少し値の張る生豆は特に素材の持ち味を十分に引き出したいので浅めに煎ることが多いが、時々行き過ぎてしまい、酸味が強過ぎたり、エグ味が出てしまい折角の高級豆が飲みにくい珈琲になってしまうときがある。昔なら、もったいないので我慢してそのまま飲んでいたが、近ごろは再焙煎することで修正するようにしている。僕はこれを勝手に「まき直し」と呼んでいるが、これが意外とうまくいく。

例えば先日焙煎したマラウィ・チンミスクは、豆の種類がSアガロ、ニカといったちょっと珍しいものであったこともあり、つい気合が入り過ぎて完全に浅過ぎだった。そのままでは口が曲がるほどに酸っぱい珈琲であったが、5分ほどまき直し焙煎をすると、あら不思議、ちゃんと美味しい珈琲に変身。リカバリー成功!

昨日は、200gだけ残っていたケニア・トップ・カルティという高級豆をGene Cafeで焙煎したところ、そもそも密度が高いこの豆と Gene Cafeのような電気式ロースターの相性が悪いのか、かなり酸っぱくてちょっと飲めない味になってしまったため、本日、手廻しロースターでまき直し焙煎に挑戦。ちゃんと温度を計って4分25秒で200度に達したので、とりあえずそこでストップ。見かけはずっと綺麗に膨らんでおり悪くなかったが、再度、試飲してみたら、やはり酸っぱい。うーむ。 

<まき直し一回目のケニア>
ケニアまき直し1回目

温度というよりは、時間が4分台ではまだカフェー酸が分解されないのかと考え、まき直し2回目は5分20秒、210度まで廻してから冷却。さらにいい感じの色になった。金属メッシュ・フィルタで小さく入れて飲んでみると、強過ぎた酸味の主張は完全に引っ込んで、甘さが全面に出てきていたので一安心。明日、じっくりペーパードリップで飲んでみようと思う。 恐らくリカバリー成功なはず。

<まき直し2回目>
ケニアまき直し2回目

<後日談>
巻きなおしは、やはり無理があるようで、何度も試飲して気付いたことには、確かに尖った酸味は消えるし、豆面もぐっと綺麗になるが、豆自体の特徴もほとんど消えて、どの豆も凡庸な味になってしまう、ということである。一ハゼを超えて豆の成分に大きな化学変化を起こしものが一度冷えると、再加熱しても同じ状態にはもっていけない、ということだと理解した。その点、ダブル焙煎は1ハゼより十分に手前で止めるため、含水量は減らしても化学変化はまだほとんど起きていないから成り立つのであろう。とはいえ、ダブル焙煎もまた豆の特徴をかなり減じてしまう手法である。