香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

焙煎

ブログの引っ越しのお知らせ

~~ お知らせ ~~

香豆火珈琲のブログはこちらに引越ししました!

KAZUHICOFFEE 珈琲焙煎&科学的アプローチ

1年かかりでのんびり作業しておりましたが、なんとか過去の記事を全てカテゴリ別に整理して、ついでに一部は更新してあります。そして最近新しい投稿もぼちぼち開始しております。

お湯洗い焙煎はブラインドで判別できるのかの検証
コーヒー雑味についての考察(バンカメ・ツル編)

これからも頑張って面白い記事を投稿していきますので、どうぞご期待ください。

香豆火珈琲店主 2023/9/25 秋の夜長に

超高速フレンチロースト

SQ_French_焙煎豆の様子
<3分24秒で焼いたブラジル・ショコラ>

さて、前回の更新から9か月ほど経ってしまった。言い訳がましいけど、実はブログをWordPress化して自分のHPと一体化させようと計画したのが去年の今頃で、XSERVERを借りて、引っ越しもある程度までは進んでいるのである。しかし技術不足でとん挫したまま、このLivedoor側の更新もなんとなく躊躇っていた。今の状態はココ。ブログの分類とか検索機能とかを考えているがどうもやり方がわからない。だれか詳しい方がいたら教えてほしい!

KAZUHICOFFEE ログハウス - KAZUHICOFFEE 珈琲焙煎&科学的アプローチ (kazuhicoffeelab.com)

それはさておき。 
SQ_French_プロファイル

以前に超高速ノルディックローストの記事を書いたが、少し前にもしかしたら、そのまま少し時間を引き延ばせば超高速フレンチローストも可能なのではないか、と思いついて、本日それを実践してみた次第。

道具立てはもちろんいつもの焙煎ロガー付きの煎り上手である。
SQ_French_焙煎環境


やり方は以下のとおりである。
  • 生豆は通常の70gではなく、ハンドピックした40gを用意
  • 煎り上手を220℃まで予熱したら、素早く生豆を投入する
  • しっかりと攪拌し続けて、中点を超えて220℃に達したら素早く火から下ろす
  • そのまま余熱を使って焙煎を続け、いったん235℃くらいに達してもそのまま攪拌継続
  • 再び温度が降下し始めて、226℃になったら冷却装置に排出して素早く冷却する
結果は冒頭の写真のように、表面焦げもほとんどなく、なかなか均一に焙煎されている。例によって豆の色ではシティロースト程度に見えるが、235℃という焙煎温度の高さを考慮して、一応これを超高速フレンチローストと呼ぶことにする。どうだろう。取り合えず見た目はなかなか美しい。

水分量の減少度合いは83.5%で、ブラジルとしては通常焙煎した場合のハイロースト程度である。しかし、超高速焙煎の場合は常に水分減少は少なめになるため、これは十分にフレンチの領域とも言える。

SQ_French_冷却中


SQ_French_焙煎度84%

割ってみるとこんな感じで、特にグラデーションもみられない。
齧ってみても焦げ臭とかは感じられず、パリッととても香ばしい。

SQ_French_焙煎豆断面

最後に夕方遅くだったので、10gだけ細挽きにして、88℃、150gのお湯でペーパードリップしてみた。うーん、これは美味しい。バニラやムスクの香りがふわーッと感じられて、程よい苦みと酸味のバランスのとれたフレーバーとなっていた。これを飲んだ人は、3分24秒で手焼きしたとはきっと誰も信じないだろう。それくらい完成度の高い味なのである。

SQ_French_コーヒー抽出

残りの豆はとっておいて、来週ログハウスに遊びに来てくれる予定のバリスタN氏と珈琲マニアN氏 (別人だけど両人ともイニシャルがNだな)にも客観的な評価をしてもらおうと思う。

あ~、ほんと久しぶりのブログ更新でした!

まき直し焙煎のコツ

2年以上前に、まき直しマジックというブログを投稿したが、未だ「まき直し焙煎」という用語は市民権を得ていないようで、グーグル検索をかけても何もヒットしない。

要するに再焙煎のことを僕がそのイメージから名付けたものであり、どう呼んでもいいのだが、やはりこの言葉が僕にはしっくりくる。
エルサルバドル巻き直し

今回この焙煎を行ったのはエルサルバドルの豆で、お客様からの注文で通常の焙煎より浅いシナモンローストに焼いたわけだが、ちょっと大量に焼きすぎて300g以上残ったため、久しぶりにやってみるか、ということで行ったのがこのプロファイル。

ElSalvador巻き直し焙煎


改めてやってみると、同じバッチ量の通常焙煎と比べて同じ火力でも火の入りが速い。

元の焙煎豆の水分量は恐らく3%かそれ以下で、狙いとしては僅かでもコーヒー豆の中に結合水が残っている間に芯まで火を入れてしまおう、という作戦。そしてその後はゆっくり目に表面だけ焦がさないようにじわっと熱していった。それでも通常焙煎よりはずっと進行が早い。

まき直し焙煎は取り合えず成功で、特にムラや焦げもなく、スモーク臭もフレンチとしては適切なレベル。まぁそれなりに美味しい深煎り焙煎豆が完成した。ただ、通常焙煎でフレンチローストにした場合に比べて、香りや味ははどうなのか、という点では検証不足である。



さて、まき直し焙煎に関して、先日こんなことがあった。

僕が時々お邪魔させて頂いている某ロースター販売所にふらりと立ち寄ったら、ちょうど店主が焙煎を開始しようとしていたので横で見物していたら、ちょっと目からうろこが落ちる話を聞いてしまった。

店主が行おうとしていた焙煎が、まさに「まき直し焙煎」であったわけだが、やっていたことは、

 店頭で売れ残った焙煎豆を複数混ぜ合わせてアイスコーヒーを作る

であった。なかなか器用なお方で、豆の大きさや種類、元の焙煎度合いなどを考慮して、一部の豆は投入タイミングを変えておられた。しかし1回目のまき直し焙煎ではまだ深さが足りず、冷却後に2回目のまき直し焙煎をして、最後には綺麗なフルシティ・ロースト豆が完成

これを袋に詰めてお得意様に納品するとのことで、思わず僕が「そんなんで大丈夫ですか?」と訊いたら、昔からみんなやってるよね、とのお言葉。う~む、そうだったのか。。

まぁ、そうだよね、、廃棄したくないもんね。香りが抜けたコーヒー豆をそのまま売ってしまうよりはいいし。と思いつつもちょっと複雑な思いが駆巡ったのであった (^^;

焙煎豆の中に見つかった石

ちなみに、焙煎中に覗き窓から見ていたら小石が混じっているのを発見し、それはさすがにマズいですよね、といったら、「日本人はこういうことに細か過ぎるんだよね」とのコメント。

わぉ! なんとまぁ、おおらかな (^^;

とはいえ、焙煎後にぐるぐる回る冷却トレイの中で一応その小石を探しておられたが、なかなか見つからず、なかったことにしようとされているように見えたので、さすがにそれはと、僕がお手伝い。

まるで池の水を抜くように、珈琲豆を少しずつ別の容器に移していったら、最後の最後で発見!!  

大量の珈琲豆の中で、これは簡単には見つからないよ、というサイズ。
でももしそのままミルにかけたら、きっと悲惨だよね。

欠点豆の混入した生豆
<こんな感じの生豆をそのまま焙煎機に投入されている>

ここの店主は、欠点豆のハンドピックも全くやらない主義で、ことごとく、僕がふだん皆さんに伝道している内容と真逆のことをされているのである。

ただそれで20数年間ちゃんと商売出来ている、という事実はなにを物語っているのか。

了。


イエローポイントについての考察

今回は水抜きフェーズの最終地点、俗にイエローポイントといわれる段階について考察してみたい。
一般的な解釈は「水抜きフェーズによって生豆から十分に水分を抜いておけば、その後の焙煎がムラなく進む」というものだと思うが、僕はこれは俗説だと考えている。もし本当であれば「超高速ノルディックロースト」は成り立たないはずである。

さて、まずこのグラフを見て頂きたい。
MoistureContent-RoastTime

これはスコットラオの著作 「THE COFFEE ROASTER'S COMPANION」の30ページに掲載されているグラフで、生豆を焙煎していく中で、コーヒー豆の中の含水量が焙煎するにつれてどう変化するかを表したものである。縦軸の単位が明記されていないが、どうやら1目盛りが2%で約13分半で深煎りにしていったときの実験データがプロットされている。最初12%強から開始して、最終的に2%を切っているわけであるが、注目すべきは含水量は最後まで一貫して減っているという事実である。前半に減少速度が速い、微かな逆イールド・カーブになっているのはある意味当然であろう。

Drying Phase, Middle Phase, Development Timeという3つのステージについて、彼の本の中には以下の説明がある。

「水抜きフェーズという言葉は誤解を呼びやすい俗説である。水抜きは焙煎の間つねに発生している。ただ、十分に含水量が減って豆が少し黄色っぽく(shade of tan)になると、豆が膨らみ酸や芳香が生じ始める。メイラード反応は121~149℃で活発だが、約171℃に達するとカラメル化反応が始まり、ショ糖(還元糖)を横取りするためメイラード反応は(燃料を奪われて)速度が鈍化する」

また別の本で、彼は焙煎を4つの段階に分けて説明している。つまり、
  • Drying Phase (水抜きフェーズ)
  • Browning reactions (メイラードフェーズ)
  • Development time (カラメル化フェーズ、最終フェーズ)
  • Carbonization (2ハゼ後半からの最終フェーズ?)

さて、話が長くなってきたが今回僕が行った実験は、僕がこの水抜きフェーズの終わり(DE)としている160℃の前後で、実際に豆の色はイエローポイントになっているのか、である。

クロロフィルを含有することで生豆は緑色を帯びているが、これが熱分解されて黄褐色になっていく、とされているが、実際はどうであろうか。実験では、CR600焙煎機を使って、135~175℃の間、5度おきに Trierで少量のサンプル豆を取り出していった。イメージは以下の感じ。なお焙煎では最初にガッと熱を入れた後は、RORを落として、意図的にDEまでの時間を長引かせている。
YellowPointTestエルサルバドル
テストに使ったのは、非常に火が入りやすい中米産コーヒー代表、エルサルバドルの水洗式生豆である。これをシナモンローストにするまでに少しずつ取り出したのが下の写真である。
色の変化を見やすいように、真ん中に焼き上がったコーヒー豆のサンプルを置いてみた。

イエローポイント確認(エルサル・通常)


次にこの豆を50℃のお湯と水でしっかり洗って水分が増加した状態で焙煎してみた。
お湯・水洗い直後の生豆の状態はこんな感じで、焙煎してもほぼチャフが出なかった。
エルサル生豆(お湯洗い後)

イエローポイント確認(エルサル・お湯洗い)


最後が、比較的、火が入りにくい南米産の水洗式ニュークロップ、ペルーホープである。エルサルバドルに比べて生豆の緑が濃い。
イエローポイント確認(ペルーホープ)


どうであろうか。

ちょっと贔屓目もあるかもしれないが、僕の目にはどのケースでも160℃で緑の色相が消失しているように見える。


ScottRaoGraph

ちなみに、上記のScott Raoがネットに上げているグラフを見ると華氏302℃をDEとしており、これは約150℃である。なぜ僕が160℃をDEと決めたのか実は今思い出せないのであるが、やはりScott Raoの著作の中にその記述があったような気がしている。

いずれにせよ、今までの説明を振り返ってみても分かるように、水抜きフェーズやDEには明確な定義も範囲もないし、よってイエローポイントという明確な地点も実は存在しない。そして仮にイエローポイントをアグトロン値などで正確に定義出来たとしても、それにより焙煎が制御しやすくなるなどの効果があるとも思えない。

要するに理解すべきは以下のサマリーだと考えている。

  • 生豆の含む水分(10-13%)は焙煎により2%前後まで一貫して減り続ける。
  • 含水量が十分に減って、ある温度(121度)に到達するとメイラード反応が活発になる。
  • さらにある温度(171℃)になるとカラメル化反応が活発になり、ショ糖を使い尽くすことでメイラード反応は収まっていく。

してみると、僕自身も説明によく使っている焙煎の3つのフェーズとは何か?
敢えて定義するなら、それは「焙煎プロファイルを理解しやすくして、同様な焙煎を再現しやすくするため仮に置いたマイルストン」というところであろうか。

以上、勝手な意見を述べてみましたが、反論・異論などのコメントがあれば歓迎いたします。





2つの焙煎機どうしで同じ焙煎度にするための温度補正プロファイル

僕の焙煎道具と言えば、最近では専らメイン機のCormorant CR600と「煎り上手」で、その他の焙煎機、GeneCafe, Sandbox Smart R1, UNIONサンプルロースター、あるいは手網、といった焙煎道具はほとんど出番がない。 要するに最初の2つがあれば大抵は事足りてしまうのである。
Peruオフセット確認

さて、どちらの焙煎道具でもArtisan焙煎ロガーを使っており、役割としては、新しい豆に当たるときには煎り上手が常に先鋒で、バッチ量70gと小回りが利くこと、そして自由自在にプロファイルが描けることが大いに役立つ。 そうやって焙煎度を決めたら、その時のプロファイルもあることだし、それをバッチ量600gのCR600で再現したいわけだが、ことはそう簡単ではない。

複数の焙煎機を使っている方ならご存じかと思うが、焙煎機によって温度表示がかなり異なるという事実があるのである。

例えば「1ハゼ開始」という比較的分かり易いイベントで比べると、CR600と煎り上手では 6-8度程度のズレがある。CR600の1ハゼは194度前後で来るのに対して、煎り上手では200-202℃くらいの時が多い。
Peruオフセット焙煎豆

本日は当初は煎り上手でなんとなく水洗式のペルー豆の煎り分けテストをしていたのだが、途中から方針変更して、KOPE花伝カフェさん用にCR600で焼くときのペルーの焙煎度合い(重量減83.5%前後)を煎り上手で再現する、ということに挑戦してみた。

結論から言うと、オフセット分を勘案した排出温度で取り出すと、かなり近い焙煎度合いになることが改めて確認できた。CR600の排出温度が225度で、同じ程度のDev時間(1ハゼ開始~排出までの時間)であれば、煎り上手の場合のオフセットを6度として、231度で排出すればちょうど同じ焙煎度合いになる。今回はDev時間はほぼ同じであるが、オフセットが5度弱と少し足りなかった分、目標の83.2%に対して83.9%となり、若干浅い焙煎となった。

Peruオフセット確認

4回の各試行の焙煎度は、Take-1: フルシティ、Take-2: シナモン、Take-3: ミディアム、Take-4: ミディアム・ハイ といったところである。

焙煎順がバラバラな点はご容赦願いたい。取り合えず焙煎順にプロファイルを掲載する。

Take-1: フルシティ(※途中でArtisanの設定を弄りながらで、かなりいい加減な焙煎)
PeruHope-Take1-241

Take-2: シナモン
PeruHope-Take2-219

Take-3: ミディアム
PeruHope-Take3-225

Take-4: ミディアム・ハイ (※これが一番、ターゲットに近い焙煎)
PeruHope-Take4-230

ちなみに、テストしているうちに少しずつ気合が入ってきて、Take-4は Take-3のプロファイルをBackgroundに出して、それを辿りながら少しその先まで焙煎する、という焙煎であったが、こんな感じでしっかりと重なっている。頑張ればこのような焙煎が可能なのが、煎り上手+焙煎ロガーの醍醐味である。

PeruHope-Take4-with-Take3













マンデリンの煎り止め判断

マンデリン・アチェ・ディープ・グリーン

マンデリン豆の特徴は、スマトラ島のテロワールがなせるものというよりは、やはりスマトラウォッシュトという精製方法に負うところが大きいと思う。そもそも、スマトラ島の湿潤な気候の中では、ナチュラル精製など乾燥に時間のかかる処理をしていたら発酵が進み過ぎるか、カビが生えてしまってどうしようもないに違いない。

ウォッシュト精製でもパーチメントコーヒーの乾燥には通常は1~2週間かかると言われており、これをスマトラ島でやったら、恐らくいつまで経っても乾かないのだろう。

そこで、とにかく3日間だけ乾かして、さっさとパーチメントを外して種子だけの状態で乾かしてしまえ、というのがスマトラウォッシュトである。

ちなみに、同じインドネシア産でも、ジャワ・アラビカで有名なウォッシュト精製のコーヒーは全く風味が異なる。ということで、やはり最大のフレーバーの違いは精製方法からくる考える次第である。

閑話休題。

そのスマトラ・ウォッシュの豆は一般に焙煎が難しいとされるが、やってみれば納得してしまう。
まずハンドピックが難しい。どこに欠点豆の線引きをするか実に悩ましい。それによりどれくらいの風味が変わるのか、雑味が増減するのか、いずれじっくり実験してみたいが今回は別の話題、煎り止めの判断について取り上げたい。

先日、お客さんからの注文のマンデリンをフルシティーローストに焙煎しようとして、うっかり浅くなってしまい、納得できずに再度焙煎した際の2つのプロファイルが興味深かったので紹介したい。

まずこちらがハイ~シティロースト程度になってしまった焙煎プロファイル
豆の排出温度は230度で、取り出したときは2ハゼがバチバチしていた。

マンデリン・アチェ・Drop230度AUC242

そしてこちらがちゃんとフルシティまで焙煎したときのプロファイル
こちらも排出時の温度は230度である。

マンデリン・アチェ・Drop230度AUC375

しかし焙煎された豆を見て頂くと分かるように、2段階くらい焙煎度合いが異なる

重量減も83%と80.5%と全く異なる。焙煎ロガーを使っているので、滅多にここまで外れた焙煎度にはならないのであるが、1回目の焙煎では、勢いのある2ハゼの音と、焙煎最中の豆の色に惑わされて、つい早めに排出してしまった。この辺がマンデリンの焙煎の難しいところか。

マンデリン・アチェの煎り止め(同一排出温度)



同じ排出温度でも1ハゼ開始から排出までの時間は3:46と5:38と全く異なり、投入熱量に比例すると言われるAUC(Area Under the Curve)の値は242と375である。

結局、煎り止めの判断は、ロガー上では排出温度(つまり1ハゼ温度からの上昇温度)以外に、1ハゼからの排出までの時間、全体の焙煎時間などを見て、さらには音、色、匂い、煙りといった状況を見ながら最後はエイヤで決める必要がある。

同じ豆どうしであれば、焙煎度合いの一致を確認するには重量減を比べるのが一番確実である。

焙煎も数をこなしていると、バッチ量が違ったり、投入温度や中点温度がかなり違ったりしたとしても、途中のリカバリーで最終的にほぼ同じ焙煎度合いに出来るものである。そのときの自分の煎り止めの判断は言葉ではうまく説明できないが、とにかく大抵うまくいってしまうから不思議である。

僕は焙煎ロガーで、焙煎に科学的アプローチを持ち込むことで、誰でも簡単に目的の焙煎が出来るようになることをモットーとしているが、結局は職人的な勘の有無で結果に差が付くことも否定できない。

そういえば、焙煎ロガー Artisanとは「職人」という意味だな。

白っぽい生豆、ムラのある生豆

皆さんは生豆をハンドピックする際に、白っぽい生豆を見つけたら取り除く方が多いと思うが、もしそれが多数点在している生豆に当たった場合はどうしますか? 

先日初めて購入してみた エルサルバドルSHG ジュリア Qグレードという生豆、見た目はあまり綺麗とはいいがたいものであった。白っぽい生豆が点在しており、密度が低そうに見える。実際には、高度1200mのSHGグレードなので、決して低地産ではないのだが、焼いてみるまでは少し心配であった。

ElSalvadorJuria生豆



白っぽい豆を軽く分離してみると、こんな感じである。
ElSalvadorJuria白い生豆

さらにブラックライトを当てると、やはり白っぽい豆の方がよく光る。
ElSalvadorJuria生豆+BlackLight


これを焙煎していくわけだが、取り合えず白っぽい生豆も敢えて取り除かずに焙煎してみた。
途中経過を見たかったので、今回は1ハゼの少し前で一度煎り止める「ダブル焙煎」にしてみた。

すると下記の写真のように、この時点でもうほとんどムラがない。少し意外であった。

ElSalvadorJuriaダブル焙煎途中

最終的に浅煎りに仕上げてみたが、やはりほとんどムラがない仕上がりである。
ElSalvadorJuria浅煎り


というわけで、結論として分かったことは、色が他の豆に比べて白っぽいからといって必ずしも死豆というわけでなく、取り除かなくてもちゃんと焙煎される豆もある、ということであった。

焙煎中の攪拌量についての考察

先日面白い現象に出くわしたのでここに紹介する。

もし、浅めの焙煎したときに妙な酸味が出て困っている方がおられれば、是非参考にして頂きたい。

発端は、僕が提供したロガー対応・煎り上手を使ってくれているある方(S氏)からの報告であった。

自分のセットはいつも1ハゼ開始温度が高い」と何回も言われるので、熱電対の取り付け位置やArtisanの設定を色々と変えて頂いたり、僕自身も同じ条件になるように色々試してみたが、どうにも話が噛み合わず、ついに先日、検証のために僕のログハウスまで来て頂いた。

S氏は、Artisanのデザイナー機能で作成した理想形フェーズ比率のプロファイルのカーブを、見事にトレースするような焙煎をされるのだが、一方で「自分が焼いた豆が美味しいと思ったことがない」とおっしゃるのである。

そこで同じ豆をまず僕が焼いてみせて、次にS氏にいつものやり方で、同じような焙煎度合いに焼いて頂いたのが下記のプロファイルである。これだけ見たら、どうみてもS氏の焙煎の方が上手いし、美味しいコーヒーになったと思うであろう。

攪拌の違い

それぞれのプロファイルを拡大するとこんな感じである。

<S氏の焙煎>
シダマ高攪拌焙煎


<僕の焙煎>
シダマ普通攪拌焙煎



ところが実際に飲んでみると、S氏の焼いたものは妙なエグ味や酸味が出ていて、僕には非常に飲みにくい味なのである。一方で僕が適当に焙煎した方のコーヒーは期待どおりの浅煎りモカの味わいであった。

焙煎する様子を見て直ぐに気付いたのは、S氏はカーブを綺麗に描くために、投入直後から物凄く細かく振り続けることである。高攪拌焙煎である。それに対して、僕の焙煎は至って暢気で、開始から1ハゼ投入くらいまでは、1~2秒に一回、ザッ、ザッと振る程度であるが、これでムラになったことはない。

さて、この違いは何かと考察してみる。
まず、煎り上手は半熱風式の焙煎道具であることを思い出して頂きたい。

攪拌量を増やすということは、コーヒー豆の間の空気を動かし、より多くの空気を外から取り入れることになる。結果として対流熱は減り、加熱は予熱した煎り上手本体から伝わる伝導熱が主体となる。つまり加熱効率が落ちるということである。

同じ予熱であれば、伝導熱+対流熱を使った方が一気にコーヒー豆内部まで加熱が可能である。
もし予熱が十分でなく、加熱効率が低いと、コーヒー豆の芯に熱が浸透する前に、表層部の自由水が失われて内部に熱が伝わりにくくなるのではないか、というのが僕の推察である。

ちなみに超高速ノルディックローストでは、初っ端からS氏の焙煎同様に細かく振り続けるが、これは220度という物凄い予熱を与えているからバランスが成り立っていると考えている。

何はともあれ、あとは実験を重ねることで、ここでの推察が正しいのか帰納法的に検証していきたい。
現在、ルワンダ・スカイヒルという生豆を使って、高攪拌・低攪拌・超高速ノルディックの3種類の焙煎を行ったサンプルを用意して、友人のバリスタ N氏にカッピングを依頼したところである。

さて、そんなことを考えていた矢先に、別の顧客から同じような報告が寄せられたので、そちらも紹介したい。その方もかなり細かな高攪拌焙煎をされるそうで、自分の焼いたケニアの浅煎りが、「トマトのような鮮やかな酸味を期待したのに、クリア感はなく、変な香ばしさと甘さを伴ったトマトケチャップのようなフレーバーでマズくて飲めませんでした」とおっしゃられる。

そこでプロファイルを送って頂いたら、なんだかS氏の焙煎と似ているのである。
これはなんだか偶然ではないような気がするのである。

ケニア高攪拌焙煎2





僕が自宅焙煎を勧める理由(その他、順不同で)

表題のとおり、KAZUHICOFFEEが考える自宅焙煎の魅力について語ってみます。
あまり大上段に振りかぶるつもりはないですが、一応、焙煎の流れの中に魅力と思われるポイントを嵌めこんでいきます。

1. 生豆の選択
基本的にネット購入です。業者向き販売会社の会員になるのが基本で、会員になると価格が見れます。すると世界中の高品質なスペシャルティコーヒーへの扉が開きます

購入単位は大きくなりますが、焙煎豆に比べて圧倒的に単価が安いので、憧れの珈琲豆がぐっと身近になります。まとめて購入した生豆はジップロックに小分けして密閉して冷暗所に置いておけば、とても長持ちします。

ちなみに一般に、生産国や栽培品種よりも、精製方法の方が味わいの違いを大きくします
昨今流行りのアナロビック精製などはその典型ですね。
ルワンダ生豆


2.焙煎道具の選択
色んな道具がある中で、初めての方にお薦めは、ずばり「煎り上手」です。
理由は以下のとおり。

  • 手振りタイプの焙煎道具としては珍しい半熱風方式で、簡単に綺麗にムラなく焼ける
  • 焙煎量が70g程度なので、様々な実験的焙煎を繰り返しても被害が少ないので冒険できる
  • アルミ製の本体は頑丈で、僕の知る限りどんなに酷使しても、木製の柄が焦げることはあっても本体が変形したり破損したりしたものを見たことがない。
  • 価格がお手ごろ(先日、発売以来初めて3割ほど値上げされましたが、それでも安い!)

KAZUHICOFFEEではこれに、焙煎ロガー「Artisan」と取り付ける改造を行っていますが、
この場合、恐らく世の中で最も安価なロガー付き焙煎が可能となり、これはもう掛け値なしで楽しい! とてもお勧めなのです。

焙煎道具-キャプション付3


3.焙煎準備
前回のブログに書いたとおり、好きなだけ丁寧なハンドピックが出来ます。
その気になれば究極のポジティブ・ハンドピックなんて技も使えます。
少量で自分のためと思えば、いくらでも手をかけられますね。

<追記>
お米農家が、出荷用とは別に、自家消費用のお米は特別に手をかけて低農薬で作付けしているという話をよく聞きますが、自家消費用のコーヒーに手をかけるのはそれに少し近い感覚かもしれません。実際そんな自家消費米を頂いたことがありますが、確かに別格に美味しかった覚えがあります。

4.焙煎
焙煎の魅力は経験すれば分かります。
焙煎度合い、焙煎の仕方で、同じ生豆から無限の味が作り出せる喜びに気付くと、大半の人はその楽しさに嵌ることでしょう。

ただし、焙煎環境が確保できるかどうか、という問題が付きまといます。例えばキッチンのコンロで、500g級の手廻し焙煎器などを使うと、後半の物凄い煙のために、ほとんどのケースでご家族からクレームがくることでしょう。 その点、「煎り上手」程度なら、換気扇で普通に対応出来ます。

5.焙煎豆のエージング
珈琲豆は腐りません。焙煎後どんなに時間が経っていたとしても、そのコーヒーでお腹を壊すことはまずありません。

そのような理由で、市販の珈琲豆は賞味期限が半年~1年くらいのものが多いようです。
しかし! 問題は味、フレーバーです。これは時間経過とともに歴然と劣化していきます。

一方、ちゃんと焙煎された珈琲豆は焙煎直後から美味しいです。
そして豆のまま密閉容器に入れておけば、常温で1~2か月は美味しいです。
自分で焙煎すれば、2週間後くらいに香りがピークに達するものが多いことにも気づきます。
しかし半年とか1年も経っては、元がどんなに素晴らしい珈琲豆でもスカのような味になります。
特に粉に挽いたものはたとえ密閉容器に入れていても1週間も置いたら飲む価値なし、のスカです。

1000円/Kg 程度の生豆でも、焙煎後の鮮度が良ければ、時間が経った高級豆よりずっと美味しいことにも気付くことでしょう。

6.抽出、その他

自分で焙煎するようになると、必然的に同じ珈琲豆を何回も飲むことになります。
すると同じ豆に対して色んな抽出を試す機会も増えて、どんなに同じように抽出したとしても
毎回味わいが異なることにも気づくことでしょう。これは勉強になります。

道具やペーパーの種類を揃えても、粉の挽き目(微粉の量)、お湯の温度、お湯との接触時間やお湯の経路(注ぎ方)などは安定させることが困難で、最終的な味わいに違いを与えます。

しかし! ちゃんと焙煎された珈琲を鮮度が良いうちに使っている限り、どんな淹れ方をしても結局、美味しさのスィートスポットの範囲に入ってくれるのです。

ということで、長々書きましたが、もし焙煎未経験であれば一度経験してみることを強くお勧めします。もしお近くであれば、KAZUHICOFFEEでも様々な焙煎体験やっています。

ログハウス2

お薦めとして、具体的に最初に何を揃えたらよいかについては、また次の機会にでも。
もちろん直接コメントを頂ければ、直ぐにお伝え致します。

Identical Roast の実践

コーヒー豆を焦げ茶色になるまで適当に焙煎するだけなら、それこそ百均で売っているような身近なものでも工夫次第でいくらでも出来てしまうし、まぐれで案外、美味しく焙煎出来てしまうこともあるかもしれない。しかしそういった簡易的なものでは絶対にできないこととして、うまくいった焙煎の再現という課題がある。これを、取り合えず Identical Roastと呼ぶことにする。

Papua400g_Batch1&2

例えば、上記の例は昨日、僕が Cormorant CR600焙煎機を用いて、横浜のKOPE花伝カフェさんの豆を2回に分けて焼いたときのプロファイルである。バッチ量、投入温度を揃えて、さらにリファレンスとなる焙煎プロファイルをバックに表示させて、そのラインを辿るように火加減や風量を調節していく。そして、豆温度がターゲット温度になったら素早く排出して迅速に冷ます、ということをやっているが、重ねてみると、中点温度こそ少しずれているが、ほぼ同じラインに乗っていることが分かる。
Papua400g_焙煎度再現

この2例ではAUCは1回目が243、2回目が241である。これは実は狙って同じ数字に揃えてみた。

この例のように、AUCの値まで一致すると、さすがに重量減でも18.5%と完全に一致、香りにも何も違いが感じられない、完璧な Identical Roastが完成する。
PapuaIdentical焙煎

なかなかここまで一致させるのは大変で、通常は0.1-0.5%程度の誤差は出るが、まぁ、飲んでわかるほどの差ではない。そしてArtisanを使えばこの程度の追い込みは、ほぼ成功する。

Identical Roastの実践で重要なポイントは、豆温度の測定開始点とも言える中点温度を揃えることである。中点に至るまでの下がり続ける温度は仮想のものであり、何の温度でもない。
そして中点温度を揃えるためには、投入時の生豆の温度まで考慮することが必要になる。

冬のログハウスは夜間には零度前後になることもあり、ログハウス内に置いてあった生豆は冷え切っており、朝一番にそのまま焙煎しようとするとなかなか思い通りにいかない。そこで最近は、前日から焙煎予定の生豆を暖かい室内に取り込んでおくようにし始めた。

ログハウスに暖房を入れておいて午後から焙煎するような場合は問題ない。例えば焙煎機に火を入れる前に生豆を投入して回してみたところ、ログハウスの室温とほぼ一致していることが確認できた。15.1℃と15.3℃である。
室内温度と焙煎機ET,BT


さて、この概念を煎り上手にも応用して、中点温度を狙いどおりにしていこう、というのが次の目的で、取り合えず、煎り上手の中に生豆を少し多めに放り込んで生豆の温度を計ってみたところ、やはり室温とほぼ一致している。まぁ、当たり前なのだが、実際にこうして温度計で比べると、やはり納得してしまう。
煎り上手と室内温度

さて次は、煎り上手の予熱温度と生豆の温度の差が中点温度にどう影響するかを調べていきたい。

前提として投入する生豆の量は毎回ピッタリ70gとする。当然ながら生豆が冷え切っていると、焙煎器を同じ温度に予熱しても、中点温度は低くなるはずである。 豆の熱容量 vs 焙煎器の熱容量 である。ただし、そもそも熱容量の小さい煎り上手の場合、予熱しても、生豆を投入するために火から離すと直ぐに温度が下がり始めるため、素早く投入しなければ誤差が大きくなる、という問題がある。

煎り上手と生豆の温度
室温よりも冷たい生豆を入れて、しばらく放置すると温度が下がっていく様子が測定できる。

粗悪な生豆を深煎りでどこまでリカバリできるか

ちょっと余興で、普通に焙煎したら、枯れ臭やかび臭さ、生っぽさなど不味さ全開で、全く飲めない生豆を、深煎りすることでどこまで飲めるようにできるかやってみた。どれくらい酷い状態の生豆かは下の写真で想像して頂きたい。これはエチオピア・レケンプティであるが、元々欠点豆オンパレードの酷い状態であったが、ジップロックで空気を遮断していたにも関わらず、半年ほどでさらに酷い見た目になっている。なんだか湿っぽい感じもするので、水分含水量がかなり高くなっていそうである。
粗悪な生豆

これを煎り上手を使って、ダブル焙煎の深煎りにしてみた。
なお、欠点豆は敢えて取り除かずにそのままの焙煎である。

レケンプティ深煎り


どうであろう? 見た目は少なくとも悪くは見えないね。
匂いはまぁ、安い深煎り豆に有りがちな焦げ臭い感じのもの。

さてこれをなるべくあっさりと短時間で濃いめにペーパードリップして、お湯で適度に薄めたコーヒーを作って飲んでみた。熱いときは意外と飲める。喫茶店でこれが出てきても普通に納得するかな、というレベル。 しかし冷めてくると流石に不味さが浮き出してきて、結局、半分ほど飲んでギブアップ。後味が悪~い! 

ということで、同じエチオピアでも、イリガチェフェ・チェルベサ・ウォッシュトの深煎り豆で淹れ直して、思わず口直ししてしまった。こちらは飲んだ後がいつまでも口の中が甘い。

これだな、品質の違いは!
エチオピア口直し

1ハゼは起こす豆と起こさない豆があるという説について

3粒の珈琲豆

これは約223℃まで焙煎を進めたグアテマラの豆である。
前からやってみたいと思っていた実験に、珈琲豆を2,3粒ずつ何度も焙煎しては、1ハゼが起きる豆と起きない豆に分けてその比率を調べたい、というものがあった。

今日はいつものように、使い勝手のテストも兼ねて、煎り上手+Artisanを使って、海の向こうコーヒーさんから取り寄せたサンプル豆(インドネシア・ワハナ農園ナチュラルとミャンマーのマイクロロット・レッドハニー)などを焙煎した。その後、ちょっと思いつきで、中途半端に残っていた先日の丸紅さんのグアテマラ豆を、3粒だけまだ熱い煎り上手に放り込んでみた。

そして普通に加熱していくと、3粒だから早くハゼが来るかと思ったが、そんなことはなく、全く正確に200℃まで加熱したとき、パチ、パチ、パチとはっきり連続音が3回聞こえた。どうやら、3粒とも1ハゼを起こしたようである。もちろん、これを持って、全てのコーヒー豆は1ハゼを起こすとは言わないが、少なくともハゼを起こす豆の方が、起こさない豆よりもずっと多いのかな、と思った次第。

ちなみにそのまま2ハゼまで起こそうと加熱し続けたら、220℃に到達する前に、なんだか1ハゼっぽいようなハゼ音が断続的に10回以上聞こえた。そして、2ハゼ温度になっても、ピチピチ音は生じず、そのまま静かに炭化してしまった。うーむ、どういうことかな。

今度は7粒くらいで実験してみようと思う。

焙煎プロファイルの再現

パプア・天空の森

これは昨晩焼いたパプアニューギニア・天空の森・修道院のコーヒーである。
生豆で1KG分は、僕の焙煎機の場合、2回に分けて焙煎する必要がある。写真は2回分の焙煎豆を混ぜてしまった後であるが、写真からも均一な色合いは見て取れるだろうか。

1ハゼのタイミングと温度、排出温度、投入カロリーなど焙煎プロファイルはほとんど一致、当然ながら焙煎指数は完全一致といってよいレベルである。

<1回目の焙煎プロファイル>
プロファイル1(天空の森)

<2回目の焙煎プロファイル>
プロファイル2(天空の森)

<1回目、2回目を重ね合わせたもの>
プロファイルの再現(天空の森)
注) 濃い線が2回目のグラフ、後ろに薄い線で示されているのが1回目のグラフ

焙煎ロガーの威力は如何なものであろうか。高価な本格的な焙煎機では当たり前のことも、小さな焙煎機、焙煎道具では容易ではない。しかし焙煎は思いどおりにコントロール出来て、同じプロファイルが再現できなければプロとは言えない。

そして、たとえ「おうち焙煎」であっても、思い通りにコントロール出来るならば、焙煎を毎日やったとしてもマンネリ化せず、成長感もあってずっと楽しく続けられると思う次第である。この楽しさを広く皆に伝えていきたいと切に願う今日この頃である。

プレミックス焙煎

僕は通常、プレミックス焙煎はやらないが、今日は元旦、ちょっとご近所にお年賀でもしようかと思い、4種類の生豆をプレミックス焙煎してみた。内容はエチオピア・ゲイシャ・ナチュラル145g、ブラジル・カショエイラ200g、パプアニューギニア・タイガッドSP 200g、マンデリン・アチェ・ディープグリーン50gの4つで、フルーティな酸味と苦み・コクを組み合わせて、中庸のブラジル豆をサンドイッチした形で、ダイナミックレンジの広い味わいを目指してハイローストに仕上げてみた。それぞれの豆を単独で焼くと焙煎プロファイルやハゼのタイミングは結構異なるが、プレミックスすると不思議と足並みがそろう。一ハゼ開始以降の発熱反応にはいると豆同士が押しくらまんじゅうのように熱しあうことで、加熱が遅れていた豆も揃ってしまうからだろうか。

種類のプレミックス
写真では分かりづらいが、生豆の状態では色合いも大きさもバラつきが大きい。通常はエチオピア・ナチュラルが一番火が入りやすく、ブラジルが遅い。マンデリンも独特なプロファイルを示す。水洗式のパプアニューギニアはニュートラルな感じのプロファイルを描く。

プレミックス焙煎豆

これが焙煎した豆。まるで単一の豆のように色合いも豆面も揃っている。
明日の試飲が楽しみである。


ちなみにプロファイルはこんな感じ。

premix_roast

世界に一つしかない組み合わせ、味を追求して、プレミックスを極めるのも面白いかもしれない。

光る珈琲生豆

珈琲の生豆には多い・少ないの差はあれども、必ずある程度の欠点豆が含まれており、これを焙煎の前後でどこまで取り除けるかで、最終的な珈琲の味も変わるし、価値も変わることはご存じの方も多いと思う。しかしこの欠点豆のハンドピックというのは容易な仕事ではなく、分かりやすいものもあるが、見た目では非常に発見しにくいもの(特に発酵豆)も多い。
ハンドピック

そこで僕が最近知って導入しているのが、ブラックライトを使う方法である。通常のハンドピック後に、さらにブラックライトで紫外線照射することで光る生豆があるのである。これは下記の論文などを見ると、要するに生豆の処理で使う水が悪かったりその後の乾燥段階で問題があった場合にバクテリアが豆を劣化させたり酸化させたりする過程で、微量の発酵物質が生成される、ということらしい。

Shining a Light on Defect Detection: からの抜粋

Mottling is caused by the oxidation of polysaccharides, acids, and lipids found in the coffee seed, which creates a whitish glow under UV light. If the drying process has not been given the correct attention and time, it can negatively impact the lot’s longevity. 

まずは下記の写真を見て頂きたい。右側と左側は元は同じ袋に入っていたブラジル・クラシコ一番摘みという見た目は欠点豆がほとんど見られないブラジルでは珍しい水洗式の生豆である。

光る発酵豆(1)


これがブラックライトを照射するとこのようになる。これなら混ざっていても容易に発見できる。
光る発酵豆(2)

これらを取り除くことでどれくらい味が改選するのかは自分では実験できていないが、上記の論文を見ると6か月ほどかけて、同じ豆のカップスコアを比較しており非常に信ぴょう性がある。僕のように小さな規模で焙煎している者でなければなかなかここまでは出来ないと思うので、これからも続けて一つの差別化としたい。

堀口さんのTHE STUDY OF COFFEE

キンドルの検索で見つけたとき購入しようかなと思いながらついそのまま忘れていた堀口俊英さんの最新刊、THE STUDY OF COFFEEをついに購入した。実はフェースブックのコーヒーに関するグループにこの本のことが投稿されていたのを見て、「おっ、買わなきゃ」と思い、さらに念のためキンドルのお試し読みをして、「これはもう買うしかない」に変わって、即座にアマゾンで注文。2日ほど経って本日届いた次第。この本は12のレッスンで構成されており、「なぜ焙煎するのか、その意味を知る」「科学的データから品質を知る」などといったテーマで持論が展開されていて、とてもオリジナリティが感じられる。
堀口氏のSTUDYOFCOFFEE

昨今、巷に珈琲本は溢れていて、この数年は特に毎月毎月、新しい本や雑誌の珈琲特集が組まれたものが出版されるが、正直、中身は既存の本と重複しまくっていたり、ありきたりな器具紹介やアレンジ珈琲といった如何にも水増しコンテンツが目立つものが多く、これなら立ち読みで十分となって大抵は購入するには至らない。 でもこの本はちょっといい。何十冊も珈琲本を買い漁ってきた人でも欲しくなる内容である。 といって実はまだパラパラめくっただけであるが、レッスン7「私の抽出方法」を見て、久しぶりに目が覚める思いがした。 このところ、井崎英典氏の「世界一美味しいコーヒーの淹れ方」に影響されて、蒸らしは完璧に粉を濡らす、その後はドリッパーをグルグルやったり、お湯を落としきったり、などとしていた。しかし何かしっくり来ず、ときどき点滴抽出をしてみるとずっと自分好みの味が出せる。で、堀口氏の抽出方法と言えば、粉の中心にごく少量(10ml)のお湯を注いで最初の一滴 (First Drip)が落ちるまでの時間を20~40秒取る。そしてその後も基本は真ん中に少量ずつ注ぎ続ける、というもの。グルグルなんて絶対やらないで珈琲粉の厚い層を大事にキープする手法。これは半年くらい前まで僕が淹れていた方法であり、そうだ、やっぱりこれだよな、と思った次第。

ログハウスのための整地は果てしなく

カフェ&フードサービスの職業訓練も無事終わり、昨日から少し本腰を入れてログハウス作りに取り掛かっている。ただしまだ整地作業であり、正確にはその前の段階の土中の笹の根っこ除去作業を行っている。これがトンデモなく厄介で、土を20~30㎝掘り下げてもまだ根っこの先端に到達しないケースも多々あり、これを無理やり引っ張ると途中で切れる。果てしない作業に途方に暮れてしまう。ツルハシを振るう作業では土塗れになるので、昨日は近所のワークマンで税込み1980円のツナギと1680円の長靴を購入。これがなかなか具合がよく、さすが今を時めくワークマンという感じ。コスパ最高である。
あとセキチューで購入した黄色い一輪車は今どき仕様のアルミ製フレーム+樹脂製の荷台で、6000円近くと値は張ったが、お洒落だし軽くて扱いやすい。ログハウスの建つ場所の土を掘って土を取り除き、その下まで根を張っている笹を根絶させる作戦である。はぁ、気が遠くなる…(*_*)

笹の根除去

本日はお天気も良かったので、珈琲焙煎も3バッチばかり行った。職業訓練で使っていたキャラバン・コーヒーのブラジルがなんとシナモンローストなのを見て、僕にしては珍しくブラジルをライトローストに仕上げてみた。一ハゼ開始からきっちり60秒で煎り止めして、重量減が13.6%である。酸っぱいかな、と少し心配であったが、焙煎直後に飲んでみたらこれがなかなか美味しい。淹れた珈琲には微かなムスクの香りがあり、飲むとピーチや洋ナシのようなフレーバーとシロピーさを感じさせ、キツイ酸味などは皆無であった。さすがナチュラル精製のブラジル豆は火が通りやすい。
逆に、通常はシナモンローストに仕上げるMETAD社の超プレミアム豆、エチオピア Gotiti Sundryの豆は、ちょっと深煎りに仕上げてみた。1ハゼから弱火で約8分(2ハゼに入って4分近く)煎り上げてフルシティ程度までローストしたが、飲んでみるとモカらしいコクが素晴らしく、やはり美味しい。何といってもこの豆は甘みが凄い。「いい生豆は、どんな焙煎器具を使っても、どの深さに焙煎しても美味しい」という僕の持論のとおりの豆である。3つめはKOPE花伝さん用のいつものハワイカウである。相変わらずここのティピカ種は大きい。今回のロットはなぜか欠点豆が以前とは比べ物にならないほど少なく、しかも皺の伸びも良い。なかなか良い感じである。
Gotiti深煎り、ブラジル浅煎り


ウガンダ・アフリカンムーン

FBの珈琲に関するグループで知り合ったYYさんから、この珈琲を飲んでみたい、と言われて知ったウガンダのアフリカンムーン。一般にはロブスタ種の輸出国として知られるウガンダは少量ながらアラビカ種も生産しており、しかも栽培品種はケニア珈琲で有名なSL28などらしい。ネットで検索したら電車で30分ほどの小田急線喜多見駅近くのBEANSという店に在庫があると分かり、早速買いに行ってきた。

【産地】ウガンダ 
【地区、農園】ウガンダ西部ルウェンゾリ山地国立公園の周辺 
【標高】1200mから1800m 
【品種】 SL14、SL28 【製法】天日干し(ナチュラル)  

250gで1100円。ちょっと単価が高いので購入したのは250gだけ。見た目は小粒で欠点豆もそこそこ含まれており、ケニアの豆よりは、むしろエチオピアのナチュラル豆に近い。取り合えず慎重に手焼きしてみるかな。さて、どんな味がするのだろう。
ウガンダ・アフリカンムーン

喜多見ビーンズ

コロナの影響で店での試飲が出来なかったので、ちょっと物足りず、そのまま10分強歩いて、堀口珈琲狛江店に立ち寄り、グアテマラ・サンタカタリーナ農園のシティローストを一杯所望。まずもって鼻を近づけると非常に香りが良い。そして飲んでみると抑えの利いた酸味と苦みのバランスがとてもよく、さすが! という感じ。ふむふむ、勉強になるな。
堀口珈琲グアテマラ
イタリアのイッタラ社のカップが大変オシャレだ。

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本日はマドゥーラ珈琲に注文しておいた7種類の珈琲豆も届いた。来週はいよいよ僕の大好きなエチオピア Gotitiの新豆も10kg送られてくる予定である。それぞれ個性的な豆ばかりで、さてさてこれから焙煎していくのが実に楽しみではある。
マドゥーラ珈琲7種生豆

マドゥーラ珈琲7種リスト

折り畳み式風除け

先週の土曜日、天気は良いけど強い風が吹いていてかなり焙煎し辛かったため、対策として早速折り畳み式の木製風除けを作ってみた。今日使ってみたら、温度計の像の置物を置くための木製台を挟んで、なかなか良い感じにコンロの周りを囲っている。これなら少々風が吹いても大丈夫かな。

風除け正面から

上から見るとこんな感じ。

風除け上から

薄い板を使ったので、蝶番のネジが突き抜けてしまわないように当て木を添えて解決。
焙煎小屋が出来上がるまでは、あまりお金もかけたくないし、まぁこんなもので凌ごうかなっと。

最近の僕の焙煎環境

今年の冬は穏やかな晴天続きで外で焙煎するのに都合が良い日が多い。職業訓練も年内の授業は昨日が最後で、今日から1月3日まで一週間強の休みとなるが、やりたいこと、やらなければならないことが目白押しで、相変わらず慌ただしい日々である。

さて今回は僕の最近の焙煎環境をちょっと紹介したい。
現在入荷待ちのCormorant社の焙煎機は結局まだ届いておらずメイン機はUNIONの手廻しロースターのままである。ただ以前はキッチンで焙煎していたものが、今は庭先のテラスでプロパンガス+タチバナのコンロTS-501を使って焙煎している。
最近の焙煎環境


このコンロはUNIONのロースターとピッタリ径が合うが、ちょっとカロリー不足なので焙煎には予熱をしっかりするなど多少のコツが要る。上位機種のTS-502はカロリー的には十分だがコンロの直径が大きく、何か細工をしなければロースターの台座と噛み合ってくれない。実は勢いでTS-502も購入してしまったので今後これは何とかしたいと考えている。LPGのボンベは、ガス切れで焙煎出来ない期間が発生しないように5Kgのものを2つ購入してある。

我が家の庭は南を向いているため、冬場でも4時くらいまでは陽があたってとても快適に焙煎出来る。今後はさらにウッドデッキ+風除けを追加してより快適な環境を作り、その後は庭先に焙煎小屋を建てる計画である。ここまで行ったら、いよいよ珈琲の仕事を開始したいと思う。やることは満載であるが好きなことなので大変さも大きな楽しみである。


UNIONロースターの暫定セットアップ

昨日、やっとプロパンボンベとコンロを接続し、UNIONロースターでテスト焙煎してみた。タンザニア・ションゴという豆を400g、2ハゼの始めまで焙いてみたが、このコンロ、期待していたほどカロリーは高くないようで、1ハゼ開始までに15分ほど、シティローストに仕上げるのに合計20分ほどかかった。予熱を100度ちょっとで開始してしまったのがよくなかったようであるが、バッチサイズも350gくらいに抑えた方がコントロースしやすいかもしれない。あとこのコンロは小さな火を作るのが結構難しい。でも兎にも角にも外で焙煎出来るようになったことが嬉しい。でも外でやる真冬の焙煎はやっぱり寒すぎるかなぁ。
Union+PropaneGas
タンザニア・ションゴ

上から見るとこんな感じです。
温度計を抜けばちゃんと確認用のスプーンは差し込めます。
確認スプーン

プロパンガスコンロとサンプルロースター

新しい家に引っ越しして、タカラさんの高級システムキッチンを導入したら、キッチンでの焙煎はカミさんから禁止されてしまい、これからは庭先で焙煎するためプロパンガスのコンロを導入した。本日やっとガスボンベにガスを充填し終わって先ほど試運転してみた。コンロはUNIONサンプルロースターにベストマッチするというタチバナ製作所のTS-501、ロースター付属の五徳を載せると流石にぴったりくる。火をつけてみると青白い火がとても美しい。

あとは如何に焙煎機・コンロに風が当たらないように工夫するか、である。近いうちにウッドデッキを作って周りに風防を立てて、その中でノンビリと焙煎したい所存である。
プロパンガスボンベ
ガスコンロ試運転
TS-501
サンプルロースター+プロパンコンロ

注)この時は気が付かなかったが、写真では内側のガス穴に火が付いていないが、実際には内側にあと6か所の穴がありここにも火が付く。ただパイロットバーナーだけではなかなか全部に火が点いてくれないのはなぜだろう。

香りの強い珈琲豆とダブル焙煎

グアテマラの産地の一つ、ニューオリエンテ地方産にはグアテマラでは珍しいナチュラル精製の珈琲豆があるが、これがもう生豆の時から強烈に甘い香りを放っており、普通に焙煎するとちょっとくどいくらいに発酵系の甘いフレーバーのするコーヒーが出来上がる。最初の数杯は美味しいと感じるが、すぐに飽きてきて沢山焼くと後半は持て余してしまう。 そこでふと思いついて、これをダブル焙煎に仕上げてみたところ、予想どおりいい感じでフレーバーが心地よい範囲に収まって、しかもとても甘い珈琲に仕上がった。

引っ越しして以来、まだ僕のメイン焙煎機のUNION手廻しロースターはプロパンボンベが用意できていないため使用できず、このところは専らGeneCafeで焙煎しているが、この場合のダブル焙煎のプロファイルは以下のとおりである。

焙煎量: 250g  (生豆はしっかりハンドピック。特に過発酵の豆に気を付ける)

<1回目焙煎 >
予熱 200度で4分30秒
本焙煎は210度で8分  (当然、1ハゼはまだ来ない)
※完全に冷まして、1時間ほど置く。

<2回目焙煎>
予熱 200度で4分30秒
本焙煎は最初から240度で開始して11分くらいで1ハゼが来るので、そこから1分で煎り止め。
直ぐに良く冷やす。

仕上がりはこんな感じ。色合いで見るとミディアム・ローストというところだが、酸味は全く感じられず、ひたすら甘くマウスフィールがトロっとした珈琲が出来上がる。余韻もとても甘く、それがいつまでも持続する。まるでデザート珈琲だ。旨い!
グアテマラニューオリエンテ・ダブル焙煎


小野善造式完全焙煎

今度の家から町田駅まで自転車で向かう途中に、Hill's Caboという珈琲豆屋さんがある。実は車では店の前を数十回は通っており気になっていたが、駐車場がないので入れずにいたが、先日タイヤ交換した店がHill's Caboの斜め前であったため初めて入ってみた。店主と話しているうちに、店主が修行したという北軽井沢の小野善造さんの話になり、結局その小野善造さんの「珈琲焙煎の書」という極意本を購入して帰った。早速読んでみてその中に出てくる様々な用語や造語に感心し、著者が主張する完全熱風焙煎機による完全焙煎なるものが気になって、本日またHill’s Caboを通りかかった際に焙煎豆を購入してみた。完全焙煎(水抜きに時間をかける長時間焙煎)されたものは劣化が穏やかで長く楽しめる、と説明されている。

小野善三式焙煎

Hill's Caboさんの焙煎豆は陳列されていたものを見ると大半がフルシティ~フレンチの深い焙煎であったが、取り合えず、より豆の個性が残っていると思われるシティローストのグアテマラを購入したら、なかなか凝った袋に入れてくれた。クリップにも拘りが見える。
HillsCaboパッケージ


開封すると珈琲豆はこんな感じ。香りはそれほど強くはないが、美味しそうに膨らんでいる。
明日の朝、試飲するのが楽しみである。
HillsCaboグアテマラ


高品質で焼きやすい珈琲生豆

先日のコーヒーインストラクター3級セミナーの後に参加したMETAD社のエチオピア豆紹介で
一番美味しいと感じた Gotiti Naturalの生豆をマドゥーラ珈琲から1Kgだけ入手したので、早速焙煎してみた。今回は一ハゼ開始後75秒で止めて、ライト~ミディアムローストに仕上げてみた。重量減は86%と自分としては一番浅煎りの部類であるが、焙煎2,3時間後に珈琲液にしてみたら、非常に心地よく複雑な酸味が感じられ、フルーツ・ボムと呼ぶのが相応しい果実感は確かに美味しい。この珈琲を飲んで「美味しい」唸らない人はほとんといないと思われるレベルである。

Gotiti生豆
EthiopiaGotitiミディアムロースト

実は前から抱えている僕の中の大事なテーマが、高品質で焼きやすい生豆さえ用意できれば、少しの手ほどきを受けた初心者が原始的な焙煎機で焼いても、ローストチャンプ級が新進気鋭の焙煎機で焼いても、最終的な味にさほど大きな差はなく、少なくとも一般人にはどちらも甲乙つけ難い美味しさが味わえるのでは、ということである。

僕自身、珈琲に関してはそれなりにお金をかけて研鑽してきて、直近の2,3年は基本的に自分の焼いた珈琲以外、勉強のためのスペシャルティコーヒー以外飲まないようにしているが、自分の焼いた豆で十分に美味しいと思うことが多い。というか、買ってきた焙煎豆でこれは凄い、ちょっと自分にはまだ真似できないな、と思うことはむしろ少ない。

本日はスマトラ・クリンチマウンテンも焼いたが、これもその類である。豆自体が大変なプレミアム級で、自分で焼いたこのマンデリンより、美味しいマンデリンは早々お目にかかれない。もちろんどんなに良い生豆でも焙煎で台無しにすることは簡単であるが、良い豆のポテンシャルを80%程度引き出す程度の焙煎技術なら、意外と簡単に到達できると考える次第である。まぁ味の安定性を確保するのはそう簡単ではないが。

クリンチマウンテン生豆
クリンチマウンテン・シティロースト

最近手に入れた中ではこの豆もそうである。エチオピア・ゲイシャビレッジのウォッシュト豆。
かなりのプレミアム品で、まだ焼いていないが、自分の中ではもう確実な美味しさが想像できているのである。
エチオピア・ゲイシャ・ウォッシュト

ちなみにこの豆でも1㎏で2000円ほどであり、一杯の珈琲に換算すると豆代はせいぜい30円程度にしかならない。僕がこれから広く家庭焙煎を勧めることを仕事にしたい所以である。

DR.MAHN ハンディーロースター

会員である僕のところには毎月、珈琲問屋から今月のセールのハガキが届く。僕の3号機であるGeneCafeロースターを珈琲問屋の年始セールで(かなりお買い得に)買ったのは以前のブログに書いたが、この店はセールとなると、特に器具に対しては、なかなか思い切った値段を付けてくる。今月はDr.Mahnのハンディロースターである。生豆300gのおまけ付きで税込み3980円はかなり安い。例えばアマゾンで検索すると6600円であった。¥6,689 + ¥800 配送料 などとなっているサイトもある。ということで送料がもったいないし、本日、横浜店まで買いに走った。

この手焼き焙煎器は大胆にも上面が全面的に開口しており、一見、激しく振ったら豆が飛び出しそうだが、ネット動画で焙煎の様子を見る限りちゃんと縁でガードされていて大丈夫そうである。パンチング・ホールが全面に開いているので、文字通り直火焙煎である。伝導熱メインで焼くと珈琲豆は美味しくなるのか、そうでもないのか。早速実験してみたいところだが、ユーチューブで検索した動画を見ると、チャフの散らかり方が半端なく、間違ってもキッチンのコンロは使うべきではなさそうである。取り合えず風の無い日に庭先に出てカセットコンロで実行しようと思う。

MAHNロースター

結構でかい。直系22㎝、全長40.5cm である。持った感触は天然木の手触りが気持ちよく悪くない。
大きさからみて一度に100g程度は煎れそうである。

スマトラ・クリンチマウンテン

先日参加したセラード珈琲のコーヒーインストラクターのセミナーで供された珈琲、マンデリン・クリンチマウンテンがとても美味しかったので生豆を入手したかったのだがセラードさんでは完売。うむ、来年は手に入れたいぞ、と思っていたら、ワイルド珈琲にはまだ残っていたので早速購入してみた。

クリンチマウンテン完売(セラード)


実は僕はマンデリンの土臭さが好きになれず、リントンなどの比較的高級なマンデリンでも、時々飲んでみては、「やっぱり違うな」とどちらかというと避けてきた。しかしこの豆はちょっと違う。同じスマトラ式精製でもクリンチ山(3805m)という富士山並みの高さの山の麓で作られたからなのか。売り文句は「神々の住む山」である。いつか登ってみたいな。

クリンチマウンテン商品説明
https://www.cerrad.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/5b7b42f15043b211eaf3ebecd234d8f5.pdf

さて、この豆を早速、Union手回しロースターでセラードさんのときと同様なフルシティ程度に煎ってみた。一粒噛んでみると上品な苦みはあっても土臭さは感じられず、なかなか良い感じである。

インドネシア・クリンチマウンテン

クリンチマウンテン抽出

ペーパードリップしてみた。旨い! やっぱり旨い! 

高貴な酸味と抑えの利いた苦みとのバランス、マンデリンの良い特徴だけを取り出したような深い香り、フレーバー。これはいい。来年また新豆が入荷したら10-20㎏くらい入手したいと思う。

ニカラグアのコーヒー

現在僕は阪東橋のKope花伝カフェの珈琲の一部について焙煎を担当をさせて頂いているが、今まで取り扱っていたコスタリカ・エルバス・レッドハニーの代わりの豆を何にしようかと相談されて、同じ中米産で綺麗な酸味が出せそうなニカラグア・ウォッシュトを選んでみた。実は少し前に1Kgだけ買ったニカラグア・ジャバニカ・ナチュラルが欠点豆がほぼゼロの綺麗な豆であるだけでなく予想以上に美味しかったこと、それに先日バックルコーヒーで飲んだニカラグアも大層美味しかったこと、その他にもこのところサードウェーブ系の店でもニカラグアのコーヒーをチラホラ目にするなぁ、といったところが選択した理由である。

仕入れはワイルド珈琲で、産地は先回と同じヌエバ・セゴビア地区である。栽培種はジャバとなっている。ジャバはエチオピア原種(アラビカ種-Ethiopean Heirloom)がインドネシア・ジャワ島に持ち込まれて品種改良されたものがさらにニカラグアに伝わったもので、見た目はガテマラなどの生豆と似ているが若干細長い豆が多いような気がする。
ニカラグア・ジャバボスカ生豆

さて、本日は天気も良かったので庭にGene Cafeを持ち出してこのニカラグアを浅めに焙煎してみた。焙煎直後の豆で珈琲を抽出してみると、なるほど良い香りがある。酸味も綺麗で、これは2,3日置けばもっと美味しくなるぞ、という手ごたえを感じた。

ニカラグア・ウォッシュト焙煎byGeneCafe
これが例の新兵器、キッチンペーパーの筒である。チャフ受けの排気口に載せて反対側を耳につけるとハゼ音がはっきり聞こえる。ただ,筒をあまり立てると熱風が耳を直撃するので要注意!

ニカラグア・ボスカ農園(85.6%)

高根珈琲 焙煎コーヒー直売

淵野辺には高根珈琲というちょっと風変わりな店舗の珈琲豆店がある。4年前に開いたとのことで、経堂にもう一店あるらしい。この店は見るからにコンビニの居抜きの体をなしている。広々とした店内は珈琲器具が8~9割を占めており、焙煎豆の種類はストレートが10種類ほど、ブレンドが3,4種類とむしろ少ない。店内奥にある生豆置場と焙煎場所はガラス張りで、フジローヤルの焙煎機が3台ほどある。こまめにどんどん焙煎して薄利多売するビジネスだと思われる。
コロナ禍前に来たときは数種類の珈琲が試飲が出来たが、今日行ったら残念ながら試飲はなし。そこで冒険はできないので、前回買ってコスパの高さに感心した中煎りのエチオピア・イルガチェフェを250g、それに珈琲好きなら名前を呟くだけでウットリしてしまう深めの煎りのモカ・マタリを100g購入。しかしなんだか前回も同じ組み合わせで買ったような気がするなぁ。(^^;

高根珈琲イルガチェフェ・マタリ
珈琲の袋に焙煎日も賞味期限も印刷されていないのは、ちょっと頂けない。
まぁ全部新しいよ、ということかな。思わずいつもの癖で、一番手前ではなく、一つ奥の袋を手に取ったら、店主にしっかり見られていたようで、ちょっと恥ずかしかった。(^.^)

家に帰って早速、マタリをネルドリップで少し濃いめに淹れてみたら、モカモカした強い主張はないがバランスが取れたなかなか美味しい味、飲みやすい味であった。

イルガチェフェの方は、55g/800ccで水出し珈琲にセット。明日、一部を使って珈琲ゼリーにしてみようと思う。それにしても、250gで900円、500gなら1800円という価格付けはイルガチェフェとしてはかなり安い。一方、マタリは100gで700円。こちらはスズシンさんの1300円に比べると安いが、まぁこんなものか。 あと他に、自分でも焙煎したことがあるブラジル・ハンショグランジ農園 フルーツバスケットが600円/100gで売っていたが、こちらは生豆なら松屋珈琲で6642円/5kgなので、100gなら132円。豆のピックと焙煎で2割減るとして、焙煎豆なら100gで165円である。これだけ見ると薄利多売とは言えないかな。

BUCKLE COFFEEのコーヒー実験

本日は珈琲友達のK氏との久し振りの飲み歩きに行こうということになり、どこにしようか数秒迷ってすぐに雑色のバックルコーヒーに行こうと結論。やはりたまには味覚のキャリブレーションの意味も込めて、開業されているプロの入魂の一杯を飲みたいわけだが、その点、バックルさんの珈琲のセレクションは素晴らしいし、特にアイスコーヒーの淹れ方は別格だ。ついでにディスカバリー焙煎機での焙煎を拝めたらいいな、というモチベーションであった。

雑色駅で降りて記憶していた場所にまっすぐ向かうと、あらら完全にしまっている。あら~、ここにもコロナの影響が、、と落胆しかけたが、実はカフェ開業のための一時移転と判明。15分ばかり歩いて移転中のバックルコーヒーを無事発見。K氏を誘った手前、開いてて良かった~ (^^;

蒸し暑い日だったのでまずは一杯目、試飲コーヒー(ボリビア)が美味しかったボリビアのアイスコーヒーを注文。机上には消毒用のアルコールなども置いてあり、以前にも増してまるで化学実験のような風情の中、K氏の頼んだメキシコと私のボリビアの2杯分を作って頂いた。Buckleコーヒー実験風景

この日は都知事選の人出の影響で次々とお客が来店して、一度に一組だけ入店可能な店の前には常に2,3組が待っている状態だったので、完成したアイスコーヒーを持って外に出てからちょいと撮影。
Buckleアイス・ボリビア

相変わらず絵になるなぁ。そして飲み干した後にはお馴染み四角柱の氷が数本。ボリボリかじるのにちょうどよい太さ。素晴らしい!
Buckle角柱氷


自分で焙煎した中で最近のヒット豆がニカラグアのジャバニカ種・ナチュラルだったこともあり、二杯目はホットでニカラグア・カサブランカ農園(ナチュラル)を注文。こちらは栽培種がカトゥーラとなっており、ジャバニカではないが飲んでみると非常に似通ったフレーバーでちょっと驚き。これがニカラグアのナチュラル精製の特徴なのか、と思って帰ってから調べてみたら、両方ともニカラグアの中でもヌエバ・セゴビア地区の豆であることが分かり、なんとなく納得。フムフム、そういうものか。

結局、来客が多過ぎてディスカバリーを動かしてもらうことは叶わなかったけれども、親切な店主、佐藤さんのご好意でバックル方式の焙煎プロファイルを頂いてしまった。是非次回K氏宅にて試してみたい! 

ついでに富士珈機の焙煎機、サンプル用と商品生産用の2台使い分けているバックルコーヒーの焙煎に対する拘りも見せて頂いた。勉強になるなぁ。Buckleの拘り





GeneCafeの使いこなし

実はこのところGeneCafeを使う意欲が失せていたのだが、理由はこの焙煎機では1ハゼが起こせないことと、豆が乾燥してスカスカしやすいことであった。しかし、最近FBのグループにGene Cafe Coffee Roaster Group というのを見つけて参加してみたら、あっさりと解決してしまった。このグループは現在の参加者が668名で恐らく日本人の参加者はほとんどいないと思われ、投稿はすべて英語で行われている。Aillio Bullet Roaster V1 のFBグループの活発さに比べるとずっと大人しいが、それでも有用な情報がやり取りされており大変役に立つ。

Gene Cafe Coffee Roaster Group
https://www.facebook.com/groups/2791232117563897
A group for Gene Cafe Roaster owners to share their experiences to improve the quality of roasting

https://roastrebels.com/en/roasting-knowledge/coffee-roasting/gene-cafe

一方、GeneCafe付属の説明書をみても、日本語検索でかかるGeneCafeの使い方、みたいなものも出鱈目ばかりでちっとも役に立たなかった。そして皆が共通して訴えているのは、「一ハゼが起こせない」であったが、なんのことはない、予熱をすればちゃんと一ハゼを起こせることが確認できた。

ブラジル、ルワンダ、コスタリカ、ガテマラなどで試したがいずれも1ハゼの音が聞き取れた。例えば、GeneCafeで冷えた状態からいきなり生豆を投入するとスカスカの焙煎になってしまっていたブラジル・イルマスペレイラのパースト・クロップでもちゃんと艶やかに焙煎出来た。ポイントは豆投入前に容器が空の状態で200度設定で5分ほど予熱することで、その後は少し高めの240度程度で一気に焙煎すると、耳をすませばちゃんと9~10分ほどで1ハゼの音が聞こえてくる。よって一ハゼから煎り止めまでの時間を計測することも可能となる。これは画期的な改善だ!

この焙煎機、説明書にも本体にも「連続焙煎禁止」と書かれており、なんとなく予熱はダメかと思い込んでいたが、海外ユーザは当たり前のように予熱していることが分かったのは収穫であった。

ブラジル・ブルボンを200gほど以前焙いたときと今回のやり方で焼いたときの様子をグラフにするとこんな感じである。実は少し前に、熱をもっと一気に入れた方がいいかと思い、豆量を150gに減らして焙煎してみたところ逆に酷い焼きムラになってしまい少し凹んでしまったのだ。ある日本のサイトでは最大容量の250gを超える300gで焙煎したら1ハゼを飛ばして2ハゼが起こせた、と晴れがましく書かれていたがこれは完全に邪道だと思う。恐らく焙煎機が短期間で故障してしまうだろう。

GeneCafe予熱有無


ちなみにGeneCafeの販売価格は非常に怪しげなことになっている。新品の価格も大きな開きるが、中古の方が高いとはこれ如何に⁈
GeneCafe価格


煎り上手に温度計

発明工房の「煎り上手」はとても優秀で、手網系の焙煎器としては画期的に均一な焙煎が出来るのだが、再現性に乏しいのが欠点であった。そこで前々からやってみたかった温度計の取り付けに挑戦してみた。
煎り上手-温度計付

実際に焼いてみると、温度はちゃんと上昇していくが、さすがに豆温度とは言えず、120度と表示されたところで一ハゼ開始。サンプルロースターなら210~215度なのでこれは全く低過ぎの温度。理由は明快で、温度計の差し込む深さが足りないからである。
煎り上手-温度計付0

取っ手にまっすぐ深い穴を空けるのは結構大変で、ロングドリルというドリル歯と座ぐり用ドリル歯を使ってこんな穴を空けてみた。ドリテックのこの温度計では直径4.2mmの穴がドンピシャで、一度差し込むとシッカリと固定される。
取っ手の穴

穴あけ道具

豆の位置まで届くような長い温度計があれば理想なんだが、、、
次は赤外線温度計を手に入れて取り付けてみようかなぁ。

煎り上手-温度計付2
只今、一ハゼ中… 豆はマラウィ・チンミスク。フルシティローストまで焙こうとしたが、なぜか1ハゼから5分経過しても2ハゼが来ず、結局5分半経過したところで煎り止め。直後に試飲してみたところ酸味・苦みのバランスがとても良好でまずまず満足のいく出来栄えであった。

エチオピア・ゲイシャ by 松屋

以前、K氏に少しお裾分けしてもらい美味しさは確認済で、首を長くして待っていた松屋コーヒーのエチオピア・ゲレナ農園・ゲイシャG3・ナチュラルの新豆、ついに入荷したとのことで早速5Kgばかり注文したものが本日届いた。生豆の時点でなんとも良い香り。G3でも十分綺麗で欠点豆はほとんど見当たらない。いつものように大きなビニール袋にバサッと入れられていたので、早速ミライシーズのブラジル豆の入っていたアルミパックに移し替えた。松屋コーヒーを疑っているわけではないが、一応計量してみたら5043gほどあり、ちょっと得した気分。(^^)

同じくK氏にお裾分けしてもらい、かつ青梅珈琲でも試飲したので間違いなく美味しいことを確信したうえでガテマラ・オリエンテ・ナチュラルも一緒に注文したが、こちらも計量したら5034g。やはり生豆状態で既にナチュラル精製特有の非常にいい香りが漂っている。

下記の写真は1Kgずつ分けて計量して、最後の1Kg相当をスケールに載せたところ。
松屋ゲイシャ・オリエンテ

松屋ゲイシャ・オリエンテ注文

松屋の特売品はちょっと外れが多いような気がしているが、新豆に関してはかなりお買い得かもしれない。なにしろゲイシャ種の珈琲がこの価格で買えるのは日本では恐らく松屋以外にないのではないかと思う次第。この豆は恐らく直ぐに売り切れてしまうので、一年に一度のお楽しみだ。仕事で使うようになったら60Kgくらい買い占めてもいいようなコストパフォーマンスだと思う。

ということで、先ほど早速「煎り上手」で60gだけサンプル焙煎してみた。
明日に試飲するのが楽しみだなぁ。

【後日談】
この豆は確かに美味しい。やっぱり美味しい! コスパ抜群だ!!
ただオイル分がよほど多いのか、サンプルロースターで300gほどをキッチンで焼くと、一ハゼ開始辺りから大量に煙が出て、リビングの方まで空気が真っ白になってしまうので焙煎にはちょっと覚悟がいるのであ~る。

RoR (Rate of Rise)という指標

最近Artisanという珈琲焙煎のモニターやログを取得するソフトに興味をもってマニュアルやネット情報を漁っているなかで、基本的なパラメータとしてRoR(1分間に焙煎豆の温度を何度上昇させるか?)というものに注目しだした。「コーヒーの科学」で有名な旦部幸博氏によると、どの温度帯をどれくらいの時間で通過するかで生じる化学物質に違いが出て、特に水抜き温度帯(Dry Endまで)の高温多湿の領域に長く留まると強い渋みのカフェー酸やシャープな酸味のキナ酸が増加するそうなので、ここを早く通り過ぎようと、ここのところ開始3-4分は弱火で途中から一気に強火にして、かつゆっくり回転させることで熱量を効率よく豆に伝えてなるべくRoRを大きく取っていた。RoRが大きいほど豆が大きく膨らむ、と説明している文献もあるので、「大きくな~れ」とばかりに。(^^);
以下がその例である。開始4分くらいから急上昇させており、最大で25度/分を超えている。

ROR比較(ハワイカウ・コスタリカ)

これでもそれなりにまとまった味は出せるのだが、もっと甘みが出したく、もしかしてRoRは小さい方がいいのかと、昨日は逆にRoRを10度くらいに抑える焙煎もしてみた。下のグラフのモカシダモの方である。比較のために並べたモカハラーと比べると、なだらかに直線的に温度上昇しているのが分かる。
ROR比較(モカハラー、モカシダモ)

ところがである。このやり方で焼いたモカシダモはいつもなら初日から強く出るモカフレーバーがほとんど出ておらず、どうやらこのやり方は間違っているらしい。もし3,4日経過しても香りが立ってこないようなら完全に失敗焙煎である。

ここでよく考えてみると、むしろ最初から強火で一気に150度くらいまで豆の温度を上げて、そこから中火に落として調整する方がよさそうな気がしてきた。明日はこのパターンで焼いてみようと思う。

ところで、焙煎再現性を安定させるための指標としてはRoRだけでは十分でなく、Artisanの説明によると他にDTR(Development Time Ratio) - 1ハゼからの経過時間を焙煎開始からの経過時間で割って100をかけたパーセンテージ、というものや、AUC(Area Under the Curve) などというものがあるらしい。AUCは1ハゼ開始温度やその先の一定温度を基準線として、その温度を超えてから経過時間による作られる面積(積分値)である。図で示すとこのようになる。実に科学的である。
AUC図

以下のページより引用
https://artisan-roasterscope.blogspot.com/2016/11/area-under-curve-auc.html

Cormorant CR600 Coffee Roaster

手廻しロースターでの焙煎は何回やっても飽きないし、いつもちょっとした緊張感をもちつつ楽しくやっているが、如何せん焙煎中は全く手が離せないので頑張っても一日に3,4バッチほどしかできない。ということでいずれはもう少し本格的な小型焙煎機が欲しいと思っていたが、先日ネット上で見つけて一目ぼれしたのがCormorant社のCR600という英国製のロースター。

ComorantCR600


日本国内ではほとんど使っている人がいないようだが、ウェブサイトにあるスペックや動画を見る限り自分の求める理想形、しかも見た目が無茶苦茶カッコいい。もうこれは購入するしかない、と思い、この会社にメールを出して見積もりを取って注文することに。

予想より安く、輸出保険を含めても1735ポンド(約23万円)、これに加えて輸送代がかかるが全部足しても30万円は切りそう。やった! でもバックオーダーがかなりあるのか、そもそも生産量が少ないのか納期が10月だとか。う~む。待ち遠しいなぁ。

実はもう一つ迷っていたのが、Bullet R2というモデル。こちらも元々は英国製らしいが今は台湾のAillioという会社が作っており、FacebookのUser Groupがあるというので参加してみたら、皆さん、超マニアックでレベルの高い会話がされておりちょっとビックリ。

Artisanというソフトで細かく制御できるらしいので、とりあえず Artisanのマニュアル(英語)をダウンロード。まず読んでみようっと。ちなみにこちらは電気式IH加熱で、CR600は伝統的なガス加熱方式。やっぱし個人的にはガス式が欲しいのでCR600で正解。でもいずれ Bulletも買ってしまいそう。。
Aillio(BULLET R1)

ついでに、こんなものも。
僕が「煎り上手」を愛用していることは以前書いたが、なんとそれにそっくりで、セラミック塗装と蓋をつけて、さらに持ち手に革を巻いたものが売っている。しかも値段は大差ない。う~む、これも欲しい! 「煎り上手」は既に2台購入しているが、確かに蓋付きは便利かも。

<NUVO CC ECOハンディロースター>
煎り上手もどき

<オリジナル、発明工房の煎り上手>
煎り上手

横に振るだけで珈琲豆がローリングする凸形状の底は共通だし、どうみても煎り上手を元に作っているように見えるが、あまり高くないのはなぜだろう。そもそも発明工房の藤村さんは許可しているのだろうか。謎だ~

巻きなおしマジック

少し値の張る生豆は特に素材の持ち味を十分に引き出したいので浅めに煎ることが多いが、時々行き過ぎてしまい、酸味が強過ぎたり、エグ味が出てしまい折角の高級豆が飲みにくい珈琲になってしまうときがある。昔なら、もったいないので我慢してそのまま飲んでいたが、近ごろは再焙煎することで修正するようにしている。僕はこれを勝手に「まき直し」と呼んでいるが、これが意外とうまくいく。

例えば先日焙煎したマラウィ・チンミスクは、豆の種類がSアガロ、ニカといったちょっと珍しいものであったこともあり、つい気合が入り過ぎて完全に浅過ぎだった。そのままでは口が曲がるほどに酸っぱい珈琲であったが、5分ほどまき直し焙煎をすると、あら不思議、ちゃんと美味しい珈琲に変身。リカバリー成功!

昨日は、200gだけ残っていたケニア・トップ・カルティという高級豆をGene Cafeで焙煎したところ、そもそも密度が高いこの豆と Gene Cafeのような電気式ロースターの相性が悪いのか、かなり酸っぱくてちょっと飲めない味になってしまったため、本日、手廻しロースターでまき直し焙煎に挑戦。ちゃんと温度を計って4分25秒で200度に達したので、とりあえずそこでストップ。見かけはずっと綺麗に膨らんでおり悪くなかったが、再度、試飲してみたら、やはり酸っぱい。うーむ。 

<まき直し一回目のケニア>
ケニアまき直し1回目

温度というよりは、時間が4分台ではまだカフェー酸が分解されないのかと考え、まき直し2回目は5分20秒、210度まで廻してから冷却。さらにいい感じの色になった。金属メッシュ・フィルタで小さく入れて飲んでみると、強過ぎた酸味の主張は完全に引っ込んで、甘さが全面に出てきていたので一安心。明日、じっくりペーパードリップで飲んでみようと思う。 恐らくリカバリー成功なはず。

<まき直し2回目>
ケニアまき直し2回目

<後日談>
巻きなおしは、やはり無理があるようで、何度も試飲して気付いたことには、確かに尖った酸味は消えるし、豆面もぐっと綺麗になるが、豆自体の特徴もほとんど消えて、どの豆も凡庸な味になってしまう、ということである。一ハゼを超えて豆の成分に大きな化学変化を起こしものが一度冷えると、再加熱しても同じ状態にはもっていけない、ということだと理解した。その点、ダブル焙煎は1ハゼより十分に手前で止めるため、含水量は減らしても化学変化はまだほとんど起きていないから成り立つのであろう。とはいえ、ダブル焙煎もまた豆の特徴をかなり減じてしまう手法である。

ワイルド珈琲セレクト豆6種のサンプル焙煎

じゃーん \(^^)/
ワイルド珈琲にて、ちょっと高級目&珍しめの栽培品種の珈琲を6種類、1Kgずつ注文してみたぞ。
色んな味の珈琲をお手ごろな価格で沢山試せるのは焙煎をやっている人の特権だ!
ワイルド珈琲注文6種

マラウィ/チシ・ミスク(生豆))         2,090円
ケニア/AAトップ・カシマ(生豆)         2,540円
エルサルバドル/SHGベジャビスタ農園 (生豆)      2,150円
ニカラグア/ジャバニカ・ナチュラル(生豆)       2,530円
ペルー /マイクロロット・フアン・マイチャイ・サントス(生豆)2,070円
エチオピア/モカハラー・ボールド・グレイン(生豆)     1,560円

で、最初にケニアを焙いてみたら期待通りで、上質なケニア特有のシトラス系爽やかフレーバーがとても美味しい。次にモカハラーを焙いてみたらこれも期待どおりの甘みがあって美味しい!
う~む、これは! と思い、夕食後に「煎り上手」を使って6種類全部を一気に連続焙煎してみた。
どの珈琲豆も欠点豆はほとんど見当たらず非常に綺麗で満足感が高い。ニカラグアはジャバニカ種という栽培種で、生豆のときから既に特徴的な香りが強く漂っており実に期待が高まる。

全て中浅煎りで仕上げたので珈琲豆の特徴が際立つはず。
明日の味覚テストだが楽しみだ!
マラウィ・チンミスク
モカハラー・ボールドグレイン
ケニアAAトップカシマ
ペルー・フアン・サントス
エルサルバドル・ベジャビスタ
ニカラグア・ジャバニカ


余談になるが、このエルサルバドルの豆はベジャビスタ農園となっているが、ベジャビスタ農園で検索すると、いろんな国のものがヒットするが、一体この農園は何者なんだろう。

例えば、ミカフェートさんのはコロンビアのベジャビスタ農園、Cafe03さんはボリビアのベジャビスタ、田代珈琲さんはコスタリカのベジャビスタ、そしてワイルド珈琲のがエルサルバドル
さて、共通点は?

ポジティブ・ピッキングの驚くべき効果

前から一度やってみようと思っていたポジティブ・ピッキングをやってみた。通常は全体から欠点豆を取り除くが、その逆、つまり焙煎した豆を一旦すべてBadとみなして、そこから姿かたちが綺麗なものだけを選別するという方法である。テストに使った豆はガテマラ・ステイゴールドで、この豆はそれほど値が張らないのにいつも美味しく、そのコスパの高さに5Kgずつリピート購入して今までに25kg近く焼いてきた。
ガテマラ・ステイゴールド


焙煎前/後には当然ながらいつもどおりに念入りなハンド・ソーティングがしてあり、大きな欠点豆は含まれていないはずである。ここからそのまま取り出した12g、ポジティブピッキングで取り出した12gの2つを用意して、コーノ式ペーパーフィルタで全く同じように抽出した。 お湯は90度、蒸らしが40ccで45秒、次に60ccを注いで1分30秒待ち、最後に70ccを足して2分30秒でドリッパーを外した。

ポジティブ・ピッキング比較

さて、見た目もさほど違いもないし、味の差はちょっと分からないだろうな、と思いつつ両方を珈琲液にしてカッピングしてみると、なんと全然クォリティが違うのでびっくり!

ポジティブ・ピック・カッピング

通常のソーティングの珈琲も悪くはないのだが、よく味わうと少し雑味を感じる。さらに時間をおいて冷めてくると雑味が少し増す感じ。 一方、ポジティブ・ピッキングの方は全く雑味が感じられず、ひたすら美味しい。あまりの美味しさに途中からカッピングを止めて普通に飲み干してしまった。(^^;

どうやら普通にソーティングしただけでは、やはり良豆と欠点豆の間にグレーゾーン豆が残っており、これが雑味を出すらしい。つまり同じ珈琲生豆で開始したとしても、焙煎後に良豆だけを選って珈琲を淹れることで極上の一杯が作れる、ということか。 商業的にはちょっと成り立たないと思うが、個人で楽しむなら、たまにはここまで手をかけてみるのも面白い。

パーチメント・コーヒー

珈琲生豆は今やそこら中で買えるが、やはり実店舗よりもオンライン購入の方が便利である。で、オンラインのセレクションを見ていると、時々パーチメント・コーヒーというのがあり、単価は多少安いけれど実際のところ生豆を取り出すとどれくらい目減りするのか前から疑問に思っていた。少し前にKOPE花伝カフェのママさんに頂いたハワイカウのパーチメント・コーヒーがあったことを思い出し、本日どうなるか実験してみた。
ハワイカウ・パーチメント珈琲

パーチメント・コーヒーはこんな状態です。
Parchmentハワイカウ2

パーチメントでもピーベリーは形で分かってしまうのがちょっと可愛い!
Parchmentピーベリ


このパーチメント、パリパリと柔らかくて指でも簡単に外せるが、数が多いので今回はブレード型電動ミルを使ってバリバリと砕いてみた。ミルはチョン・チョンと一回に1~2秒くらい回すのがコツ。
パーチメントをブレードミルで処理

処理途中は結構大変なことになります。(^^;
Parchment処理途中

網を揺すると軽いパーチメントは浮いてくるので手で取り除くこと10数回、最後は団扇であおいで完成。こんなものが外れます。
Parchmentハスク

途中ちょっとブレードを回し過ぎて、生豆本体まで砕いてしまった。
折角なので砕けた豆を「煎り上手」で焙煎してみたら、意外にもちゃんと一ハゼの音も出るし、それなりに焙煎できて、ついでに珈琲にしてみたら少々雑味はあるけど、まぁ飲める味。うむ~。
パーチメント処理割れ豆

結局、パーチメントを外すことで重量はちょうど20%減り、さらに欠点豆を取り除くと元の116gが81gと30%の目減りであった。欠点豆が多い豆でなければ、パーチメントコーヒーを焙煎可能な生豆に処理すると2割強減る、というのが結論。ただしこんな少量でも処理は相当に面倒だったので、専用機械でも持っていない限りやはりパーチメント・コーヒーは選ぶべきでない、かな。
パーチメント重量変化


青空焙煎

今日は気持ちのよい天気で朝から機嫌よく色々作業などしていたが、夕方近くになってふと思いついて久し振りに青空焙煎を試みた。焙煎道具自体はいつもの手回しロースターだが、我が家の庭は夕方には少々海風が吹くため、風の穏やかな日でもカセットコンロに載せただけでは熱量不足となるため、自作(?)の箱型の覆いの中で焙煎するのだ。
青空焙煎

上から見るとこんな感じ。
青空焙煎キット

今回は先日10kgも購入してしまったブラジル・イルマスペレイラを使用。
50度のお湯でよく研ぐことで汚れやシルバースキンや完全に落とすアームズメソッドを施し、一種の大吟醸珈琲ということで。
アームズ・ブラジル・イルマ準備

青空焙煎なのでモクモクと煙が出ても問題なし。ということでフルシティまでしっかり焙煎。(^o^)
青空焙煎ブラジル・フルシティ

箱の中とはいえどうしても風が回り込み、いつものキッチン焙煎のようにはいかず、キッチンでは15度/分かそれ以上で温度上昇させるが、外ではせいぜい10度/分かそれ以下。しかし最終的にはちゃんと2ハゼ温度まで到達し、しっかりバチバチとハゼた。よかった~ \(^_^)/

ということで同じフルシティローストでも時間をかけた分味わいは変わるはず。
明日飲んでみるのが楽しみだ! ネルで飛び切りの一杯をいれてみよっと。
焙煎グラフ(青空焙煎ーブラジル)


欠点豆の発見能力

ほぼ全ての珈琲生豆には欠点豆が多かれ少なかれ含まれているのは仕方ないとして、色々ある欠点豆の中でも自分で少量焙煎する以上、毒素を出すというカビ豆だけはいつも完全除去したいと考えている。ところがこれがなかなか厄介なのである。

今日はちゃんとソーティングすれば大変美味しいが、このカビ豆が10%前後も含まれている例のハワイカウをソーティングする際に、グレイゾーンとして除いた豆からサンプルを10個ほど選び、これをニッパーで割って実際に確認してみた。

サンプル豆を表、裏から見た様子は以下の通り。表から見るとほとんどわからないが、裏から見ると所謂ベリーボーラーの穴らしきものが見えるものが多い。表から見て穴が開いていなくても、なんとなく内部が黒っぽく見えるケースも多く、サンプルには穴は開いていないが黒っぽいものが透けている豆も含めてみた。(Sample No.8)

ハワイカウ・グレイゾーン表
ハワイカウ・グレイゾーン裏

さて、ここから先はちょっとエグイ写真もあるので、要注意だ。
まずは10個のサンプルの怪しい部分のアップを見て頂きたい。
SampleGreyBeans

No.5とかは割ってみるまでもなくカビ豆であるが、他は穴は開いていても一見カビはなさそうにみえる。さて、これを割って確認した結果は下記の通り。6割は実際にカビていた。
ハワイカウ・グレイゾーン正解

カビている部分をアップにするとこんな感じである。(エグイ写真ですみません)
KauBadBeans


取り除きたくなりますね。
しかしこれらを取り除くのは至難の業なわけです。

一方、下記のような明らかなものは、割ってみるまでもなく取り除けます。
なんとなれば、豆をくるくる回すと割らなくてもどこかに青いカビが見えるからである。
ハワイカウ欠点豆

さて、欠点豆をしっかり除去した後は、いつものように手回し焙煎器で丁寧に焙煎することで円やかで甘いハワイカウが完成する。今回は350g、300gで2バッチの焙煎をしたが、最初の焙煎はいつもよりやや浅い煎りで爽やかな酸味が際立った。
ハワイカウ焙煎85%

ディスカバリー焙煎機のダンパーテスト(失敗)

こどもの日の今日、緊急事態宣言ですっかり空いている環状2号線を快適にドライブして、またまた国立市のK氏の珈琲工房へ。本日は、ディスカバリー焙煎機のダンパーがどのように焙煎豆に影響するのかを確認することがメインで、あとは余興でエアロプレス抽出やネル抽出などを楽しむ、という会であった。もちろんマスクとソーシャルディスタンスに関してはバッチリで3密ではない。

テスト用の豆は先日スズシン商会から分けてもらったUSフーズのブラジル・ナチュラル豆、カラメリッチ。これはスクリーンサイズが18もあり、ブラジルとしてはかなり大柄な豆である。

ディスカバリー焙煎機のダンパーはメモリが1から5まであるが、いつもはなんとなく真ん中の3に固定しているものを、敢えて1(全閉)、5(全開)という両極端にセットして、なるべく同じ温上曲線で、同じ焙煎度にした場合、どちらの豆がより良い風味が立つか確認することが目的であった。
Discovery焙煎機(ダンパーテスト)

しかしながら、今回は150gという小さめのバッチサイズにしたことと連続焙煎であったため、2回目の焙煎の方は一気に豆に熱が入って、前半は1回目より同じ経過時間で30度くらい高い温度になってしまったので、慌ててガス圧を1から0.8まで下げたけど勢いは止まらず、6分半ほどで1ハゼ温度に到達してしまい、2ハゼ開始直後という同じタイミングで止めたにも拘らず深めの焙煎になってしまった。
ブラジル・カラメリッチbyDiscovery
ダンパー位置による変化確認

珈琲液にしてみると、1回めの方は大変美味しいものであったが、2回目のはやはり早過ぎたようで見た目は十分な色でも少し芯が残っているような味であった。 ただ、ダンパーは完全に閉めた状態でも美味しく焙煎出来る、ということだけは確認できた。

同じ焙煎機を使っている飯田橋の青梅珈琲はダンパーは全開で焼くと言っていたので、まぁどの位置でも焙煎可能ということになるが、さて結局、味にどう影響を与えるのか?

結論として今回のテストは失敗であった。できれば近々リベンジしたい。 

エアロプレスは楽しい!
片山工房実験風景(エアロプレス)
コフィアのネルフィルター

持参したタンザニア・アデラAAのフルシティーロースト豆を、24g / 100cc でデミタスサイズにネルドリップ。まさに本格的ネルドリップの味。これならネル珈琲専門店で提供してもOKじゃないかな。

モカシダモに多く含まれる緑豆の調査(後半)

昨日分離焙煎したモカシダモ2種類を、豆本来の味がストレートに出やすい浸漬方式+金属メッシュの抽出道具を使って比較してみた。この器具は、1ZPresso社の高性能ハンドミル Q2とセットになっていたもので、当初はちょっと「なんじゃらほい」という感じで放置していたが、実はこの金属メッシュのフィルターが愛用カップの直径などにもぴったりであることに気付き、今は大活躍している。
DoubleMeshFilter

朝一番に庭からレモンバームとペパーミントを摘んできて作るハーブティーの茶漉し、昼のちょい飲み珈琲やテスト、そして夕食後に嗜む煎茶の茶漉しといった感じ。ステンレスは洗うのも簡単だし、サイズ感がとてもいい。

さて、モカのテストだが、豆 8.2gに対して、90度のお湯 100cc注いで2分半で抽出することにした。
モカシダモ・緑豆・通常豆

モカシダモ・カップテスト粉

モカシダモ・カップ緑豆・通常豆
モカシダモ・カップテスト比較

緑豆だけを集めたカップは、強いモカフレーバーがありこれはこれで悪くはないのだが、雑味が多くて甘さはあまり感じられず、まあそれなりの味。

一方で通常色豆だけ残したカップは、シダモ特有の甘さがより鮮明で、雑味はほぼ消えて穏やかなモカフレーバーを感じるもので、いつも飲んでいる緑豆が混ざったものより洗練された味であった。

ということで、やはり緑豆は極力取り除く方がよいかな、という結論。



モカシダモに多く含まれる緑豆の調査(前半)

エチオピア珈琲豆、所謂モカ豆には小さい物、丸い物、細長い物と大きさも形も色も不揃いなので大変見分けやすいが、その分、欠点豆を取り除くのが大変だ。欠点豆の比率が高いだけでなく微妙なものも多く、神経質にやると恐らく1バッチ300g分のハンドソーティングに1時間くらいかかって、3割くらい減ってしまうと思われる。そしてそのように神経質にやるより、怪しい豆もある程度大目にみてやって素早くおおらかなソーティングした方が味が良かったりするのがこの豆の面白いところである。

さて、そんな中で毎回取り除くべきか大いに迷ってしまうのが、一見未熟豆にも見える緑掛かった薄皮をまとった豆である。先日、スズシンさんにお裾分けして頂いたシダモG4がまだ少し残っていたので、これを使って緑豆と通常色の豆の分離を試みた。分離後、左が緑豆、右が通常豆である。

モカシダモ(緑豆)

アップするとこんな感じで随分と色合いが異なることが分かる。
モカシダモ(緑豆)アップ

緑豆は合計40g程度しか集められなかったので発明工房の「煎り上手」で手焼き、通常色豆の方はGeneCafeを使って焙煎した結果が下記の写真。緑豆の方を少し深めに焼いてしまったが、元々色のばらつきが大きく焙煎後に色の薄い死豆などパラパラ姿を現すが、その比率はざっと見る限りあまり差はなさそうである。
モカシダモ焙煎後(緑豆)

モカシダモ焙煎後(通常豆)

いつもはこれらがMixされたモカシダモを飲んでいるので、Mix(つまり通常)の味は、もちろんしっかり記憶している。特徴的なモカフレーバーが盛大でとても甘い珈琲だ。エアロプレスで淹れると「絶対シュガーを入れただろう?」と言われそうなくらいに甘みを感じる。

この甘味やモカフレーバーに関して、緑豆、通常色豆のどちらが主に貢献しているのか、分離した珈琲をそれぞれ味わうことで確かめたいと思う。 ということで明日のカップテストに続く…

パプアニューギニアの珈琲豆の焙煎

約80年前にジャマイカのブルーマウンテン珈琲(ティピカ種)を移植して開始したというパプアニューギニアの珈琲豆は、確かにバランスが取れていて美味しい。ただ焙煎するのは意外と大変で、手廻しロースターではそう簡単には皺が伸びてくれず、少し深めにじっくり焙煎する必要がある。とはいえ深煎り一辺倒にする必要もなくちゃんと心地よい酸味や爽やかな香りも残るので、バッハ田口護氏のシステム珈琲学で分類するならCとDの中間タイプ(中深煎りが妥当)ではないかという気がする。

この豆が美味しいという大学の友人H氏のリクエストもあり、本日はパプアニューギニア(キガバ農園)の豆を2バッチ、同じように焼いてみた。最初の4分は弱火、そこから一気に熱を入れていきカフェー酸を生じやすい加水分解領域は一気に通り過ぎて、200度からは火を落として調整に入り、1ハゼ開始後は温度を約210度に保って2ハゼを起こさないで引っ張る、というやり方である。

実際は1ハゼまでは同じような温上曲線をキープしたが、2回目の焙煎時の後半、ダンパーよろしく窓を少し開けて弱火にしていたら、換気が効き過ぎたのか温度が下がってきたので、慌てて中火にしたら今度は温度が上がり過ぎて、また弱火、といったことをやってしまった結果、トータル時間も1ハゼ開始からの時間も短いのに、焙煎度合いは少し深くなるということに。しかしこの2回目の方が若干、大きく膨らんで皺も伸びたのは結果オーライということか。グラフにするとこんな感じ。

下部の写真をよく見ると、0.5%の差が微かに豆の色にも表れているが、読み取れるであろうか。
同じ容器に入れて比べると、生豆時の量は同じ300gでも微かに2回目の方が盛り上がっていた。
今日は他の実験でも色々珈琲を飲んでいるので、カッピングは今回は明日行おうと思う。

パプア焙煎比較(再現性グラフ)



焙煎度合いの色での判断

珈琲関連の資料を整理していたら、昨年のSCAJで Roast Riteさんのブースで頂いた Roast Color Cardが出てきたので、実際の豆で焙煎度合いが測れるか試してみましたが、正直難しい。光の加減、豆表面の光沢や反射でかなりぶれます。そもそも豆の表面はこのカラーカードのようにつるっとしているわけでなく、むしろ豆同士の方が色の違いは分かりやすいかなぁ。
ちなみにこのカード、$19.5で売っているのね。てっきり販促品かと思ってしまった。:-O

http://store.acronova.com/roast-color-matrix-card-rc-790.html
RoastColorMatrixCard

先日焙煎したハワイカウの豆(自分としてはミディアム・ロースト)を使って比較したらこんな感じ。
色見本とハワイカウ豆

色見本とハワイカウ粉

珈琲豆を挽く前後で同じアグトロン・スケール値に見えるでしょうか。

同じくハワイカウの豆を別の日にシティローストに焼いたものも並べるとこんな感じです。
この2つの豆の焙煎時の重量減はそれぞれ85.3%(ダブル焙煎)、84.0%で、その違いは 1.3%だけです。
同じ豆でも当然かなりフレーバーは異なります。

色見本とハワイカウ豆2種

焙煎度合いのコントロール

手回しロースターでの焙煎を始めたのが2017年7月なので、そろそろ3年が近い。全体の経過時間、1ハゼからの経過時間、ロースター内の温度変化といったものを記録して、焙煎結果と照らし合わせていると、焙煎度合いについてはかなりコントロールが出来るようになったが、同じ豆を同じ焙煎度合いで焼いても必ずしも同じ味にならないのが珈琲焙煎の奥が深いところ。

焙煎度合いについては通常は豆の色で判断するが、これも必ずしも当てにならず、マンデリンなどは色合い的にかなり深く煎っても実際には一段浅い状態だとされるし、本当に判断が難しい。とはいえ、なるべく客観的に焙煎度合いを知りたいので、今は焙煎前後の重量変化を目安としている。ただこれも元の生豆の含水量にも依存すると思われ、ニュークロップとパースとクロップでは例えば同じ83%に焼いてもきっと色(焙煎度)が異なるんだろうなぁ。

やっぱり焙煎豆の色を数値化するロースト・アナライザーなるものをそのうち購入したいと思う今日この頃。例えばこれ。
Roast Rite Coffee Roast Analyzer RA-710BF
RoAmi コーヒーローストアナライザー  TRA-3000

ローストアナライザの本家本元、アグトロン社のアナライザーは全然手が出ない値段帯だけど、これらの小型アナライザなら10~20万円と頑張れば買えなくもない価格。でも抽出度合いを測るための濃度計も欲しいしなぁ。

ところで、本日は実家の両親に送るために3バッチの焙煎をしました。一応、焙煎度合いは狙い通りに、ブラジルがハイロースト、ガテマラがシティロースト、タンザニアがフルシティローストとしました。こんな感じ。水分変化量での1,2%の違いは色も異なるし、味はもっと異なります。手回しロースターでの珈琲焙煎は実に面白い!
焙煎3段階



ハワイ・カウ珈琲のベスト焙煎探求(その3)

本日は久しぶりにK氏の自宅珈琲工房におじゃまして、富士珈機ディスカバリー焙煎機を使ってハワイカウの豆を焙煎しました。焙煎度合いは自分の手回しロースターと同じところを目指し、84.5%(中煎り浅め)と85.5%(中煎り深め)としました。さすがにディスカバリーはこれくらいに浅く焼いても綺麗に大きく膨らみます。こちらは85.5%と浅めの煎りの方の様子。
ハワイカウ-Discovery-中煎り


しかしながら、焙煎直後はやはり少し酸味がきつい感じになってしまったので、2,3日エージングしてから再度評価したいと思います。途中、フライパンで焼く簡単タルトタタンを作ったりしながら半日、K氏と色々試行錯誤しました。もちろん実験中もソーシャルディスタンスはちゃんとキープして  :-)
片山工房-ハワイカウ実験の様子3
片山工房-ハワイカウ実験の様子2
片山工房-ハワイカウ実験の様子1


ハワイ・カウ珈琲のベスト焙煎探求(その2)

Kope花伝カフェから預かったハワイカウの珈琲豆の甘みを最大限に引き出すため、さらに実験を重ねています。しかしながらこのロットは本当に手強い。たぶん農薬をほとんど使っていないことの証なのでしょうが、330gの豆を30分程かけてソーティングしたら虫食い等の欠点豆が11.2%。厳しい~(+_+)

こちらがソーティング後の豆。予定の300gを少し切ってしまいました。
ハワイカウ(ピック後)


そしてこちらが取り除いた欠点豆。クルクル回さないとわからない欠点豆も多く、完全に取り除くには大変手間がかかります。
ハワイカウ(欠点豆)

今回は綺麗にしたハワイカウを、手廻しロースターでダブル焙煎の中煎りに仕上げてみました。
下の写真は一回目の焙煎を冷やしたところ。6分50秒かけて豆温度が180度ちょっとに上昇したところで焙煎器から取り出して冷却。当然ながらこの時点では豆は爆ぜていません。
ハワイカウ(ダブル焙煎途中)

これを約2時間寝かせてから、再度手廻しロースターに投入して今度は最後まで焙煎。
ダブル焙煎では結構ラフに温度上昇させてもいつも綺麗に膨らむので、今回も一気に熱を入れていき、7分53秒で1ハゼ開始、9分33秒で煎り止め。

焙煎前の生豆からの重量減を計算すると85.4%となり、一昨日焼いたシングル焙煎のものとほぼ一致。そこで横に並べて写真を撮ってみました。ダブル焙煎の方は85.3%とメモをつけてしまいましたが85.4%の間違いで、シングル焙煎の豆との差はたったの0.1%、ほぼ同じ重量変化と言えましょう。
ハワイカウ(ダブル比較)

アップするとこんな感じ。ダブル焙煎ではこの煎り加減でも完璧に皺が伸びてピカピカです。(^^)/
ハワイカウ(ダブル比較アップ)


ということで明日試飲してみます。

ハワイ・カウ珈琲のベスト焙煎探求(その1)

横浜橋商店街の近くにあるKope花伝カフェではハワイ・カウコーヒーが飲めます。珈琲豆はハワイ・カウの農園(Ocean Vista Estate)から直輸入していますが、これを今まで店主のママさんさんが小さな焙煎機で手焼きしていましたが、これからは僕が焙煎することになりました。
ということで、早速異なる深さで焙煎してカッピングしながら最適な焙煎度を探ってみました。
お店から預かったカウの生豆はロットがちょっと悪いのか約1割の欠点豆が含まれているので、通常の3倍の時間をかけてハンド・ソーティングしてから手回しロースターで丁寧に焙煎します。

今回は300gずつ2回焙煎し、温度上昇はほぼ同じカーブ(10-15度/分)にして、一ハゼ開始からそれぞれ2分37秒と2分15秒で煎り止めし、重量変化で85.5%, 84.7%としました。
ハワイカウ焙煎比較

微かな色の違いが判るでしょうか。 もう少しズームアップするとこんな感じ。
ハワイカウ焙煎比較Zoom

さらに珈琲粉にします。
ハワイカウ珈琲粉色比較

そしてカッピング準備。10gの珈琲粉に対して焼く150ccの熱湯を注いで4分待ちます。
ハワイカウ・カッピング準備

4分後はこんな感じ。いい匂いがします。
ハワイカウ・カッピング1

ブレイクしてから、カッピング開始。 冷めてくるまで何度もカッピング。

結論として、85.5%の浅めの方がよりカウコーヒーらしい酸味が残っていてよいかと。
ただ、ちょっと雑味も感じたので次はダブル焙煎で仕上げてみようと思います。
ハワイカウ・カッピング2

それはそうと昨日、コロナ騒ぎがなければ先月末に訪問していたはずのOcean Vista農園のジョン・アーサン氏と娘さんのローラ、そのまた息子さんのスティーブン、それにハワイ側の代理店社長のLeeミユキさんとその娘さんといった面々とビデオ会議を通して農園の様子をリアルタイムで見せて頂きました。標高350mほどの緩やかな斜面に珈琲の苗木、1年目、数年目、一番古いものはカットバックをしながら50年も経った木もあり、しかも今の季節でも一部は花も咲いていれば実もなっている様子に感動!
地面はピーナッツ・グラスで覆うことで、珈琲の木がより元気に育つのだとか。
OceanVista1
VideoChatWithJohn

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