という韓国製の焙煎機はとてもユニークで、熱源がハロゲンランプと珍しいだけでなく、水タンクが右サイドについている。焙煎中、ハゼ直前の焙煎豆に霧吹き水をかけて一瞬温度を落とすことで、ハゼを起こすことなく、優しい味わいに焙煎する、というお話。

本日はこれを煎り上手で真似てみるテストをしてみた。

なおこれは1ハゼを止めるためのテストなので、時間節約もあり、温度上昇はかなり早くして水抜きを2,3分で終えてしまっているが、この点はもしかするともう少し時間を取った方が良かったかもしれない。
煎り上手・霧吹きテスト
<百均の霧吹きに浄水を入れたものを用意>

1回目:
一ハゼが起きる200℃の数度手前で霧吹きをジュッとかけて温度を下げた後は、そのまま加熱し続けてみた。結構しっかりかけたので当然、Artisanでみてもしっかりと温度は下がっているが、200℃くらいに戻ったところで普通にバチバチと1ハゼを起こし、まぁその後は普通にミディアムローストに仕上がっておしまい。これだけで味が異なるのか分からないが、取りあえずこのやり方ではハゼは止めれなかった。
モカベアー式ハゼなし焙煎チャレンジ1
<バサっと下がっている部分が霧吹きを掛けた個所>

ブルンジ・1回霧吹き
<普通のミディアムローストの豆面となった>

2回目:
やはり1ハゼが起きる数度手前で1回目の霧吹き、そして一度下がった豆温度が再び1ハゼ温度に近づいたらまた一吹き、という具合に、200℃に達しないように4回ほど霧吹きを掛けて、結局強引にハゼを起こさないまま排出。

これもちょっと違うかな、と思うが、見た目はなんだか先日、センチュリーフレンドで購入したグァテマラの中浅煎りの豆面と似ているような気もする。まぁ、気がする、というレベルではあるが、センターカット側に黒い皺が残った、独特のつや消しっぽい豆面という意味である。
モカベアー式ハゼなし焙煎2
<最後まで200℃を超えさせないまま排出>

ブルンジ・霧吹き焙煎
<豆面はこんな感じ、水を掛けたせいか重量減は13%と小さい>

こんな特殊な焙煎が簡単に出来てしまうのが、煎り上手のような焙煎器の醍醐味である。特にArtisanを接続しておけば、どんなことが起きているか数値とグラフで見れるので実験にはもってこいである。

先日、センチュリーフレンドの坂下氏にお会いした際にも、坂下氏がこの焙煎機がどのようなプロファイルで焙煎しているのか見てみたい、とおっしゃっていたが、実際非常に興味深い。プロファイルさえみれれば、もっとリアルな動きを試せるのだが。


粗悪な生豆を深煎りでどこまでリカバリできるか

ちょっと余興で、普通に焙煎したら、枯れ臭やかび臭さ、生っぽさなど不味さ全開で、全く飲めない生豆を、深煎りすることでどこまで飲めるようにできるかやってみた。どれくらい酷い状態の生豆かは下の写真で想像して頂きたい。これはエチオピア・レケンプティであるが、元々欠点豆オンパレードの酷い状態であったが、ジップロックで空気を遮断していたにも関わらず、半年ほどでさらに酷い見た目になっている。なんだか湿っぽい感じもするので、水分含水量がかなり高くなっていそうである。
粗悪な生豆

これを煎り上手を使って、ダブル焙煎の深煎りにしてみた。
なお、欠点豆は敢えて取り除かずにそのままの焙煎である。

レケンプティ深煎り


どうであろう? 見た目は少なくとも悪くは見えないね。
匂いはまぁ、安い深煎り豆に有りがちな焦げ臭い感じのもの。

さてこれをなるべくあっさりと短時間で濃いめにペーパードリップして、お湯で適度に薄めたコーヒーを作って飲んでみた。熱いときは意外と飲める。喫茶店でこれが出てきても普通に納得するかな、というレベル。 しかし冷めてくると流石に不味さが浮き出してきて、結局、半分ほど飲んでギブアップ。後味が悪~い! 

ということで、同じエチオピアでも、イリガチェフェ・チェルベサ・ウォッシュトの深煎り豆で淹れ直して、思わず口直ししてしまった。こちらは飲んだ後がいつまでも口の中が甘い。

これだな、品質の違いは!
エチオピア口直し

煎り上手テスト - Artisan ロガーなし vs 有り 比較

ブルンジ焙煎by煎り上手(粉)横

今日は僕のクラウドファンディングの中で使いたい動画を、パートナーのT氏に撮って頂いたが、それは 煎り上手だけで焙煎する場合と、ロガーを繋げて焙煎する場合の比較テストでもあった。使った生豆はブルンジ水洗式のニュークロップで、密度が高く火が入りにくい豆である。この手の豆は焙煎初心者には少々手強い。合計4回焙煎をして、最初の3回はArtisanなし、4回目だけいつものようにArtisanを繋げて焙煎した。Take-1、Take-2は1ハゼ開始から2分程度の中煎りを目指して焼いた。しかし温度計がないとつい火に近づけ過ぎてしまう。

Take-1:説明書どおり予熱なしで焙煎。5分いかずにバチバチ爆ぜだしたので7分弱で排出
Take-2:Take-1よりは時間をかけた。しかし結果は逆に少し浅くなってしまった
Take-3:2ハゼまで焼く意思を持って10分以上かけて焙煎。2ハゼ開始から10秒で排出
Take-4:Artisan画面を見ながらミディアムローストに焙煎 (プロファイル参照)


焙煎直後ではあるが、早速カッピングで味を確認。

結果は予想以上に歴然とした差が出て、大変興味深いものであった。つまり焙煎豆の見た目は大差ないのに、コーヒーにしてみると圧倒的に Take-4だけが美味しく、その他は明らかに美味しくない。Take-2に至っては芯残りが酷く、廃棄するしかないレベルであった。深く煎ったTake-3は苦みを強調した誤魔化しの味。ミルクを入れればそれなりに美味しいかもしれないが、ブルンジの良さは消失している。

まず焙煎豆の様子を全体からみたのが下記の写真。この様子だけを見て、Take-1, Take-2が明らかな失敗焙煎と見破ることは困難である。
ブルンジ焙煎by煎り上手


カッピングのために、7gずつ計量して並べたのが下の写真。この時点では、Take-1,4の豆面、色は類似しており、同程度の焙煎度に見える。Take-2はこの時点で既に浅い。
ブルンジ焙煎by煎り上手(豆)


粉に挽くとこんな感じ。Take-1は豆のときより色が薄い。つまり、豆の外側の焙煎進行に比べて、豆の内部の進行が遅れていたことがこの時点で既に分かる。
ブルンジ焙煎by煎り上手(粉)


水色はこんな感じ。ブラインド・カッピングとして、お湯をかける前に位置をシャッフルしているため、明らかに水色が濃い左上のTake-3 以外は、どれが何番かここでは分からない。
ブルンジ焙煎by煎り上手(ブレイク前)


カッピングするまでもなく、ブレークの香りだけで Take-2の芯残りは分かってしまうレベル。一方、Take-1, Take-4は香りだけでは区別がつかない。この2つを並べてみると水色も似ており、やはり区別がつかない
ブルンジ焙煎by煎り上手(水色-1,4)

しかし! カッピングしてみると、もう明白に Take-4だけが本来のブルンジの美味しさ、心地よいオレンジ系の甘い柑橘フレーバーが出ており、一見よく似ている Take-1はシャープな酸味ばかりが目立ち、甘みが全く感じられない。 煎り上手だけで焙煎するのは長くやっていなかったが、正直、ここまではっきりと差が出るとは思っていなかった。ちなみにTake-4の焙煎プロファイルはこんな感じ。Artisan付き煎り上手があれば、これと同じ味になるように焙煎することも容易である。
ブルンジ焙煎by煎り上手(Take4プロファイル)

追記: 2022/01/27
本日、上記の Take-1, 4 だけ、V60で普通に抽出した場合の比較も行った。
なるべく同じ抽出になるように、2つ並べて同量の豆を粉に挽いたものをドリッパーにセットし、同じポットから同時抽出を行った。結果は以下のとおり。
ブルンジ焙煎by煎り上手(抽出比較)

Take-1:
 アロマ:粉の状態ではキャラメルのような果実感も感じられ心地よい香り
 フレーバー:
  - 熱いとき:酸味が多少きつめだが悪くない味。3rd wave風の浅煎りの味
  - 冷めとき:酸味が尖ってきて甘みが少なくなる。

Take-4: (with Artisanロガー)
 アロマ:とてもバランスの良い気持ち良い香り。Take-1より深く複雑な香り 
 フレーバー:
  - 熱いとき:酸味・苦み・コクのバランスが程よく、とても美味しい。
  - 冷めたとき:完全に冷めきって飲んでも、全く尖った部分がなく、円やかで美味しい。

結論として、カッピングのときよりは優劣の差は少なく、Take-1の焙煎も悪くないという結果であった。しかしいずれにせよ、Take-2のように完全に失敗することもあり、狙った味を安定的に再現する、という意味ではロガー付きが圧倒的によい。ロガーで確認して、慣れてくれば、温度計が付いているだけでも、かなり狙いどおりに焙煎出来るようになると思われる。

焙煎教室

このところ、特に宣伝はまだしていないにも関わらず、ぽつりぽつりと焙煎教室の依頼が来るようになってきた。本日は知人2名が僕のログハウスに来てくれて焙煎教室を開催。内容はコーヒーの素材となる品種、栽培品種、精選方法について少し詳しく説明した上で、エチオピア・イルガチェフェのナチュラルとウォッシュトの豆を、Artisanロガー付きの煎り上手を使い、ほぼ同じ焙煎度合いに焙煎して頂いた。ロガーのお陰で、初めてとは思えない完璧な焙煎具合で、素晴らしいミディアムローストに仕上がった。うかつにも焙煎豆の写真は撮りそびれてしまったが、下記のプロファイルを見れば、見る人が見ればこれが如何に完璧に近い焙煎か、理解して頂けるかと思う。

エチオピア・ナチュラルby黒沢さん


エチオピア・ウォッシュトby小高さん

ちなみに、ナチュラル、ウォッシュトで選手交代している。
煎り上手by黒澤さん
煎り上手by小高さん

焙煎後は直ぐに挽いて、ペーパードリップで全く同じタイミングになるように抽出して味わって頂いたが、ナチュラルの方はフローラルな香りでとても甘く、トロピカルフルーツやドライフルーツ感のあるフレーバーは期待どおりのもの、そしてScott Rao氏が推奨する完璧な比率 Dry-Maillard-Finish = 50:30:20で焙煎されたウォッシュトの方は、レモンティーライクで爽やかな柑橘が香るクリーンな味わいで、イルガチェ・ウォッシュトのお手本のような味に仕上がっていた。まさにArtisanの成果である。

煎り上手+Artisanでの焙煎テスト(丸紅グァテマラ編)

本日はずっと雨で、ログハウスのテラスには屋根があるとはいえ、なんとなく肌寒いので、キッチンで煎り上手テストの続きを行った。使った生豆は、先日、センチュリーフレンドの坂下さんから入手したグァテマラ・ウェウェテナンゴで、丸紅から購入しているとのこと。 リファレンスとして、坂下さんが焙煎した中煎り豆を購入しておいた。ちなみに 600円/100gの豆である。

坂下さんが使うのは自社で取り扱っている韓国製ハイテク焙煎機で、PRO1CEというもの。この焙煎機は水タンクを備えており、ハゼる直前に加熱している珈琲豆に霧吹きのように水をかけることで一瞬温度を下げて、ハゼ(音)を起こさないように焙煎を進めるという特殊な焙煎機である。このように焙煎するとロースト臭が付かないそうである。スターバックスの焙煎士のアイデアを、この韓国の開発メーカーが取り入れたそうで、非常に興味深いモデルである。
PRO1焙煎機

今回は同じグァテマラ生豆を、僕が開発中の焙煎道具、煎り上手+Artisanで焙煎してみた。
最初の2回は、坂下さん焙煎の珈琲豆と同じ焙煎度(ミディアム)で、DTRの比率を変えて焙煎。
次の2回は焙煎度合いを深めて、ハイローストとフルシティ・ローストといったところである。

今回のチャレンジは、セラミック網の導入でどこまで滑らかに焙煎出来るか、である。網は近くのスーパーSANWAで500円ほどで入手したもので、斜めスリットの開いた鉄板+セラミック網+鉄網の3層構造で直火は抜けない。
セラミック網

煎り上手+Artisan焙煎中

キッチンのガスレンジは温度センサーが稼働して勝手に弱火になってしまうため使用を断念。代わりに換気扇の下にカセットコンロを置いて焙煎した。

結論から言うと、セラミック網のお陰でRORの変動は抑えられ、とても安定することが分かった。一方で、直火が当たらないため全体的に火力不足で、早焼きは難しくなる。十分な予熱を行って、失速しないように加熱し続ける必要がある。

まず下記写真が、丸紅のグァテマラ生豆とリファレンスとした坂下氏焙煎の珈琲豆である。コーヒーにしてみると、焙煎が浅い割にとても穏やかな酸味で、苦味はほとんどなくマイルドなフルーティさがとても飲みやすい。生豆はスクリーン選別がない典型的なグァテマラ豆の様子で、大きな豆~極小の豆まで大きさのバラツキがとても大きい。クロップ年の表記はなかったが、丸紅の生豆の回転の良さからみて2021年ものだと思われる。
グァテマラ・モカベアー
<右は坂下氏がPRO1CEで焙煎した中浅煎りのグァテマラ豆。モカベアーというブランドで販売中>


なお、Take-1は予熱温度が低く加熱を失速させてしまい途中で中断。したがってグラフは Take-2から始まる。

Guatemala-Take2


Guatemala-Take3

グァテマラ・Take2,3

この2つは、重量減で判断すれば同じ焙煎度合い、投入カロリーで考えると、230C*minと308C*minなので、理論的にはTake-3の方が焙煎度が深いことになる。明日以降、カッピングで違いを確かめたい。

Take-2:  投入カロリー 230C*min、重量減 (84.4%)  ミディアム・ロースト (DTR=20)
Take-3:  投入カロリー 308C*min、重量減 (84.3%)  ミディアム・ロースト (DTR=25)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Guatemala-Take4

Guatemala-Take5
グァテマラ・Take4,5

後半の2つは、それぞれ以下のとおりである。

Take-4:  投入カロリー 333C*min、重量減 (83.1%)  ハイロースト
Take-5:  投入カロリー 419C*min、重量減 (80.9%)  フルシティ・ロースト

さすがにこのくらいまで焙煎すると、焙煎直後からとても良い香りがしている。豆面も当然、綺麗になってくる。味わいは同じく明日以降のカッピングで確認するとして、Take-2, 3とは全く別のフレーバーとなっていることは間違いないだろう。

ちなみに、坂下さんは丸紅から購入した生豆はハンドピックはしないと言われていたが、ざっと見渡しただけで、やはり取り除いた方がよい欠点豆が多少含まれている。特に左上の方に見える発酵豆はまずい。1粒でカップ全体をダメにするという、あれである。
丸紅のグアテマラ欠点豆

さて、煎り上手+Artisanを使ったテストは明日以降も続く。

難敵マンデリンの煎り上手での焙煎

マンデリンの焙煎は難しいとか、マンデリンが上手く焙煎出来るようになれば一人前、とかいう話はよく聞くが、僕のメイン機、Cormorantで焙煎する限りはさほど難しいと感じたことはない。そこで本日はそのマンデリン(Ache Deep Greenのニュークロップ)を、煎り上手でフルシティまで焙煎するテストを行った。
煎り上手予熱中(マンデリン焙煎)
<いつものようにログハウスのテラスに道具一式を設置>

やってみて気が付いたことは、煎り上手のような焙煎器具だからか、マンデリンは一ハゼの音があまりしない。どこが開始か分からないくらい、パチ、パチ、とまばらに始まり、すぐに止まってしまう。豆の量も少ないため、1ハゼに伴う気化熱によるRoRのドロップも観測しにくい。ただその後しばらくして発熱反応に切り替わると、急に温上が激しくなるため火から少し遠ざける必要が出てくるが、この加減が大変難しい。 

1回目の焙煎では前半は良い感じで火が入って、Scott Rao氏推奨のNatural Roastっぽく進行したが、1ハゼ開始後に火から遠ざけ過ぎて、一度温度が下がり始めてしまい、そこからはどんなに火に近づけても、うまく波に乗れず、そのまま失速。15分以上引っ張っても2ハゼが起こせず、ごらんのとおりの失敗焙煎となった。投入カロリーは404C*min でも色合いはせいぜいハイロースト程度。

2回めは、絶対にRoRを負の値にしないぞ、と臨んで、前半は周りからの風が少し強くなったりして、少々乱れ気味であったが、とにもかくにも上手く温度上昇していき、順調に2ハゼに持ち込んで、綺麗なフルシティの焙煎に仕上がった。投入カロリーも 331 C*min と、メイン機で焙煎するときとだいたい同等な数値であることから、恐らく味わいも同じになっていると思われる。

マンデリン焙煎by煎り上手

マンデリン焙煎豆比較

確かに他の生豆に比べて、マンデリン豆の焙煎は少し難しいように感じた。まだまだ修行が足りないのか。

【2022/1/4 追記】
本日、両方のマンデリンを試飲してみたところ、成功焙煎の方はまさにマンデリン・アチェの薫り高いフレーバーが出ており、ほぼベストの焙煎であったのに対して、失敗焙煎とした1回目のものもさほど悪くない。フレーバーこそ劣るものの甘みがあり飲みやすいマイルドな味であった。要するに "Bake"と呼ばれるだらだら焙煎をしたことで、Bake焙煎特有のまったりとした味わいが出た、ということらしい。素材が良い豆なので、結局どう焼いても美味しいのであった。

おうち焙煎 with 科学的アプローチ

今年もついに大晦日。もう新年までカウントダウンできそうな時間である。さて、ここのところKAZUHICOFFEEではある実験を繰り返してきた。それはミニマムな焙煎道具、煎り上手に焙煎ロガーを取り付けてどこまで出来るか、というものである。
煎り上手たち

最初はただ熱電対デジタル温度計を仕込んでみた。これだけでも俄然面白い。一回70gの焙煎、というのを逆手にとって、豆を気にせず色々と冒険が出来るのが強みである。そもそもこの焙煎器具は20年間売れ続けているロングセラーだけあって実によく出来ていて、まぁ適当にやってもそれなりに失敗なく焼けるのである。
煎り上手+温度計実験

しかし、焙煎ロガーを付けるとどうなるか。リアルタイムで温上スピードであるRORが読み取れるだけでなく、このペースなら何分後にハゼかなど、細かく表示されるので、まさに思いどおりの焙煎が出来るのである。ちょっと気を付けてやれば、プロの焙煎師が本格的な焙煎機で焼いた珈琲豆となんらそん色のないレベルのものも作れる。再現性を追求することも出来る。
煎り上手室外実験中
煎り上手室内実験
<寒い日はログハウス内でも焙煎テスト>

来年はこれを使って、「お家で焙煎教室~科学的アプローチ」(仮題)というのをやってみたいと目論んでいる。一クラス分(40人程度)の焙煎道具を用意して生豆と共に配布し、マニュアルと課題を提供する。だんだんと難易度が増すと同時に高級な豆を使う形で、6~8回の課題をクリアすることで、初心者でもあっと言う間に素晴らしい焙煎が出来るようになる、というものである。コース終了後は手元に焙煎道具が残るだけでなく、美味しい珈琲豆も手に入る。これをクラウドファンディングで出来ないか、というのが今の計画である。さぁ、来年早々からまた忙しくなるぞ~

煎り上手Artisan付き2号機
本日、Artisan接続用の2号機を制作。温度チェックも合格  (^_^)

歴代煎り上手

これは先日、煎り上手の発売元である発明工房さんを訪問した際に撮らせて頂いた、開発途中の煎り上手。2002年の発売前の1年くらい集中的に様々な試作品を作ったとのこと。無骨なものや、銅製のものなど、なかなか興味深い。

追伸:
今年はここまでですが、最後にいつも僕の風変わりなブログを読んでくれている皆さまに感謝致します。たまにコメントを頂いたり、なかには北海道とか島根といった遠方からログハウスまで来てくれた方までいて、とても励みになっています。来年はさらに深く、しかしどなたにも分かりやすい内容をアップしていけるように頑張ります。 では皆さま、良いお年を!

  KAZUHICOFFEE 2021年大晦日 すっかり快適なオフィスになったログハウスにて
ログハウス冬仕立て


優秀な焙煎器具「煎り上手」の進化系

珈琲焙煎はちょっとした化学実験である。実験の結果は、焙煎豆という見える形で出てきて、最終的にはそれを粉にしてコーヒー液に抽出して味わうことで、その実験がうまくいったかどうか判断するわけであるが、話はそう簡単ではない。というのも、コーヒーの味の感じ方や好みは個人差がとても大きいからである。特に苦み成分を複雑に多数含むコーヒーの場合、旦部幸博氏によると、ある種の苦みを強く感じる人もいれば、全く感じない人もいるということなので、もう好みとかいうレベルではなく、味わっているモノ自体が異なるといってもよいかもしれない。

それはさておき、珈琲焙煎を自分で操れるようになると自分好みの味を作ることは出来る。自分好みの珈琲豆を、あちこち出掛けたり、ネット上で探し回るのは楽しいが、一つの珈琲生豆から驚くほど多彩な味を作れることを知ると、だんだんと闇雲な飲み歩きはしなくなる。自分がそうであった。

ということで、本題の家庭焙煎である。家庭焙煎はもうちょっとしたブームであり、例えば焙煎や焙煎機に関するFBグループを検索すると世界中には驚くほどたくさん存在することに気付く。一番お金を掛けない方法としては、100均などで売っている安価な手鍋やフライパンを使う方法や、小さな手網を使う方法があるが、ほとんどの人は直感の世界で焙煎しており、毎回上手くいった、いかなかった、という結果だけに一喜一憂しているのではないであろうか。 この場合、たとえ千本ノック的に焙煎しまくったとしても、毎回狙った味を出したり、前回と同じ味を再現するのは最後まで難しい、というか理論的に不可能である。 

そこで僕が考えているのは、小さな焙煎器具にも科学的アプローチを加えることで、短期間で焙煎を理解して、根拠を持った焙煎で味作りが楽しめるようにできないか、ということである。

煎り上手+温度計
<温度計付き煎り上手>

煎り上手+Artisan
<Artisanロガーが動作しているラズパイを接続した煎り上手>

Artisanグラフ+煎り上手
<煎り上手で焙煎したときのプロファイル例>

今手始めに実験しているのが、発明工房の「煎り上手」の進化版で、一つは柄の部分にデジタル温度計を差し込んだバージョンで、これだけでもかなりのことができるようになる。もうひとつは、Artisanロガーにつながるバージョンで、こちらが本命、これがあれば、文字どおり短期間で焙煎のなんたるかが学べると信じている。 

この仮称「焙煎見える化キット」付の煎り上手と、厳選した練習用、ステップアップ生豆セットを使えば、一か月後には誰でもちょっとした焙煎師になれるとしたら如何であろうか。なにしろ焙煎は、焙煎機の種類や手法で捉えると無数に方式があってどれがよいのやら難解を極めるが、焙煎プロファイルという本質で捉えると、焙煎方式、器具だけでなく、バッチ量ですらあまり考慮しなくてもよくなる。純粋に化学実験的に理解できたなら、将来本格的な焙煎機に進んだとしても、それも直ぐに理解できのではないだろうか。



ギャラリー
  • 超高速フレンチロースト
  • 超高速フレンチロースト
  • 超高速フレンチロースト
  • 超高速フレンチロースト
  • 超高速フレンチロースト
  • 超高速フレンチロースト
  • 超高速フレンチロースト
  • 伝説の店、珈琲美美に行ってきた
  • 伝説の店、珈琲美美に行ってきた
カテゴリー