香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

2022年04月

カセットコンロでの焙煎

煎り上手や手鍋、手網などで焙煎する場合の火力源としては、カセットコンロを使っている方が多いと思う。というのも、昨今のキッチンのガスコンロにはSiセンサーという安全装置が付いており、勝手に火が消えたり小さくなったりしてしまうからである。

そういう場合に便利なのがカセットコンロなわけだが、やはり暑かったり寒かったり、風雨の心配もある外で使うより、出来ればキッチンの換気扇の下で焙煎したい。この場合、火力のコントロールも楽である。僕はガスコンロの上に板を敷いて平面を作り、そこにコンロを載せて焙煎している。
キッチンでの焙煎


さて、便利なカセットコンロではあるが、問題はカセットボンベは容量が小さく直ぐに空になってしまうこと。そして最後の方になると、いつ空になるか分からず使い切るのが難しいため、中途半端に残っているボンベが増えていくことである。

イワタニあと5ml

最近気が付いたのだが、イワタニのボンベは新品はちょうど350gの重さに作られている。そして内容量は250gである。ということは、使用前後の重さを計れば、残量で使える回数が予測できるのである。ということで、早速やってみた結果がこんな感じである。

イワタニ使用中


当然ながら深く焙煎したり、1回目の焙煎で予熱時間が長いと使用量が増える。一方で、連続焙煎の2回目以降や浅煎り~中煎りの焙煎では使用量は少ない。その差は20g-28g 程度であり、平均すると一回あたり24gであった。ということは、250gのガスで10回は焙煎可能、ということが計算できる。

要するに、使用前のボンベ重量が125g以上であれば、中煎りなら大丈夫、ということである。

今までは残り少ないボンベは予熱に使うくらいしか手がなかったが、この管理方法を用いれば安心してギリギリまで焙煎に使うことが出来る。

ただしこれは「タフまるJr+煎り上手」の話であり、カセットコンロの種類や焙煎スタイルが変われば一回当たりの平均使用量は違ってくるので、ご興味のある方はご自分の環境で確認して頂きたい。

使用回数とボンベの重さの変化

<数本調べると、新品は350g ±0.1g となっていた>
イワタニ新品


実際に使い切ったボンベを計量してみると、100.5gとなっていた。
イワタニ空っぽ


ちなみに、イワタニの250gボンベは一缶が250円ほどなので、1回の焙煎に25円かかる計算である。これで70gの生豆を焙煎すると、約60gの焙煎豆が出来て、5杯分程度のコーヒーになるため、一杯あたり5円ほど燃料費がかかっていることになる。

これがプロパンガスなら、5kgのガス充填が約1800円で、もし同じ計算式を当てはめると一杯あたり 1.8円である。もちろん、ちゃんとした焙煎機ならバーナーが密閉構造でドラムを加熱するため、もっとずっと熱効率がよいし一度に沢山焼けるので、燃料費はほとんど計算に入れなくてもよいほどの小さなものになるはずである。

Scott Raoの焙煎理論の実践比較

Scott Raoの著作、THE COFFEE ROASTER'S COMPANIONCOFFEE ROASTING - BEST PRACTICE- を読むと、全編を通して主張していることは以下の一文にまとまる。

For the vast majority of the world's roasters, achieving a steadily declining ROR and a 20%-25% DTR were revolutionary ideas that improved their average roast quality.

1) 投入から排出まで一貫してROR(温度上昇率)をスムースに下げ続けること
2) FC開始から排出までの時間(Development Time)を、全体焙煎時間の20-25%にする


彼はこれの科学的根拠は示せていないが、多数の焙煎機を経験して、何百というロースターを指導してきた結果、統計的にそうなる、と演繹法的に述べている。そして、こういったプロファイルを安定的に得るためにはどうすればよいか、ということを2冊の本に延々と記述しているわけであるが、ちょっと現実的ではないことも要求しており、実際にやろうとするとそう簡単にはいかない。Rao氏もこの理論は浅煎り~中煎りまでには当てはまるが、それ以上深い焙煎は検証できていない、と白状している。

そこで0か1かのレベルで完璧を目指すのではなく、理想形に近づけるという考えに切り替えている。特に「煎り上手」のように外気が常に流入する形状の焙煎器具では、そもそも安定した温度測定は不可能で、グラフの波打ちを頭の中でスムージングしながら、実際の豆温度を推定するしかない。

さて、今回はちょうど横浜のカフェに納めるブラジル500gを3バッチ焙煎する中で、焙煎指数は一致しているのに、明らかに感じる香りの違いが出ていたため、7gずつサンプルを取っておき、それらのプロファイルを検証してみた。

Brazil_Samples_焙煎豆

焙煎指数(重量減%)
Sample1:14.9%
Sample2:14.8%


仮定
2回目の焙煎(Sample2)の方が香りが良いと感じたわけであるが、これは1回目に発生したクラッシュ&フリックというRoRの大きな波打ちを、極力抑えるように火力調整したからだと思われる。
Rao氏の言う、DIPという操作である。

以下の2つのプロファイルを比べて頂きたい。

Brazil_500g_Sample1
Brazil_500g_Sample2


主な違いは1ハゼ開始以降である。
投入温度は同じだが、サンプル2の方が焙煎時間は少し長く、排出温度は少し低い。
これは経験から、焙煎指数を揃えるための直感的なバランス操作である。

操作内容が分かるように重ねたグラフが下記になる。
色の薄いラインがサンプル1、濃い方がサンプル2である。

Brazil_500g_Samples_重ねて解析

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焙煎の翌日、粉に挽いてカッピング評価してみた。
光の具合で写真の上では色合いに差がある様に見えるが、左右を逆に置くと明るい方が逆転することから、粉に挽いても見た目の差はないものと考える。

一方で、香りはサンプル2の方が甘く強く、サンプル1はロースト臭が少し強めに出ている

Brazil_Samples_珈琲粉


ブレイク前の様子はこんな感じ。
Brazil_Samples_Break前


ブラインドカッピングの結果

いつものようにカップの位置をグルグルと変えて、どちらのサンプルか分からないようにしたうえで、ブラインドカッピングとした。

味の差、フレーバー差は確実にあり1つは苦みが強めで微かな雑味も感じるのに対して、他方は心地よい酸味が残っておりロースト臭も少な目で、明らかにこちらがサンプル2だと思い、確認したところ、やはり正解であった。

ただしどちらの焙煎方法が正しいという話ではなく、そもそもこのブラジルはハイ~シティローストに焼いて苦みとローストの香りを意図的に強めているので、人によってはサンプル1の方が美味しいと感じるだろう。

~大事なことは、「こう焼けばこうなる」という理論が確かめられた、ということである~

Rao氏が言うように、極端なCrash&Flickは生豆の持つ繊細なフレーバーを損ねることは間違いなさそうである。しかしこのブラジルは普通に焼くと特に Crash&Flickが大きく出やすいのである。

なお、本格的にやるなら3つずつ同じ豆のサンプルを作って合計6個のカップをブラインドで全問正解できるか、で検証すべきであるが、今回はお店のものなのでそこまでは出来なかった。

そしてバッチ毎の多少のブレはあっても最終的にすべてのバッチを混ぜてしまうので均質化され、最終的には毎回同じ味に仕上がるのである。
Brazil_Samples_Blind_Cupping


ケニア・マサイの評価

最近は可能な限り自分にとって未知のサンプル生豆を入手するようにしている。

選択肢が多過ぎて毎回とても迷うが、結局、間違いなく期待できそうな無難なものを選んでしまうことが多い。本日焙煎したケニア・マサイもその範疇である。 これは単一農園ものではなく、有名なドーマン社のブランド品で、ムランガ、キリニャガ、ニエリ産の珈琲豆をブレンドしてトップクォリティを担保していると説明がある。つまり、これぞ The Kenyan Coffeeということになる。
BlackcurrentSample

フレーバーの説明を見ると、あちこちにカシスが出てくるが、カシスは英語ではBlackcurrantである。現在勉強中のLe Nez du Cafeの中の香りの一つが、(14) Blackcurrant-likeで、これは僕にとって最も判別が難しい香りの一つだったりする。

なんでこの香りだけ名前に "like" が付いているのかも謎であるが、少しティッシュに垂らしても匂いを強くしてみても、頭の中に?マークが飛び交う香りである。そこでカシスジャムを買ってみると、こちらは分かり易くカシスの香りがする。うーむ。さて、コーヒーの場合はどうなのか

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<ケニア・マサイAA 生豆> by USフーズ
カシス、花のような香り、柑橘、パッションフルーツ、ドライフルーツなどの香り、スパイス系の香りなど複雑でしっかりとした香りが楽しめます。しっかりとしたボディーと甘味も楽しめます。 

カシスの香りをはじめとした、さまざまな華やかな香り、きれいな酸味、魅力的な甘さ、力強いボディー感が終始口の中を占領します。ガツンとコーヒーが迫ってきます。 
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これをいつものように、ノルディックローストによる浅煎り、ナチュラルローストによるミディアム、そして少し深めのハイロースト、と3種類に煎り分けてみる。

こういうとき、バッチサイズが70gの煎り上手が重宝する。

ケニア・マサイ焙煎度違い


焙煎プロファイルと、それぞれのUSフーズによる説明を並べてみる。

  • 浅煎り
  柑橘、パッションフルーツ、すもものような風味。りんごのような軽やかな風味も感じられる。
  酸味がしっかりとしている。クリーンで旨味がある。

KenyaMasai_Nordic


  • 中煎り
 柑橘、カシス、ドライフルーツのような風味。りんごのような軽やかな風味も感じられる。
 酸味が少し落ち着き、飲みやすさが出てくる。
 アフターでべっこう飴のようなコクのある甘味を感じる。

KenyaMasai_Medium

  • ハイロースト
  酸味が和らぎ、苦味とケニアらしい凝縮感、ボディー感が出てくる。
  カシスフレーバーとドライフルーツのような甘さを伴った酸味が広がる。
  アフターで焙じ茶を思わせる心地よい余韻が続く。
  香り、優しい酸味、ボディー、心地よいほのかな苦味、甘味を楽しめる。

KenyaMasai_HiRoast

さて明日から、試飲してみるが、実際説明のような味が出ているか。
この生豆はちょっと価格は高いが、欠点豆はほとんど見当たらず見た目も美しい。
焙煎してみると、かなり期待できる豆面をしている。実に楽しみである。

岩谷産業「タフまるJr.」と煎り上手の相性


タフまるJR@玄関
カセットコンロと言えば岩谷産業であるが、その中でも「タフまる」という商品は以前から気になっており、いずれ購入しようと考えていた。先日、実家近くのコーナンで見ているうちに、やはり買おうと決心し、一度は手に取ったが、ふと横の「タフまるJr.」の方も良く見えてきて、店頭でさんざん迷った挙句、結局Jrの方を購入した。とにかくコンパクトで可愛く所有欲をくすぐるが、タフまるに比べると火力が2.3KWと少ない。さてどうかな、と思ったが、結論から言ってJr.を選んだのは大正解

いわゆる「多孔式バーナー」はとても安定した炎で中心部に熱が集中するためか、最大火力にせずとも十分に素早く煎り上手を加熱することが出来て、煎り上手焙煎の醍醐味である「小型スポーツカーのような」急加熱&ブレーキ性が損なわれず、火力調整が最小~最大まで実にスムーズに変えれる。むしろいつものLPガスコンロよりも使い勝手がよい。

ちなみに収納ケースもいい感じで、これなら気軽に持ち歩きたくなる。

昨晩、キッチンにタフまるJr.を持ち込んで、題材としてマンデリン・ビンタンリマを3回、中深煎り、中煎り、浅煎り(ノルディック)と異なるプロファイルで焙煎してみたが、なかなか良い感じに焼ける。

タフまるJR@実家


まず最初は少し深めに焼こうと、2ハゼを超えて40秒程度まで焙煎してみた。Drop温度は230℃で通常ならシティローストとなるが、マンデリンは色づきが遅く豆色などから判断してハイローストとした。まだ試飲していないが、如何にも美味しそうな匂いが漂っている。

Bintang_HighRoast


次はなるべく綺麗にナチュラルローストでミディアムに仕上げようと、火力や炎からの距離に気を付けながら丁寧に焙煎。これまた良い感じのお手本のようなプロファイルで焼き上がった。こちらもまだ試飲していないが、美味しいこと間違いなし、という豆面である。

Bintang_MediumRoast

最後がノルディックローストでの浅煎りである。RoRが常に20前後になるようにコントロールして、1ハゼ開始から1分以内に煎り止め、トータル7分55秒の短時間焙煎である。ポイントは、1ハゼ開始後、気化熱によるRoRのクラッシュが起き始めたら素早くそこで煎り止めすることである。これはスコットラオの本に書かれていた手法である。

Bintang_NordicRoast

焙煎した豆を3つを並べるとこんな感じである。

ビンタンリマ3種


一日経った今日、まずノルディックローストの浅煎りをV60で淹れてみたところ、ロースト・アーモンドのような心地よい香りが素晴らしく、飲んでみるとスウィートオレンジようなジューシーさが出ていてとても美味しい。まずまず上出来な焙煎である。

マンデリンの中でもこのビンタンリマには欠点豆もほとんど見当たらず、そもそも良い豆のようであるが、そのポテンシャルを十分に引き出した焙煎が出来たように思う。

「タフまるJr」は火力調整がやりやすく、今回の焙煎も容易に再現できそうである。

LE NEZ du CAFE

LeNezDuCafe木箱


「チョコレートをイメージする甘い香り。柔らかい飲み口から、カシスやピーチ、マスカットのような甘さが広がる。アフリカならではの独特な質感を持ち、エキゾチックで赤ワインやココア、スパイスを想わせるコクと力強い苦みの余韻」

これは、ウォッシュト精製のウガンダ・アフリカンムーンに対する、某有名な珈琲屋さんによる説明である。どうだろう、どんな味のコーヒーが想像できるだろうか。

僕も同じ産地・精製の珈琲豆はしばしば焙煎してきて、確かにアフリカらしい力強さがあり、リピーターの多い人気の豆であるが、とてもここまでの説明は出来ない。ちなみに僕はこれを通常ハイローストに仕上げて以下の説明を付けて販売している。

「甘みとコクがあり、アップルのようなジューシーさを感じる、アフリカ産らしい力強い味わいのコーヒー」

実際、カッピングの表現は自由で多彩であるが、多くの人に的確なフレーバーを想像してもらう表現はとても難しい。

例えば、未知の生豆を買う際はまず販売会社の説明を見るが、現実には焙煎度が異なると全く違うフレーバーになるので、説明だけで期待どおりの豆を選ぶのはなかなか難しい。親切な会社では焙煎度毎に分けて期待できるフレーバーを説明してくれており大変参考になる。しかし、それでも実際に焙煎してみると、なかなかその通りにはならないものである。

前置きが長くなった。

さて、そんな中でもやっぱりなにか基準は欲しい。フレーバーは嗅覚により感じるものが大きいとされる。鼻の奥の嗅細胞に届く香りは鼻腔からだけでなく、飲み込むときに口の内側からも届く。いわゆる口中香である。

ということで思い切って Qグレーダー試験で使うことで有名な Le Nez Du Cafeを購入してみた。

元々はワインのを学ぶ人のために、Jean Lenoir氏により1981年に開発された Le Nez Du Vinという香りのサンプルがあり、その16年後にコロンビアFNCのリクエストで、このコーヒー用サンプルが作られたとのこと。今はウィスキーやアルマニャック版もあったり、少ないサンプル数の簡易バージョンもあるが、コーヒーに関してはこれ一択である。

36本の香りのビンがフランスらしいこ洒落た木製ケースに入っており、なかなか所有欲をくすぐるものであるが、そんなことより早速、順に香りを確認していく。すると、とてもハッキリしたものと、非常に弱い香りで判別が難しいものがあることが分かる。

例えば、9番のCoriander seeds, 14番のBlackcurrent-like, 20番のLether, 29番のRoasted hazelnutなどは、本当に微かな香りで、もしかしてサンプルが古くて香りが抜けているのではないか、と疑いたくなってしまうほど弱い香りである。

実はこの点で、やはりフランスから直輸入すべきであったかと少し後悔している。今回は楽天モールで63,800円で購入した。ネット購入先は別会社であったが、納品元は「日本クリエイティブ株式会社」というところであった。

これらの香りを記憶していくためには、なるべくはっきりとした香りが欲しい。気を取り直して、取り合えず本物のCoriander seedsの粉ヘーゼルナッツを買ってきて、それと比べることにした。

GABANのコリアンダーパウダーと9番のサンプル (Coriander seeds)
LeNezDuCafeコリアンダー


Coriander seedsは本物もとても上品で弱い香りで、確かにこれならサンプルの香りも弱くてしかないか、という感じである。しかし香りサンプルの付属の冊子にある説明を見ると、dominant scent (支配的な香り)とあり、むしろハッキリした香りであるはずである。

LeNezDuCafeコリアンダー説明


無塩ロースト・ヘーゼルナッツと29番のサンプル(Roasted hazelnuts)
LeNezDuCafeヘーゼルナッツ

一方で、ローストしたヘーゼルナッツは噛んでみると独特な香りがあり覚えやすいが、香りサンプルはとても弱々しく、言われてみれば確かに同じ香りかな、という感じである。

冊子には、その香りが感じられるコーヒーの例が出ている。例えばバターの香りのところには、特にコスタリカ産にこの香りがあるとあるので、自分で焼いたコスタリカのコーヒーを淹れてその香りを探してみた。 う~む、あるようなないような、という感じである。香りのサンプルは1つの香りで単純であるが、コーヒーの方はミックスでありその中の微かな香りを見分けるのはやはりかなり難しい。

コスタリカSHB・セントタラス・ガンボア農園のミディアムロースト
LeNezDuCafeバター

LeNezDuCafeバター説明1
LeNezDuCafeバター説明

さて、ここからどう勉強していくか。

まずは繰り返し繰り返し、香りのサンプルを嗅いでは記憶することで、ブラインドですらすらと区別できるようにしたい。

それにしても木製ケースのデザインは秀逸である。付属の冊子を挿し込むことでスライドする蓋がロックされるようになっているのである。パズルみたいで面白い。フランス人のセンスに脱帽である。

LeNezDuCafeマニュアル


<追記> 2022/4/14
やはり香りのサンプルが弱すぎるものがあることが気になり、販売元の日本クリエイティブに問い合わせたところ、「販売元に確認してもらうので着払いで送り返してください」と返答が来たので、昨日すぐに送り返した。ということで実は現在は LE NEZ du CAFEは手元にない。

同じプロファイルで焙煎した異なるコーヒーのフレーバー比較

なるべく同じ焙煎プロファイルで焙煎した異なる産地の珈琲の比較をやってみた。
今までもなんとなくは近いことはやったことがあるが、考えてみれば真面目にテスト比較したことはないことに気付いた次第。

今回は素材としては以下の2つの珈琲を選択した。実はこれらは中途半端に残っていた豆で、購入後に1年以上放置してあったため、恐らくインポートされてから2年程度は経過したPast Cropで、ウォッシュト精製の豆である。

ペルー・クナミア・オーガニック(北東部に位置するアマゾナス州)
エルサルバドル・シティオ・デ・マリア農園 (西部サンタアナ県)

さて焙煎に関しての変動要素をあまり多くするとなんだかわからなくなってしまうので、以下の要素を揃えるようにしてみた。一方で、1ハゼ開始温度と時間、トータル焙煎時間に関しては完全に揃えることは困難で、とにかく焙煎曲線が近くなるようにした結果、異なる珈琲豆であるにもかかわらず、焙煎指数はぴたりと一致した。


【共通ターゲット】
バッチ量: 300g
投入温度: 160℃
中点温度: 100℃を目標
排出温度: 215℃
その他:
・ガス圧の変更タイミングをなるべく揃える
・焙煎機は200℃以上に予熱後に少し冷やして、投入温度まで再加熱

【結果】

<エルサルバドル>
排出時間 10:50 (215.3)
DTR=20
AUC=138
重量減 84.8%

<ペルー>
焙煎時間:11:00 (214.3)
DTR=19.8
AUC=146
重量減(84.5%)

IdenticalRoastForDiffBeans

2つの曲線を重ね合わせると以下のとおりで、非常によく似たプロファイルであることが見て取れる。

ElSal-Peru-重ね合わせ

下の写真のとおり、焙煎プロファイルも焙煎指数も同じでも、豆の色は微かにエルサルバドルの方が明るく見える。もしアグトロン値だけで判断するならばエルサルバドルはミディアムでも、ペルーの方はハイローストと判断されるかもしれない

エルサル・ペルー焙煎比較


さて、これらを一日経った本日、なるべく同じ条件となるように並べて同時に抽出。
テースティングした結果は以下のとおり。

エルサル・ペルー珈琲豆比較

エルサル・ペルー抽出液比較

<エルサルバドル>
【ドライ時のアロマ】 アーシー、キャラメル
【フレーバー】 チョコレート、スィートオレンジ、アップル、コリアンダー
【マウスフィール】 シルキーで軽やかな酸が口中に長く続く
【オーバーオール】 甘くジューシーで美味しい

<ペルー>
【ドライ時のアロマ】 ロースト・アーモンドやバニラの甘い香りを感じる
【フレーバー】 ヌガー、ダークチョコ、アーシー
【マウスフィール】 重厚な酸、重ためのマウスフィール、渋み
【オーバーオール】 コク、酸味、苦味、渋みなど飲みごたえのある味

両方とも良いバランスの焙煎度合いで、総合的にはかなりレベルが高い味であったが、エルサルバドルの方は少しお湯で薄めると非常に飲みやすく美味しいコーヒーとなった一方で、ペルーの方は時間が経っているせいか微かな枯れ臭を感じる。これはペルーの中でもコロンビアに近いエリアのコーヒーであり、実際、典型的コロンビアのコーヒーと近しい重厚さを感じる味であった。

焙煎教室でもこのレベルの比較がやれたら面白いかもしれない。

Baked フレーバーについて

現在、余命僅かの実父の介護のため実家に滞在しており、当面その状況が断続的に継続する予定である。ということで現在、手元にある焙煎機は持ち込んだ「煎り上手」と Sandbox Smart Roasterのみ。もちろん珈琲器具、生豆の種類も限られているが、出来ることが少ない分、返って集中できることもあるかとポジティブに考えたいが、さて。

本日はSandboxを使って、コロンビア・ボルカニックという水洗式の豆を中深煎りに焙煎しようとした。ところが、プロファイルをいじり過ぎたからか、投入温度は十分に高かったのに、最初あまり温度が上がらず、途中で仕方なしに火力を少し上げたが最後までペースに乗れず、結果的に非常にだらだらとした焙煎になってしまった。具体的には以下のプロファイルを見て頂きたい。これは酷いね。
BakedProfile


早速これを試飲してみたら、予想どおり見事な Baked フレーバーとなっていた。
そもそも焙煎豆を見ると、Scorched豆がパラパラと混じっている。
コロンビア・ボルカニック・スコーチト

Scorched豆を取り除いたら一見、綺麗なハイローストだが、焙煎豆の香りを嗅ぐだけでもBakedフレーバーが出ていることがはっきりとわかる。

コロンビア・ボルカニック全体


ここで、折角なので Bakedの要因について少し考察してみたい。
下記はUCCの焙煎セミナーで教えている焙煎欠点の一部であり、これが一般的な解釈であると思われる。上記の写真を改めて見ると表面が焦げており、下記の定義の中では Facedに相当するか。


Baked(低温長時間焙煎)
 - 見た目の色が同様でも、カラメル化が不十分
 - 風味が抜けたポップコーンやシリアルのような感じ

Scorched(焦げ)
 - 投入温度が高過ぎることによる初期の焦げ
 - 黒いスポットが出来るが、焙煎後は判別が難しい
 - 浅煎りでもスモーキーなフレーバーが感じられる
 
Tipped(欠け、割れ)
 - 熱量過剰で最も構造が弱い胚が焦げること
 - ビスケットの風味やスカンク臭、焦げ臭など
 
Faced (豆の表面焦げ)
 - 投入量過剰で攪拌が不十分となり、豆表面が焦げる
 - 熱量が多過ぎて、乾燥した豆の表面が焦げる

Facedの要因は2つ書かれているが、今回の生豆投入量は通常と同じ100gであり、攪拌不十分というのは当たらない。では「熱量が多過ぎて」はどうか、というとこれも当たらない。むしろ熱が足りないから、こんなに温度上昇に時間がかかってしまった

一方、Scorchedの要因を見ると、「投入温度が高過ぎる」となっているが、これも当たらない。210℃での投入はごく普通で、通常はこれで焦げることはない。

そもそもRoRが最初から10度程度しかなく、そこから徐々に火力が下がっていったので、普通に考えたら焦げるはずはない。豆の排出時の温度も198℃とかなり低い。むしろ普通なら生焼けの温度であるが、20分という長時間焙煎によりしっかり bakeされて、実は豆を取り出す瞬間には2ハゼすら起きていた。

このことから考えられることは、豆全体の塊としての平均温度は低くても、一部の豆の表面は焙煎ドラムの接触温度に近くなっており、それが2ハゼを起こす220℃を超えていた、ということであろう。また焦げた理由は、いわゆる低温火傷と考えると分かり易い。

そしてこの場合、抽出したコーヒーのフレーバーは、とてもスモーキーでロースト臭の強いものになる。Scott Rao的には最もやってはいけない焙煎ということになるが、世の中にはこのような味を好む人も少なからずいるようなので、まったく珈琲焙煎は奥が深い。


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