香豆火珈琲 (Kaz - Feel - Coffee) - 引越し済


KAZUHICOFFEEは 2021/11/11に開業いたしました。 屋号はそのままKAZUHICOFFEEです。

新HP: https://kazuhicoffeelab.com/
旧HP: http://www.kazuhicoffee.com/
Base: https://kazuhicoffee.thebase.in/

今はまだ珈琲豆のネット販売と時折行う焙煎教室だけですが、これから珈琲の家庭焙煎や小型焙煎機のコンサルティング業という分野を開拓したいと考えております。まずは発明工房さんの「煎り上手」や安価な小型ドラム型焙煎機などにちょっとした装置をつけて、焙煎プロファイルがリアルタイムに見えるようにすることで、短期間で焙煎の技術を学んだり、既に焙煎を開始されている方の技術が上達するようなプログラムを用意したいと考えております。これからまだまだやること山積ですが、まずは出発致しましたことお知らせ致します。 珈琲が仄かに好きという皆様が、もっともっと本物の珈琲のことを知って楽しんで頂けるようにすることが次の自分のミッションだと考えております。家庭用サイズの小型焙煎機を海外から輸入して販売する等も計画しております。皆さまが美味しい珈琲をいつでも気軽に楽しめるようにすることを全身全霊でサポートしたい!!

生豆の水洗いの効果検証(カッピング編)

→ 訂正 (2021/12/9)
内容更新しました!

まず今回使用した珈琲豆であるが、両方ともウォッシュト精製のニュークロップで、ブルンジがレッドブルボン種、ウガンダがSL28/34である。SL28はブルボン種の突然変異、選抜種なので、まぁフレーバーが似ていても不思議はない。国の位置関係は下記の図のとおりで、ウガンダは赤道直下、ブルンジはルワンダを挟んでほんの少し北側に位置しており、確証はないが気候やテロワール的に似ていてもやはり不思議はない。

Map_of_Uganda_and_neighboring_countries

ということでこの二つを同じ焙煎度に煎ってみたわけだが、正直これほどよく似た味になるとは思わなかった。自分でも3回カッピングして、ウガンダ・ブルンジを正しく区別できたのは2回目だけ、水洗いの有無に至っては、毎回違う形で間違えてしまった。

一方、今回協力して頂いた僕の焙煎仲間の3名のカッピング結果であるが、こちらもバラバラ、誰も全問正解はなし。一番好みの豆についても意見は割れた。ただし普段、水洗い焙煎をしているY氏のみ水洗いをした・しない、の区別に関しては全問正解してくれた。

→ 訂正 (2021/12/9)
協力してくれた3名のうち、普段から手網や手鍋で水洗い焙煎をされている2名は、水洗いしたかどうか、についてピタリと正解してくれました。ただ微妙な差であったとも言っています。

水洗い比較焙煎豆
水洗い比較珈琲粉
水洗い比較・水色

自分も含めて4名、皆それなりに普段から正しい珈琲を飲んでおり、一般の方よりはずっと珈琲に精通していると自負している。僕自身コーヒーインストラクター1級に合格するために、かなり微妙な違いが分かるまでにカッピング訓練を積んできた。しかしその4名をもってしても、ここまで差がはっきりとしないとはちょっと想定していなかった。

今回は通常は豆の性格が明確に出やすいミディアム・ローストにして比べたが、深く煎るとどうなるか、ニュークロップではなく、カレントやパーストクロップではどうか。はたまたナチュラル精製や昨今流行りのアナエロビックのように発酵香の強い豆ではどうか等、まだまだやってみたい実験はある。

さらに経験的に角が取れて味がかなり丸くなると信じている、お湯洗い(いわゆるアームズメソッド)の効果は実際どれほどのものなのか、なんて検証もいずれはやってみたい。

いずれにせよ今回の結論として、少なくともウォッシュトの新豆で元々雑味が少ないスッキリとした味わいの豆に対しては、水洗いは無用、ということであった。

→ 訂正 (2021/12/9)
上記の結論は少し性急であった。少なくとも水洗いしたかどうかを見分けることは出来る人には出来るようである。ただそれはカッピングという手法を通してその微妙な違いが分かる、という差ではあるかもしれないが、その微妙な差が雑味の多寡やフレーバーの違いで付加価値を生んでいるならば、手間を掛けてでも水洗い焙煎には価値があることになる。いずれにせよ、珈琲豆のオリジンや状態との相性はありそうで、いつでも水洗いすれば味が良くなる、ということはないように思われる。

生豆の水洗いの効果検証(準備編)

手網や手鍋、あるいはアウベルクラフトなどの金網・直火式といった比較的原始的な道具で焙煎されたことがある方ならご存じのとおり、珈琲豆を焙煎するとどうしてもチャフが飛び散る。チャフ・コレクター付き焙煎機であればほとんどはそこに溜まるが、それでも珈琲豆の出し入れのときなどに多少は飛び散るので、焙煎機の横には掃除機が欠かせない。

ちなみにチャフは英語で chaff、カスとかくずといった意味で、お米ならば、もみ殻がチャフである。珈琲豆の場合は、コーヒーチェリーという果実の種子の周りにあった周乳が、精選過程で乾燥されてされて種子が取り出される際に薄皮として残ったものである。生豆は英語では Green Bean、テカテカ光っている薄皮は Silver Skin (= Chaff) である。日本語で生豆だからといって Raw bean とは決して呼ばれない。 閑話休題。

さて僕が追及している家庭焙煎の世界においては、通常、以下の3つの意図を持って焙煎前の生豆を水やお湯で洗う人がいる。一方で、小規模な自家焙煎店では、故森光氏の珈琲美美のように水洗いを看板にしているところが若干あるが極少数派であり、まして大手珈琲焙煎業者が水洗い・お湯洗いをしているという話はとんと聞いたことがない。なぜであろう。

<生豆を洗う理由>
①洗ってチャフを取り除くことで、チャフの飛散量を減らす
②洗うと盛大に汚れが取れるので、なんとなく安心(残留農薬があってもなくなる?)
③味がマイルドになる。雑味が減るなどの付加価値が付く。

①はちゃんとした焙煎機であれば解決

②については迷信的な部分が大きいと考える。確かに洗うと汚れが出るが、本来は焙煎の過程でチャフと共に剥がれ落ちる部分である。ナチュラル精製やハニー精製の方が落ちる汚れは多い。じゃ、ナチュラル精製の豆はより汚くて害があるのか? というとそうは思わない。
また残留農薬が種子にまで及んでいるとは思わないが、仮に微量が残っていたとしても200℃の高温で焼く過程で無毒化されるだろう。一部の柑橘類のようにポストハーベスト農薬でも使われていない限り、まず安全と考えていいと思う。生豆に直接農薬をかけたり燻蒸したりしたら検疫でひっかかるし、味が変わってバレるはず!

さて問題は③である。一般的には、洗うことでフレーバーは少しぼやけて、穏やかな味になると考えられている。この点は付加価値というより味作りの世界で、好みの問題である。では雑味は減るのか? 誰にとっても雑味はない方がいい。

そこで、洗う手間を掛けることの価値がどれほどあるのか検証してみることにした。
使った生豆は、ブルンジ・ギシャ農園とウガンダ・アフリカンスノーで、両方ともウォッシュト精製のニュークロップである。それぞれ600g分を用意し、水洗い用、そのまま焙煎用に二分する。なお、ブルンジの方は欠点豆が最初からほとんど見当たらないが、ウガンダは通常、300gで20-30粒程度取り除いている。


ブルンジ水洗いの様子

水洗いには回転式の野菜切りを使って、お米を研ぐようにゴシゴシとやる。グルグル回して水を切った後はタオルで残った水分を取り除き、さらに焙煎豆用の冷却機に入れて15分くらい乾かす。

ブルンジ水洗い前後重量

上の写真のように見た目はしっかり乾かしたようでも、やはり10gほどは水分が残っていることが分かる。実は次の点が水洗いのもう一つの大事なポイントで③にも通じる話なのだが、水に漬けることで欠点豆が見つけやすくなるのである。小さな虫食い跡や微かなカビなども色が濃くなり見分けやすくなる。また死に豆はより白っぽく見えるため、これも取り除きやすい。下の写真は水洗い前に取り除けなかった欠点豆である。まぁ実際は残っていても気付くほどのフレーバーのダメージは起こさないレベルの欠点豆ではある。もともと欠点豆の多いウガンダの方がより多く見つかったがそれは当然か。

水洗いで見つかった欠点豆



水洗い効果確認(生豆4種)
<生豆の状態、上段が水洗い無し、下段が水洗い有、見た目にはほとんど差がない>

水洗い効果確認(焙煎豆4種)
<なるべく同じ焙煎プロファイルで焼いて、同じように見える4つの珈琲豆>

ウガンダは排出温度を211℃、ブルンジは213℃で揃えた。両方ともより豆本来のフレーバーが分かりやすいミディアム・ローストである。焙煎プロファイルもなるべく揃えてみたが、熱の入れ方なのか水洗いによる水分含水量なのか、同じ豆なのに1ハゼ開始温度に結構差が出たためDTR値は差が出た。一方与えた熱量であるAUCについてはいずれも157C*min [DE: 160℃から測定開始]前後になるようにしたことで、焙煎指数的にもほぼ同じような値になり見た目のロースト度合いもあまり見分けがつかないと思われる。
Burundi_RoastProfile
<最初に焼いたウガンダ水洗いをBackgroundに薄く表示して、その曲線をなぞっている>

水洗い検証準備完了

さて、これをカッピングして味の差を見ていこうと思うが、僕の家庭焙煎仲間の数名にもサンプル豆を提供してブラインド・カッピングして頂き、先入観のない状態で一緒に比べてもらう予定である。結果はまた近日中にブログにアップする。

CR600で大坊珈琲ライクな焙煎に挑戦!

以前書いた2ハゼなしの長時間焙煎というブログ記事にコメントを頂き、その方には直接お返事させて頂いたが、そういえばこの手の実験はユニオン手廻しロースターの頃は熱心にやっていたけれど、今の焙煎機では試したことがないな、と気付いた。いわゆる大坊珈琲風、どこまでも深い苦味とコクがあり、それでいてキツイ苦味ではなく、むしろ最後には甘味すら感じるコーヒーを急に作ってみたくなり、届いたばかりのブルンジのニュークロップを使って早速トライ。

目標は30分で、ハゼはなるべく穏やかにする、場合によっては起こさない、という方針。1ハゼ温度の194℃に近づいたら、RORをグッと落として、2ハゼ温度の220℃になかなか到達しないように、火力を最小にするだけでなく、ダンパーよろしく豆投入口をときどきパカパカ開けて熱を逃がす手法で写真のような焙煎を行った。

すると実際、1ハゼは起きず、2ハゼもとても穏やかに始まりそのまま長々と続いたが、流石に30分まで引っ張る勇気がなく、25分ほどで排出。なかなかいい感じの黒々とした美味しそうな珈琲豆が出来上がった。RoastLiteの焙煎度チャートと比べてみても、間違いなくフレンチ・イタリアンの世界に到達している。やってみて気付いたのは、Artisanロガーが繋がっていることで、比較的容易にこういった特殊焙煎が出来る、ということだ。大坊氏の本を読むと、焙煎が進むにつれて火力をどんどんと落としていく、すると1ハゼが起きたり起きなかったり、といった説明をしているが、恐らく今回僕がやったような焙煎を温度計なしの手廻し焙煎器ながら職人的な感覚で行っていたのであろう。

ブルンジ大坊風焙煎
<注:グラフをセーブする前にリセットしてしまい、この写真しか残せず>


ブルンジR25
ブルンジ極深煎り

今日、取り合えずV60でいつものようにドリップしてみた。期待どおりの素晴らしい苦味。濃いめに淹れてもストレートで素直に美味しい。大坊珈琲かくありき、という感じ(^^)
一晩立ってもあまり油分が滲出していない点も、過激に植物細胞壁が壊れたりせずに深煎りの世界に到達できたことを物語っている。次は点滴ネルドリップでも淹れてさらに大坊珈琲に近づいてみよう。400gほど焼いたので当分は楽しめそうである。

SCAJ2021参加レポート(焙煎機編)

KAZUHICOFFEEとしてはこれから様々な小型焙煎機について詳しくなっていきたい所存であるが、今回の展示で、特に焙煎容量1.0Kg以下の焙煎機に注目して見て回ったので、得られた情報からなどから考察を試みた。なお、騒々しい会場の中だったので、聞き間違いなどが含まれているがあるかもしれない点、ご容赦頂いたい。


焙煎量:100/200/400g の3段切り替え (投入量はアバウトでよい)

Behmor全体

米国ではGeneCafeと二分して人気のあるBehmorである。手網焙煎の次に進む焙煎機としては手頃な7万円ほどの価格設定で、電源も100V/1350Wと普通のトースターと変わらない点は大変魅力的である。米国の製品であるが、ネスプレッソマシンと同じ中国の工場で作ってコストダウンしているらしい。

まず、このサイズで400gもの焙煎できるのが嬉しい。直火型焙煎機で、熱源はハロゲンヒーター、遠赤外線を利用する。アフターバーナーもついて、よほど深煎りしない限りあまり煙りはでないそうなので、気軽に家庭焙煎をしたい人には打ってつけだろう。

焙煎モードはP1(高地産豆)~P5(低地産豆)の5種類のプリセットのみで、要するに火が入りにくい高地産の豆はゆっくり目に加熱し始めるらしい。色々な焙煎スタイルを楽しみたい向きには、ちょっと物足りないかもしれない。ただしPボタンをダブルクリックすることでマニュアルモードに切り替わり、ドラム回転速度は2段階、火力は5段階に切り替えることが出来るそうなので、多少のカスタマイズは可能そうである。

Behmor操作パネル

なお以前は焙煎ロガーのArtisanにつながるバージョンもあったが、こちらは価格が高くなり過ぎて売れず今はもうないらしい。

販売元のRoast Hutさんによると、6年間で700台ほど売ってきて、ヒーターの故障は皆無だそう。消耗部品は金網で出来ているドラム(6150円)くらい、というメンテナンス・フリーさも焙煎初心者には嬉しい。

Behmorバスケット
Behmorヒーター


Aillio Bullet R1 V2
(代理店: 株式会社ノーザン・コマーシャル)

焙煎量:350g-1Kg

BulletCharge

これが今回の調査の本命、海外の焙煎マニアに超人気の、台湾Aillio社のIH焙煎機である。デンマークデザインのその姿は、夜中にノソノソ歩き出してブーっとでも鳴きそうである。🐷
Bullet左側面

展示はノーザンさんのブースだけでなく、新製品コーナーにも置いてあったり、会場ではとても目立っていた。僕自身、以前に購入しかけたこともあり、今も検討しているので思い入れも深く、もっとも時間を割いて触らせて頂いた。ちなみに今すぐ注文してもデリバリーは来年3月以降とのこと。

まず初日にテスト焙煎させて頂いたが、このときはロガー(専用ソフトRoasTime)が繋がっておらず、投入温度が高過ぎたり、思いどおりの温度上昇が出来なかったりして、ちょっと芯が残った浅煎りになってしまった。翌日再挑戦をお願いしたら、気前よくOKしてくれたので、今度は Aillio社のWebサイトの推奨プロファイルを用意して、これをもとに焙煎したところ狙い通りの焙煎で美味しそうな仕上がりに。持ち帰った豆(恐らくコスタリカ)を翌日試飲してみたらとても美味しく、非の打ち所のない中浅煎りであった。
Bullet焙煎終了2
Bullet_Profile

最新モデルは、排出用フラップの前に飛び出しガードが付いて、最大バッチの焙煎でも冷却ザルに綺麗に落ちるようになった。またフラップにはロック機構付きがつき、片手で開けられないのは少し不便だが、代わりに半開き状態でロック出来るようになり、バッチ間でドラム内を手早く冷やしたいときには便利かもしれない。
Bulletドアロック機構

<良い点>
・単相200Vで1500Wという仕様はありがたい。家庭電源のブレーカーの配線を200Vに切り替えてもらうだけで使える。なお、会場のデモでは昇圧トランスを用いていた。
・専用ロガーは本体と双方向通信しており、火力、ドラム回転数、エアー量を本体でもロガーでも変更できるし、一度プロファイルを決めたら自動運転まで可能である。ただし、豆の排出だけは手で開ける必要があるので、完全自動というわけではない。
・焙煎豆のクーラーが取り外せるため、短時間間隔での連続焙煎が可能。
Bullet電源トランス(200V)


<気になった点>
・デモの時も再三、ロガーの接続が外れたりちょっとしたエラー表示が出たりしていたが、一般的な焙煎機に比べて電装品とソフトウェアに頼る部分が多く、信頼性には多少課題がありそうである。実際、FBグループの書き込みを見ていても、エラーの解決方法を求める投稿が多い。その点で、この焙煎機は使いこなしには多少苦労が伴うと思われる。技術情報の大半はFacebookグループなどで英語でやり取りされており、まさに焙煎マニア向けと言える。
Bullet_RoasTimeプロファイル

ノーザンさんの提示価格は本体39万5千円で、台湾から直輸入するよりは高いが、サポートの安心感を買うなら良い値段だと思う。国産の1Kg程度の焙煎機なら大抵100万円以上するので人気が出るのも当然であろう。

WExSUJI Mini Roaster 100
  (代理店: Yamato56合同会社, yamato56mandheling@gmail.com )

焙煎量:100g

SUJI_全体

写真のようにとても可愛らしいデザインの重さ5Kgのポータブルの直火ドラム型焙煎機で、LPGや都市ガスだけでなく、カセットボンベでも駆動できるところが画期的である。ただし実用的には、ボンベのガスが少なくなると火が消えてしまうので、複数のボンベを連結するガスステーションのような器具が必要となる。
SUJI_コンパクト
SUJI_温度計
SUJI_110V
SUJI_側面排気

内部に実装されている温度計は一つ、調整は火力でのみ、冷却も出来てチャフはちゃんと分離される。ただドラムの隙間が大きめのため、極小豆を投入すると隙間に嵌りこんで、モーターの安全装置が働いて止まってしまうそうである。こうなると分解して取り出す必要があるとか。

価格は約18万円と値頃感がであるが、現在は110V仕様のみで、100V仕様にして安規などをクリアさせる必要があるため、日本国内発売は未定とのことであった。

Stronghold S7X (代理店: 大一電化社 - やまのべ焙煎所)

焙煎量:150g-850g

S7X_全体
S7X_熱くない側面
<触っても熱くない側面>

韓国製のS7X焙煎機はちょっと焙煎機らしからぬ高級感のある形状で、先端的な試みが取り入れてある。基本的には熱風寄りの半熱風焙煎機のようで、熱源が、熱風に加えてハロゲンランプによる輻射熱とドラムヒーターを併用している。直火に近い焙煎、半熱風~熱風焙煎と熱の伝え方のモードを広く変化できることが最大の強みである。一方、調整パラメータの多さは、使いこなしの難しさと抱き合わせで、展示員がデモ焙煎してくれたイルガチェ・ウォッシュトの浅煎りは焙煎直後とはいえ、かなり芯残りした味であった。
S7X_焙煎中

大きさの割に最大バッチサイズで850gと小さめなのも少し物足りない気がするが、自動運転が得意なので、完成されたプロファイルさえ用意出来れば、同じ味わいの焙煎豆を次々と繰り返し作れるので、多品種の高級豆をコマメに少量焙煎ししたいといった用途には便利な焙煎機であろう。焙煎中はハロゲンランプに明るく照らされた珈琲豆が白く光って少し幻想的ですらある。焙煎音もかなり静かで、カフェの片隅などで焙煎するとオシャレかもしれない。
S7X_ハロゲンで光る珈琲豆

また、消煙装置も含んでいるので、店内や住宅街でも大きな工事なしで使えそうなところも有利な点である。ただし、単相220V/5800Wという大電力を用するため、日本で使うには大きなトランス(付属?)が必要で、これを焙煎機の横に置くためのスペースが必要となる。
S7X_焼き上がり
S7X_豆排出

<気になった点>
少し気になったのは、焙煎後は毎日700gの生豆を入れてクリーニングする必要がある、という説明である。恐らくその代わりに、定期的な分解掃除が不要、ということであろうが、700gの豆を廃棄するのはもったいない。同じ生豆を繰り返し使えるか質問してみたが、明確な回答は得られなかった。

予定価格は300万円程度で、実際はもう少し高くなる可能性もあると言っておられた。

PROBAT SAMPLE ROASTER (代理店: DKSHジャパン株式会社)

焙煎量:150-200g
Probat_Drum

SAMPLE ROASTERという名前を製品名として固有名詞化しようとしているところがプロバットが王者たる所以だろう。当然ながらとても頑丈そうな作りで、見た目もそこそこ大きいが、バッチサイズは150-200gとDiscovery焙煎機よりも小さい。ショップ焙煎なら、やはりPROBATINO(1Kg)の方が実用的だと思われる。熱源は基本的に電気であるが、LPG/都市ガス仕様もあるらしい。重さ32Kgは何とか一人でも運べるレベル。
Probatダンパー

伝統の半熱風焙煎機で、サンプルロースターだけあって焙煎中の調整箇所は少ない。基本は自動運転で。専用のモニタリング/ロギングソフトを使いレシピの保存と共有などが充実している。後部のダクト口にはダンパーが一応ついているが、例によって焙煎中は「触らない」ことが基本とのこと。冷却装置は別駆動で、冷却しながら次の焙煎を開始出来るなど、サンプルローストのニーズを完璧に満たしている。

Probatロガー2

仮にこれを家庭焙煎のような用途で使用したらどうか。価格は130万円ほどなので、オー
ディオなどの趣味に数百万円かけるような人であれば十分に射程圏内かもしれない。

CAFE ROSTO SMART700  (代理店: 有限会社センチュリーフレンド)

焙煎量: 700g
ROSTO_Smart700

こちらは実は販売者のセンチュリ・フレンドのオフィスが自宅から徒歩圏にあることが分かって、後日訪問して詳細を説明して頂こうと思い、会場では簡単にしか聞き取らなかった。最大の特徴は、熱源にハロゲンランプを使っていることで、いわば輻射熱焙煎機である。ドラムは普通に回転するのではなく順回転・逆回転とスウィングするそうである。実際には加熱には電熱コイルも併用していると書いてあるので、この方式はなんと呼んでよいのか。

焙煎中も前面パネルでタッチパネルでパラメータを操作できるが、基本は全自動モードで動かす。焙煎を色々試したい、勉強したい、という人にはあまり向いていないかもしれないが、電気だけで動作して、アフターバーナーもついて煙対策もされていることから、まさにショップローストには最適な一台かもしれない。
シリーズには、SMART1500などより大容量な焙煎機もある。

YOSANOロースター (販売: 京都 ヨサノロースター)

焙煎量:300g  (600gバージョンもある)
Yosano_Roaster

コンロに載せて使う手廻し焙煎機の高級版である。ユニオンや富士珈機の手廻しロースターは台座の軸受けをグリスアップしておかなければキーキーと軋み音が発生したりするが、YOSANOのロースターは台座側にもローラーがついており感動的に滑らかに回転する。
この感触は手廻しマニアには堪らないだろう。ドラムにはチタン製とステンレス製がありチタン製の方がずっと高いが、金属の質感を比べると特別感のあるチタン製が欲しくなる。
一番安い300gのステンレス製は66,000円と値頃感があるが、こちらはチタン製のように投入口の取り外しが出来ないため内部清掃ができないようである。僕が愛用してきたユニオンの手廻し(パンチング無)の場合、豆が焦げにくいように内側に金属の筒が入っており、外ドラムと筒の間に大量にチャフが溜まるため、分解しない限りちゃんと清掃出来ない。YOSANO製はこのような内部の筒はなさそうなので、チャフは本体を振るだけで素直に投入・排出口から出てきて問題ないのかもしれない。

五徳部分にも中央にセットしやすいように工夫があったり、オプションのドラム・カバー(16500円)が装着できたり、手廻し焙煎機としてはかなりゴージャスである。4万円ほど足すとさらにモーター駆動装置も買えるが、全部揃えると結構な価格になり、温度計などの計測器がないマニュアル焙煎機としては少々お高いか。ただ、手廻しの感触が堪らなく好き、焙煎中の音や匂いに頼った職人芸を極めたい人には最高の焙煎機の一つだと思われる。

KOGU 珈琲考具ロースター (販売: KOGU)

焙煎量:最大200g程度
KOGU手廻し焙煎器

燕三条生まれのこだわり回転式ロースター『KOGU 珈琲考具ロースター』という触れ込みでMAKUAKEのクラウドファンディングでデビューした焙煎器具である。
KOGU手廻し蓋開閉

大きさ、形状はアウベルクラフト焙煎器と類似しているが、こちらはカゴが金網ではなくパンチング・グリルなので、熱による変形にも強く長く使えそうである。またコンロに安定して置けるように五徳の形状にも工夫がみられる。五徳と本体の間に挟む金網は熱の拡散もするだろうが、 SIセンサー(自動消火)対策とのこと。アウベルクラフトより5000円ほど高いが、その価値は充分にありそうである。
KOGU手廻し五徳

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<番外編>

COFFEE TECH ZEF FZ-94 (代理店:ZEF Coffee Arts)

焙煎量: 100g - 2.4Kg
FZ94全体

イスラエル製のこの焙煎機は僕がカバーしたい範疇としては大き過ぎるが、展示では焙煎ロガーのArtisanが接続されていたので、つい立ち止まって話を聞いてみた。
Z94+Artisan

まず、100gから焙煎出来る、という点が魅力的である。熱源のバーナーは3本あり、それぞれON/OFFしたり火力調整したりできるそうで、これが広いバッチサイズをカバー出来る秘密なのだろう。タイプとしては直火焙煎機とのこと。
FZ94トリプルヒーター

消煙装置部分を除くと150万円(送料30万円)ほどで買えるそうであるが、これが会場特価(半額)の話なのか、通常価格なのかは確認しそびれてしまった。
あと確か、日本ではまだ販売は10台以下だが、台湾、香港、ドバイなどでは人気がある、と言われていたように思う。 
FZ94消煙装置


他に、お馴染みの京都のダイイチデンシさんのNOVOの展示デモもあったが、こちらは以前にも少しレポートしたと思うので割愛したい。従来のNOVO Mark-IIが容量1Kgまで5段階の焙煎度合いであったのに対して、α - Novoという1.5Kg、8段階焙煎のバージョンも用意されたそうである。
SCAJ_NOVO

以上、長いレポートを最後まで見て頂き、どうもありがとうございました。

SCAJ2021参加レポート (全般編)

今年は待ちに待ったSCAJ展示会が2年越しで開催された。開業仕立てのKAZUHICOFFEEとしては当然、全日参加してきたので「全般編」と「焙煎機編」に分けてご報告差し上げたい。

「全般(焙煎機以外)編」

会場は以前の国際展示場から青梅展示棟に変わり、東京テレポート駅の目の前がゲートと、アクセスは格段によくなった。また会場の形も見渡しやすい長方形で、方向音痴の僕にも位置が把握しやすい。
SCAJ入場の列

会場へは体温測定をしてから入場し、登録手続きをすると「体温測定済」のシールをくれるので、自分の職業カテゴリにあったホルダーを選んでシールを貼って入場する。会場は程よい込み具合で大変歩きやすかった。前回の2019年は一気に中国色(雲南コーヒーが一大スポンサーだった)を増していたのが少し気になったが、今回は海外勢はやはり減った感じで、2018年以前のバランスに戻った感がある。とにかく平和なムードが漂っており、会場ではコロナ禍のことなどすっかり忘れてしまっていた。

SCAJコロンビア試飲
<コロンビアブースの試飲コーヒー>

さて、SCAJの大きな楽しみの一つに、高級なコーヒーの試飲がそこかしこで出来ることがあるが、以前のゲイシャ種一辺倒の様相は鳴りを潜めて、今回は様々の産地の様々な精製方法のコーヒーが試せたことは大変勉強になった。流行りのアナエロビック(嫌気発酵)系の発酵コーヒーは、2年前は一つのブースで特殊なコーヒー扱いであったが、今回は当然いろんなブースで提供されていた。ちなみにアナエロ発酵がなぜ強烈なフレーバーを生むかだが、これは嫌気性を好むバクテリアが好気性のバクテリアと異なる、というよりは、密閉容器の発酵で内部圧力が高まり、香りが生豆にしっかり浸透する、ということらしい。このため、わざわざ一度取り除いたミューシレージを発酵時に再度添加したりする。フルッタメルカドンのようにフルーツ酵母とか加えるともう別カテゴリになるような気もする。

毎回前面に陣取って、お馴染みのロバさんマークで雰囲気を盛り上げるコロンビア・ブースでは、今回も日替わりで合計8地域のコーヒーを試飲させてくれた。正直、ウィラ、カウカ、クンディナマルカ以外は初めて聞いた産地名であった。アンケートに答えるともらえるお土産も日替わりで、下記のように段々小さくなっていった。
SCAJコロンビアブースお土産

もちろんコーヒー生豆の方もあちこちで展示販売していて、その地域や精製方法などのバラエティの広さ、広がりを見ることはとても勉強になった。よく見るとコロナ禍でないと思っていたカッピングイベントも多少はやっていて、僕が参加したのはスペシャルティ豆や珈琲器具で有名なDCS、雲南コーヒーを扱うMountain Mover、そして後述のボンタイン珈琲さんの3か所である。

SCAJ_DCS_EthiopiaAboreG1
DCSのこの珈琲は特に印象に残る非の打ち所のないフルーティーさだった。
SCAJ_RoastLebel


SCAJウニールさん
京都ウニールさんのブース

SCAJコーヒービレッジ
コーヒービレッジの様子

SCAJ_OgawaCoffee
天国のように香りのよい小川珈琲のパナマ・デボラ・ニルバーナ。いくらするのかな。

SCAJ_AmazingCoffee
<Amazing Coffee>
ChooChooブレンドというCoE豆を組み合わせたAmazingな内容のブレンドを試飲提供

SCAJ_ロブスタ・アナエロビック
珍品? ロブスタ種珈琲豆のアナエロビック豆

「珈琲ファナティック三神のトークショー」

初日は軽くブースを見回った後、以前から氏の興味深いブログが気になっていたファナティック三神氏のトークショーにまず出席した。
SCAJ_三神氏トーク


最初の話は、焙煎において、SCAカッピング方法を確立させたジョージハウエル(以下GH)式と、CoEを普及させたポール・ソンガー(以下PS)式の違いがどこから来たか、という考察で概要は以下である。

住んでいる場所の違いからくる焙煎スタイルの差。GH氏はマサチューセッツのアクトンでここは意外と湿度が高いこと。一方、PS氏の方はスポーツ選手の高地トレーニングで有名なコロラドのボールダーに住んでおり、ここの標高はコーヒー産地並みの1600m以上で、気圧が0.8気圧ほどで湿度も低い。

水は熱しにくく冷めにくい性質があることから、湿度が高いマサチューセッツでは豆温度が上がりにくく、いきなり火力を上げても豆の表面だけが焦げるので、最初は弱火で、水抜きフェーズが終わったら強火にして、1ハゼ後の発熱反応に入ってからは逆に熱暴走状態にならないように早めに火力を落とす、という手法が理にかなっている。

一方でボールダーは乾燥していて酸素濃度も低いため、そもそも火力が上がりにくいために十分に高い温度の予熱が重要になる。PS氏の主張する最適なボトム(中点温度/TP)は110℃だとかで、バッチサイズが焙煎機のキャパ一杯の場合などは焙煎機の温度計などが壊れてしまうほど高温にせねばならないなど非常に困難な命題である。ガンと熱を入れた後は、一定のテンションで出来るだけRoR一定でまっすぐに焙煎する、というのがPS氏の方式である。こちらもその地域の特性と合致している、というわけである。

話はさらに夏場・冬場の焙煎に展開して、夏冬の温度差による影響は高温で焙煎することを考えればさほど問題ではなく、むしろ夏場の湿度の方が問題である、という話であった。同じ条件であれば温度の上がりにくい夏の方が焙煎に時間がかかるので、三神氏は以下のような工夫をされているそうである。


・投入量を少なく
・ガス圧を上げる
・焙煎を若干浅めに切り上げることで重くなり過ぎないようにする

次は抽出の話で、氏の定義では「甘味、酸味、苦味、フレーバー、質感といったテイスト成分を水へ移動させること」となる。この場合、同時に移動するわけではなく、酸味、塩味が最初に、次に甘味、最後に苦味が抽出されるため、濃度を示すTDS(Total Dissolved Solution)や抽出率(Extraction Yield)の値が同じでも味わいは同じとは限らない。特にメッシュを細かくすると抽出率は上がるが、味も大きく変わってしまう。氏は酸味、甘み、苦味などのバランスや明確さを示す指標として、Definition of Flavor Structure (フレーバーの明確さ)という造語を挙げていた。またAtagoなどの濃度計は温度が低いとTDSが大きくなるなど、なかなか正確に測れるものではない。そもそもSCAの定める抽出のGolden Cup Standardが最適なのか、という問題定義もされていた。ちなみに氏の提供しているコーヒーはTDS/EYなどの値はチャート外(薄い)だそうである。
SCAA_brew_chart-847x1024

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<利き珈琲選手権参加>

2日目は午後一にSCAJコーヒーマイスター・アンバサダー就任式というイベントがあり、続けて開催の「利き珈琲選手権」に僕も出場することになっていたので、午前中はなるべくインパクトの強いコーヒーの試飲は控えて、なんとなく準備していた。
SCAJコーヒーマイスター・アンバサダー就任

初代コーヒーアンバサダーに就任したAMAZING COFFEEプロデュースのExile TETSUYA氏のスピーチを聞いた後はいよいよ利き珈琲選手権。出場は23人で一回戦は4種類のコーヒーをカッピングして産地と精製方法を選択肢から当てる、というもの。僕は2問正解して準決勝進出。次の問題はベトナム・ナチュラルかブラジル・ナチュラルかで迷って土壇場で後者を選んだらベトナムの方が正解で残念ながらここで敗退。残った2名が決勝を争う形であったが、決勝問題は僕の得意なエチオピア・ナチュラルだったので、もしかしたら自分が「2021年コーヒーマイスター利き珈琲王」になれたかも、という考えが少し過ったが、まぁ世の中そんなに甘くはないね(^^; でも可能であれば来年も出たいな。
SCAJ利き珈琲選手権準備中
SCAJ利き珈琲選手権一回戦
<利き珈琲選手権、第一問>


<コマンダンテ・チャレンジ参加>
ボンタイン珈琲のイベント。これは初日に通りかかったら楽しそうに見えたので、予約して最終日の朝一番に参加させてもらった。9種類のコーヒーをまずブラインドカッピングして、選んだ番号の豆を切れ味抜群のコマンダンテのミルでさらさらと挽いて、さらに好きな抽出方法を選んで実際にコーヒーを淹れる、というものであった。僕は味覚レンジの広いリッチなブレンドを作るべく浅煎り・深煎り・スパイシーの3種類(3,5,8番)を選んでブレンドして、エアロプレスのダブル・ペーパーフィルターで抽出してみたが、とても美味しく出来てちょっと嬉しかった。あとで種明かしの銘柄を確認したら、レッドハニー、アナエロビコ、ナチュラル精製という組み合わせであった。参加賞もコマンダンテの珈琲粉保存ビンと、コスタリカ・ゲイシャ豆他3つのスペシャルティ豆と、とても豪華で感動! ボンタイン珈琲さん、どうもありがとうございます(^.^)

SCAJ_コマンダンテ・チャレンジ


<その他、今回気になったもの>


豆を挽きながら風でチャフを飛ばして分離してくれるというアイデアもの。味わいが異なるように挽ける2種類のブレードがついて、一分間に700gも挽けるそうで、約50万円はそんなに高くないかも。いつか欲しいな。

2. ハンドミル

僕も使っているZpro/Q2のPlusmotionが今回は結構大きめのブースを出していて、日本仕様のフラッグシップモデル JPPROを盛んにデモしていた。Zproのヒヤッとした触り心地に対して、握ったときの木のぬくもりが気持ち良い。容量も35-40gに増えて実用性が向上している。ハンドルの形状はコマンダンテのものに似てきている。やはり三角形の形状の方がよいのか。

他には使いやすそうなカフラーノ社KRINDERや、KIGUVariaというとても高級感のあるミルもあった。あとドイツのZassenHausが各種ミルをデモ展示していて、以前ここのトルコミルを使ってた僕としては懐かしやと思っていたら、後で知ったのだが、ここの新製品Barista Proというミルはタイムモア社の製品と酷似しており揉めているらしい。そいう言えばいつもは目につくタイムモア製品の展示が今回は見当たらなかったような。
SCAJ_トルコ式ミル

3. 生豆のAIハンドピック (Rutilea)

機械学習で虫食いなどの欠点豆を自動で見つけようとするもの。まだ実用化には至っていないようであるが、日々ハンドピックに時間を割いている者にとっては面白い試みだと思った。

SCAJ_AI欠点豆除去

4.珈琲豆のサブスク (PostCoffee)

珈琲豆のサブスクで有名な米国Angel's Cupとよく似たビジネスモデルのPostCoffeeは、何が届くか分からないサブスクと異なり、展示会場では好きなものを3つ選んで同じ箱に入れたものを売っていた。


5. 高濃度アルカリ電解水 (株式会社コアベース - info@corebase.co.jp)

pH13.2の高濃度アルカリ電解水のスプレーをコーヒー粉にかけると、あっと言う間にコーヒーオイルが水に染み出す、というデモをやっていた。普通の洗剤ではなかなか落ちなくて困っていた焙煎機のコーヒー汚れが簡単に溶けて落ちる、らしい。しかも元が水なので拭き取らなくても無害、というのがミソ。個人的にはこれは耳寄り情報であった。ちなみにダイソーでお馴染みの激落ちくんスプレーは濃度は薄いが、ある程度は落ちるらしいので、こちらもやってみようと思う。

長々と書いてしまったが、珈琲業界の人だけでなく、珈琲好きにも楽しく大変勉強になる夢のような3日間である。来年も万難を排して参加したいが、いつかは自分も小さなブースを持ってみたいな、と遥かな夢を思ってみたりする。

JCQAコーヒーインストラクター1級 ~ 合格最低点 80/80 をクリアするために

やったぜ、コーヒーインストラクター1級合格! 

インストラクター1級合格

ということで!
同じ道を目指す方に多少なりともお役に立てればという気持ちでこの記事を書きます。
個別質問も歓迎です。

<全般の話>

教科書(4000円)自体は2級受験で入手しているはずなので、さほど厚くない一冊の中に2級・1級・鑑定士までの内容を含むことはご存じであろう。この教科書、初めて手にするとまず、これだけ? 簡単そう!と思うだろう。コーヒーマイスターの試験範囲の広さに比べて、まさに狭く深く、の世界である。1級の範囲は2級の2倍ほどの分量で約45ページであるが、当然2級も試験範囲に含まれるので実際の試験範囲は3倍で、各項目の理解の深さは2-3倍を求められるので、単純計算すると勉強量は2級の6-9倍である。2級はマークシートのみで、うろ覚えでも回答可能であるが、1級の問題は半数以上が記述式なので文章力も求められる。僕は記述に使いそうな用語の漢字をリストアップして直前に復習したりもした。(誤字は不正解となるらしい)

2級試験にも一応カッピングはあるが、こちらは確か1問だけでアラビカとロブスタ、みたいな一度飲めば誰でも判別可能なものであるが、1級は産地別、格付け別、欠点豆混入、それに生豆外見判別、そして混ざった2種類の豆の配合比率を当てる、といった問題が出る。ロブの見分けは簡単でも、ブラジル、グアテマラ・コロンビアを見分けるのは至難の業である。さすがにグアテマラ・コロンビアのMIXは出ないと思われるが、今回はブラジル・コロンビア(グアテマラかも?)の配合分析が出て、2:2, 1:3, 3:1のどれかを当てるというものが出て、試験後には結構自信があったのだが結局落としてしまった。ブラジルの配分量が明らかに少ないと思ったのであるが、もしかするとコロンビアとグアテマラの判別を間違えたのかもしれない。

<事前講習会>
JCQA事前講習会

この講習は必修とされるが、そもそもこれを受けずに実技試験に合格するのは相当困難であろう。

(1) 学科講習
・3人の講師が教科書を元に重要箇所をどんどんと説明していくが、盛り沢山な内容を早口で説明する講師もおり、集中して速記のようなメモを取らざるを得ない。このためにも、やはり事前に自分で教科書の内容を何度も読み返しておく必要がある。

・講義の中でも講師が強調するが、重要なことは、文字通り暗記するのではなく、なぜその方法なのか、などの理由が説明できるようにすることである。唯一、講師に直接質問が出来る機会なので、出来れば事前に質問を用意して臨みたい。


(2) 実技講習
JCQA-実技研修

・実技講習は想像以上に楽しく、これなしでは絶対に合格はできないと思われる。同じコロンビア・グアテマラといった国の豆でも、産地や焙煎方法で大きく味が異なるわけであるが、試験用はいわばその国の「標準米」のような検体を使っており、典型的な品質(欠点豆混入)、産地(恐らくミックス)、精製方法の豆を、ハンドピックせずに中煎りに仕上げてある。例えば同じブラジルでも、Type2, Type4/5という豆を見分けなければならない。繰り返しになるが、焙煎前の「欠点豆のハンドピックはしていない」のである。⇒ ★これがヒントになることも★

・講習で使う検体は毎回かなり残り、結果的に大量の検体をお土産に頂くことになる。これを冷凍庫に保存しておき、試験直前に集中してカッピング練習することになる。

JCQA検体お土産

・大半の人にとっての産地別カッピングの最難関は、グアテマラHBとコロンビアUGQの区別だと思う。実に似ているのである。僕の考えた見分け方は以下のとおり。

- ブレイクから3-5分の冷めたところで飲むと、コロンビアは気持ち酸味が強く、かつ酢酸のような単純な酸を感じるのに対して、グアテマラは微かに甘味があったり、後味に柑橘系の酸味を感じる瞬間がある。ただし5分以上経過すると、むしろグアテマラHBの方が酸味がきつく感じるようになり大変混乱する。よって、ガテ・コロ判断はブレイクからの最初の5分で行って、その後は迷わない(カッピングしない)ことをお勧めする。

- 焙煎豆自体はグアテマラの方が硬く締っており、粉にした時の色は微かに明るい。お湯を注ぐ前の粉の色や香りを集中して観察するとグアテマラの見当がつく可能性がある。自分でカッピング練習していたときは、水色(すいしょく)が他の検体に比べてオレンジがかって見える時があった。

あとは練習あるのみ。
合格のためには直前の集中カッピング練習は必須!

特に産地別カッピングを落とさないように、かなりみっちりやる必要がある。
検体のグアテマラHB, コロンビアUGQの区別はかなり困難であるが、出題率はかなり高いし、落とせない問題なので、僕はガテx3、コロx3の6検体を用意してカッピングで全部正解する練習まで行った。欠点豆混入の検出に関して言えば、ブラジルType2とブラジル欠点豆混入は、少し低地産特有の甘みが感じられるType.4/5との区別より難しい。恐らく Type2の豆に未成熟豆を後からパラパラと混入させているものと思われる。

JCQAカッピング練習1
JCQAカッピング練習1
JCQAカッピング練習2
JCQAカッピング(珈琲豆準備)
JCQAカッピング練習3

配合分析の練習? (実はカッピング準備中に複数の豆を床にバラまいてしまったついでに練習)
JCQA-配合分析練習

<試験本番>
(3) 学科試験
僕は窓際の席だったのでときおり外の景色を楽しんでいた。
京阪神会場(灘)のビルから望む景色は天気が良いと、六甲山系の山々を遠くに仰ぎ、なかなか気持ちが良い。
JCQA京阪神会場

試験の方は、筆記量が多く、丁寧に書いていると後半に時間が足りなくなって焦ることになるので、最初から頭をフル回転させてどんどん記述していくこと。僕は残り15分で思ったより記述問題が残っていることに気付き、最後は本当に夢中で記述回答していってギリギリで全問回答したが、前半の後で見直そうとしていた問題に戻る時間がなく、実際その問題を落としていたことに試験直後の確認で気付いてしまった。例えば、「安定したコーヒーの淹れ方について3つアドバイスをせよ」という問題では、条件に「同じ店から粉で買って」とか、「注ぎ方のルール以外に」とあり、注ぎ方のルールって、どこまで含むのよ、ととても悩ましい。このような設問自体に理解を要する問題が多々見られる。

出題されていた問題(記憶にあるもの)

- シェードツリーの役割
- ドリップで2倍量を淹れたときの濃さ
- プレミックスのメリット・デメリット
- ブレンドの定義 (生豆換算で30%以上~)
- 精選方式の説明(パルプドナチュラル、スマトラ)
- 5種類の選別の順番
- 粗選別で取り除くもの
- コーヒー飲料の定義
- エチオピア、ブラジルの中の産地の位置
- スクリーン選別のいで標高を使わない理由
- 欠点豆のみ、SHG等の格付けを使う国
- 特定銘柄
- 香気物質の前駆体3つ
- 包装方法のポイント3つ
- 比重の低い豆、商品価値の低い豆の定義
- 伝熱の種類3つ
- 種子以外の繁殖方法
- ドリップの味を安定させるためのアドバイス(最後の問題で難問だった)
- ベリーボーラー、さび病の説明

(4) 実技試験

・問題毎に検体を準備するので、全般にゆったりしており、各問題の時間もたっぷりあるので慌てる場面はない。ただし、冷めすぎると分かりにくくなるものもあり、時間は15分などと与えられても、最初の5分で判別を終えたい。特にロブスタが出たときは要注意。匂いだけでも判別できるので、少量を1回だけカッピングして、AP-1かWIBかを確認する程度で充分である。いつまでも雑味の多いコーヒーをカッピングしていたら舌が麻痺して次の検体の判別が難しくなる

・今回の出題は同一産地の格付け違いを判別する問題が2問。ロブスタ2種とブラジル2種だったかな。産地別は、最難関のガテ・コロ判別が出題されたが、粉の時からよく観察して、微かな柑橘フレーバーを感じたので自信を持って判別。もちろん正解だった。この問題を落とすと合格は厳しくなる。
・欠点豆はリオ臭が出た。これは講習会で経験しており、お湯をかけた瞬間の匂いでカッピングせずとも判別できる。漂白剤の匂いがすればリオ臭である。

・焙煎豆の外見だけで8種類の豆を当てる問題。選択肢はブラジル Type2, Type4/5, コロンビアUGQ, スプレモ、エチオピア、グアテマラHB, インドネシアロブスタ AP-1, WIBの8種類であった。まずロブスタ2つは匂いと形で容易に判別。クェーカー(薄い色の豆)が多い方が低い格付けのAP-1, 整っている方がWIB。ブラジル2種はまず形とセンターカットの色で判別して、小さい豆が多く色むらの多い方がType4/5とする。グアテマラは色が微かに薄く一番硬そうに見える。スクリーン選別がないので豆の大きさが不揃い。エチオピアは香りとセンターカットの茶色で判断。検体のものは豆の大小の差や欠点豆も多い。残りはコロンビアの2種だが、8種類の中で一番、大粒でハンサムなのがスプレモ、他方がUGQ。センターカットがS字にカーブしているものが混じっているとは限らないので、UGQとグアテマラHGとの判別は要注意である。コロンビアがコロっとしており、かつピーベリーの混入が多いのに対して、グアテマラは平たいイメージで皺が多く硬そうに見える。集中して観察すればそう見える。自分の直感を信じよう!

・配合分析は試験時間が一番長いが、まじめにやると意外と試験時間一杯かかる。1問めはロブスタとアラビカの区別で比較的容易。2問目はアラビカ同士であるが、こちらはかなり困難で、実際僕もこの問題は落としてしまった。

ご参考までに比較的紛らわしい検体の一部を写真に掲載する。

検体-グアテマラEPW
検体-グアテマラSHB
検体-コロンビアUGQ
検体-ブラジルNo5
検体-ブラジルNo2


付録:カッピングのコツ(KazuhiCoffee版)

・持参の水は多めに持ち込み、試験中には使わせてくれなくても中間の休憩時間に舌を休めるのに使ったり、試験スタッフが注いでくれる水が少なければ開始前に足して、カップになみなみと入れておく。

・カッピングスプーンをコーヒー液に漬けたら、水で洗う前に、吐き出しカップの中でよく振って水滴を落として、さらにキッチンペーパーの上で粉をよく叩き落としてから、洗うことで、限られた洗い水をなるべく汚さないように気を付ける。これ重要。カッピングの上手下手は、洗い水やキッチンペーパーの汚れ方で分かる、と心得よ!

・毎回安定して風味を感じるような啜り方をするのは難しい。そこで編み出したのが、一つの検体を3回連続で啜る、という方法。ズズッ、ペッ、ズズッ、ペッ、ズズッ、ペッ、とリズムよく少な目にすすると、上手くフレーバーが取れる瞬間がある。ただし、この方法は各検体一回限りの秘策と考えた方が良い。過ぎたるは及ばずが如し、というやつで、何度もカッピングすると舌が麻痺してきて、むしろ混乱する。実技試験は結構長丁場である。

合格最低点: 実技80点、学科80点

以上、長々と書いてしまったことご容赦願いたい。僕の場合は幸いにして、ギリギリとはいえ一発合格できたが、2級受験のとき事前講座を担当してくれた自家焙煎珈琲豆の店を経営するT講師は、「自分は3回落ちた」と言っておられたので油断はできない。


なお、不合格の場合は約4か月後に再試験を無料で受験できるとのこと。

ここまで読んで頂いた方の合格を心からお祈りいたします!

自宅焙煎に適した焙煎器具に関する考察


さて、珈琲焙煎を初めて経験された方は、思ったより簡単、という感想を持つだろう。取り合えず焙煎豆を立派な姿にしたければ、ただ焦さないことだけを考えて、弱火で長時間かけて深く煎ればいい。しかしそこがちょっとした罠で、コーヒー液にしたときの味が美味しいかどうかはまた別の話なのである。そこで自宅で行う焙煎に使う小型の焙煎器具を選ぶ際のポイントを確認したい。

今や焙煎器具や焙煎機の種類はとても増えて玉石混交状態であるが、選択基準は以下のとおりである。

・焙煎したいバッチサイズ
・連続焙煎したいか、それともせいぜい1日1回程度の焙煎か? (信頼性)
・どれぐらい手間をかけたいか、あるいはどれぐらい美味しさを追求したいか?
・焙煎の再現性にこだわるか? (温度計によるプロファイル監視が必須)
・深煎り傾向が好きか、浅煎り傾向が好きか

浅煎りが好きなら熱風式の方が簡単、大坊珈琲のような漆黒の焙煎豆を作りたいならドラム式の手廻し焙煎機などがいい。テクニック次第でなんでも可能なのが手網焙煎。しかしこれは体力がいる。あとはハマ珈琲さんが有名にした片手鍋焙煎、際物の電子レンジ焙煎やヒートガン焙煎、エチオピアの伝統的なフライパン焙煎など実に様々な焙煎方法がある。

そして最も肝心なのが予算で、国産のちゃんとした焙煎機は個人にはおいそれと手が出ない価格のものばかりであるが、中国・台湾・韓国などから輸入するのであれば、10~30万円程でなかなかいいものがある。但しサポート面は未知数で、もし故障したら自分で直す覚悟が必要であろう。

熱源は電気が簡単であるが大きめのバッチではカロリー不足。ガスはカセットコンロは不経済で、キッチンの都市ガスは便利だが、奥さん次第。小型LPGボンベは充填してくれる業者がなかなか見つからない。電気式で1番簡単なのは、フレッシュローストSR500/SR800などの熱風で撹拌する方式であろう。

焙煎の奥深さや、楽しさ、精妙さなどを追求したければ、やはりドラム式が面白い。その際大事なのは熱電対温度計が取り付けられるものを選ぶことである。これなら頑張れば Artisanという焙煎ソフトが使えて、プロファイルをリアルタイムで目視したり、ログを残したりできるので、再現性を追求したり、味との相関を研究したりする面白さが出てくる。
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さて、以前にも僕が使っている焙煎器具については何度か紹介してきたが、改めて自分の経験を振り返ってみたい。

1. 1990年代

会社員になって早々に、職場の先輩の影響で珈琲焙煎に目覚めて、その頃は主に南蛮屋本店で買った「いるいる」というホウロクを使って焙煎していた。今もこのホウロク型は、多少の改良など加えたものが数種類売られていますが基本構造は同じで、容量は50g程度、持ち手が筒状で陶器製の本体に生豆を入れてガスコンロの上で振りながら焙煎して、ここぞというところで持ち手の穴から豆を取り出すものです。焙煎中、持ち手は相当に熱くなり、軍手では耐えられず、東急ハンズで革製の分厚い手袋を買ったものでした。説明では3分ほどで焙煎出来る、と書いてありますが、それは誇張で、実際には10分前後かけて煎らないと、煎りムラが酷いことになります。
いるいる
数年後に、当時生豆を買っていた珈琲問屋・天王町店の店頭で電気式焙煎機を見つけて、衝動買いしたのが、今は説明書しか残っていないこの焙煎機で、これは大変な代物であった。細い棒をグルグル回すだけの攪拌では豆は回転せず、かつ縁の方はほとんど動かないため、そのままでは見事なムラムラ焙煎。仕方がないので、焙煎中は機械ごと持ち上げて、ゆさゆさ揺すりながら焙煎していた。さらにサーモスタットで浅い焙煎のまま自動排出されてしまうのを防ぐために、熱検出回路は殺して、代わりに針金で引っ張って好きなタイミングで排出出来るように改造。でもこの焙煎機、どうやっても美味しい珈琲は焼けなかったなぁ。でも懐かしい。。
ファインロースター


2. 2000年前後

相変わらず時々「いるいる」を使っていたが、1998年に仕事関係で英国に赴任になり、生豆が入手できなくなると思い、珈琲問屋で買い込んだ生豆を大量に船便に潜り込ませて英国に持ち込んだ。しかし当時の英国のコーヒーはあまりに悲惨さで、結局、英国にいた6年間はひたすら紅茶を飲んでいた。僕にとっての珈琲暗黒時代である (^^) 
2000年を過ぎてやっとロンドンなどにスタバが出来始めて、後半の3年ほどはスタバでだけ珈琲豆を買って、必ずカプチーノにして飲んでいたものであった。

3. 2010年代

日本に戻ってからの数年は仕事も忙しく、ほとんど焙煎のことは忘れていたが、横浜・本牧珈琲の珈琲豆だけは欠かさず買って、家でも職場でもそれなりに美味しい珈琲を飲んでいた。妻と二人で毎週かなりの量のコーヒーを飲むため、定期的に来る30%OFFセールのときには、一気に3Kgくらい買って冷凍保存したものであった。

2010年後半になり、有名・無名の珈琲店巡りをしまくっていたら、また無性に珈琲焙煎がしたくなり、目を付けたのが手廻し焙煎機、ユニオン・サンプルロースター(パンチング無)である。この焙煎機については何度も紹介してきたので詳細は割愛するが、超単純な構造は故障と無縁で、今のメイン機を買うまで、少しずつ改良しながら毎週ひたすらこれで焙煎してきた。パンチング有りのタイプもあるが、キッチンで焙煎するならお薦めは無しの方である。理由はチャフが飛び散らないから。僕もずっとキッチンで焙煎していたが、煙りはさておき、チャフは焙煎機の中に留まるので意外と散らからなかった。このタイプは燻り臭が付きやすい、という話もあるが、実際は気になるほどではなく、周りの人達にも美味しいと好評でした。一度に400-500gを焙煎したいのであれば今でも最有力候補であろう。ただ、外でやるなら風対策は必須である。また、炎が焙煎機の外にはみ出すため熱効率は著しく悪く、カセットコンロだと燃料費が嵩むのが難点である。
青空焙煎キット


2010年代の最後にはGeneCafeという完全熱風式焙煎機をまたも珈琲問屋で購入。これは温度ダイヤルやタイマーを合わせたらあとはお任せ自動焙煎も可能なものだが、実際には回転する豆をじっと観察しながら、ここぞというタイミングで強制排出ボタンを押して煎り加減を選ぶ必要がある。浅煎りも得意で比較的綺麗に焼けるが、ハゼ音がほとんど聞こえないことと、連続焙煎が出来ないことが難点だ。また、日本の100Vでは火力不足気味で、マニュアル通りにやると、加熱に時間がかかり過ぎて豆が乾燥し過ぎて美味しく焼けない。美味しく焼くには空焼き「予熱」が必須である。ヒーターの寿命が縮むという人もいるが、そんなこと言っていられない。
GeneCafe焙煎機


4. 2020年~現在

今年の2月に10か月待ちでついに届いたのが今のメイン機、Cormorant CR600、英国製クラフト焙煎機である。これも何回か紹介してきたので詳細は割愛。およそ基本機能は全て備わった半熱風式の小型焙煎機である。一度これを使い始めると、もう手廻し焙煎機には戻れない!
Cormorant焙煎機


さらに少し前にMakuakeで買ったのがサンプル焙煎用のSandBox Smart 焙煎機であるが、これはなかなか絶妙に焙煎してくれる一方で、焙煎中の豆が見えず、プロファイルの調整はかなり難しい。
SandBox焙煎機

なお、この焙煎機に付属してきた下記の冷却装置は、浅煎りなどどうしても残ったチャフも綺麗に分離してくれる構造になっており大変重宝している。
冷却装置


その他、下記のような手網焙煎器具を時々使うが、なかでも「煎り上手」は誰でもとても綺麗に焼けるので、僕は初めての人にはいつもこれを勧めてきた。ただし説明書にあるような3分では焼けないのは「いるいる」と同様である。ちゃんとやるなら、少し予熱もした上で、10分前後かけて焙煎したい。

手網焙煎器具


最後に Dr.MAHN(上記写真の左端)という上部が開いた手網焙煎器具であるが、これの利点は焙煎中に豆の一部取り出すのが容易という点で、一度の焙煎で複数の焙煎度合いの珈琲豆を作るには大変便利である。僕が焙煎教室をやるときには、100gの生豆を投入して、同じ生豆から浅煎り、中煎り、深煎り(or 中深煎り)を約30gずつ一度に作って、生徒さんに味を比べてもらったりしている。



珈琲豆のネット販売、パッケージング

珈琲豆の自宅焙煎はちょっとしたブームになっており、ある程度、経験を積んで自信が付くと、まず身内や友人など周りにプレゼントしたくなり、その次にネット販売でもしてみるか、と考えるのは誰もが辿る道である。僕もご多分に漏れず KazuhiCoffeeという店名で珈琲豆の販売を開始したわけであるが、さてここで早速いくつかの課題にぶつかる。

①販売サイト作りと宣伝
②適切な生豆の入手と在庫管理
③売れた後のパッケージングの大変さ

この中で思った以上に大変なのが③であり、実際どのような手順になるか写真で説明してみたい。

今回は例として「エチオピア・イルガチェフェのナチュラル・ウォッシュトの飲み比べセット」を用意してみる。

(1) 生豆の準備
パッケージ準備(生豆)

(2) ハンドピックによる欠点豆除去
拡大鏡やブラックライトなどを駆使してきっちり手を抜かずにやるが、最初から綺麗な生豆を選ぶことが肝心である。うっかり安い豆を使うと、やたらと手間がかかる可能性があるので要注意。
パッケージ(ハンドピック)

(3) 焙煎
生豆は焙煎すると重さが15-20%減ってしまうので、225gの焙煎豆を作るためには余裕を見て300g程度の生豆を用意しておく必要がある。店頭で焙煎して販売する店は、この管理が大変なので、ほとんどが「生豆の重さ」で販売している。つまり200g買ったつもりが、170gなどとなってしまう。
僕はこのステップを、CR600 + Artisanを使って、狙った焙煎度、味を作ることで差別化したい。
パッケージ(焙煎中)

(4) パッケージの準備
パッケージ準備1

(5) 焙煎豆の計量
225gぴったり計量する。それ以下だと問題だし、それ以上入れると袋が膨らみ過ぎてクリックポストで送れなくなる懸念がある。
パッケージ(計量)

(6)袋詰めとシール、ラベル
パッケージ(シール)

(7)完成したパッケージの箱詰め
パッケージ表裏面


ここまで来たら、あとは宛先ラベルを印刷して貼って、テープで封印したらポストに投函するだけ。
パッケージ完成


これだけやって売り上げは2000円ちょっと。楽じゃないね。(^.^)
皆さまに美味しい珈琲を飲んで頂きたい一心で今日も頑張っております!

CR600のメインテナンス、故障履歴について

CR600アップ白黒
ちょっと長い記事となるが、CR600のメンテナンスについて説明を試みたい。
以前使っていた手廻し焙煎機は当然ながら故障とは無縁であり、メンテと言えば蓋を開けて中にたまったチャフを捨てるだけであった。そのため正直なところ本格的な焙煎機がこんなに手が掛かるとは想定していなかった。 1バッチが600gなのでチャフの発生量もかなり多く、チャフ受けに全て入ってくれればいいのであるが、実際には内部にかなり溜まり、これは蓋を開けて清掃する以外に方法がない。FBのユーザーグループの書き込みを見ると、どうやらメンテを怠っているとドラムからの排気口が詰まって、最悪、相当なところまでバラさなければ復旧できない状況になるらしいので、僕は週1で清掃するように心がけている。

★★★【清掃メンテナンス】★★★
〇ステップ1:ホッパーと豆受けのボウル取り除いて、電源も外してから焙煎機をひっくり返す。
       結構重いのでドスンとならないように慎重に!
CR600メンテ開始


〇ステップ2:手前の足2つを外し、裏蓋のネジ4つも外して、裏蓋を開ける。

CR600ボトム

〇ステップ3:掃除機と刷毛で丁寧に溜まっているチャフを取り除く。

CR600清掃
CR600清掃前後

〇ステップ4:元通り蓋をして、PhidgetのUSBケーブルを挿してから慎重に焙煎機を起こす。
〇ステップ5:電源を繋いで、ファン、ドラムのつまみを回して動作に問題がないことを確認する。

あとは排気ダクトにブロワーの空気を送り込んで内部のチャフや煤を飛ばして清掃しておしまい。
CR600ダクト清掃

以上。

次は、ついでに今までの故障歴についても紹介したい。

★★★【故障その1:初期不良(排気FANの割れ)】★★★
CR600FAN交換前


少し間抜けな話だが、使い始めて3か月ほど経ってやっと、時々生じる異音が気になって、よく観察していたら、なんと排気FANの1つにクラックが走っていることを発見。どうやら輸送中の衝撃で力が掛かった様子。初期不良である。早速、Cormorant社のJohanに連絡したら直ぐに新しいFANを送ってくれるとの返事。安心して待つこと2週間ほどでモノが届いた。もちろんすべて無償。
メンテマニュアルとか何もないが、交換はさほど難しくなく、取り合えず2連結されたFANを外して無事交換完了。修理後の確認でも問題なし。良かった!
CR600FAN交換中

★★★【故障その2:点火確認用の熱電対の故障】★★★

FAN交換後の最初の焙煎テストは問題なかったので安心していたら、なんと翌日から何かおかしい。火がなかなか点かず、しかもすぐ消えてしまうのである。そうこうしているうちに、どうやっても点火はしてもガスが直ぐに遮断されてしまい焙煎不能になってしまった。ユーザグループの情報を見ていると、どうやらこれはちょっとした傾向不良のようで、点火成功を検出する熱電対の故障であることが分かった。再びJohanに連絡。この時は焙煎出来ないという緊急事態であったため、インターネットフォンで国際電話して必死で状況を伝えたら、交換パーツを無償で送ってくれること、及び暫定対応方法を伝授してくれた。つまり熱電対の起電力を乾電池で置き換える、という方法であった。

結局この状態で1か月ほど使うことになったのであるが、回路のインピーダンスが相当に低いのか、新品のアルカリ乾電池がみるみるなくなる。接続しっぱなしだとモノの30分も持たず、ON/OFFスイッチを追加する必要があった。一度試しにニッケル水素電池(1.2v)を繋いでみたら、直ぐに駄目になったので訝って確認したら、なんと高熱でパッケージが溶けてしまっていた。要するにNiMHは内部抵抗が低いために、乾電池の時以上に大電流が流れてしまい加熱したらしい。

さて待つこと1か月余り、やっと届いた熱電対の取り付けはそれほど容易ではなかったが、とにもかくにも交換は終了し、恐る恐る点火してみると、もうガスが勝手に消えることはなく安定していることを確認して一安心。

今回はドラム部分まで外して行う大手術(というほどでもないが^^;)
CR600熱電対交換1
CR600熱電対交換1アップ


CR600熱電対交換2
CR600熱電対交換3


結局、その後は今後のことも考えて排気ダクト、熱電対スペア、排気ファン、制御ボードなどをまとめて購入。Johanの好意でほとんど原価だと思われる合計1万円ほどであった。

最後に、Artisanなどの焙煎制御ソフトを使うための熱電対温度計についても少し紹介しておきたいと思う。この焙煎機は内蔵温度計があるので、Artisanなしでも焙煎可能であるが、やはりArtisanが使えるのと使えないのでは焙煎の面白さ、再現性などで段違いの差が出るので、まずは必須アイテム(オプション)と考えたい。裏返すと 熱電対からの出力をUSBに変換するPhidgetボードと、2入力を1つにまとめるViNTハブが見える。取り付けも粘着テープとマジックテープという簡便さ。これらは別に他にも同じことが出来るボードがあれば置き換えが出来る。しかしArtisanがサポートしている変換ボードでなければならないため、結局はこの組み合わせを選ぶことになるであろう。
CR600 Phidgetモジュール

焙煎珈琲豆の販売開始!

突然ですが、本日より焙煎珈琲豆のネット販売を開始致します。
皆さまのご注文、お待ちしております。

Baseサイトでの販売

Kazuhi Coffee | KazhiCoffee


ホームページの方はまだまだ完成度が低いですが、焙煎した珈琲豆の品質には自信があります。

どうぞよろしくお願いいたします。


カフェレスジャパン2021

少し前から近くのデイケアで働き始めて以来、平日の休みがなくなり、珈琲店巡りや展示会・セミナーなどに行くのが大変になってしまったが、やはりこれだけは見逃せない、ということで、水曜日に休みを取ってカフェレスジャパンに行ってきた。この展示会はSCAJ始め大半の展示会が中止となった昨年コロナ禍の中でも中止されずに毎年開催されてきた、珈琲関係者には貴重な展示会である。でもなんで僕は昨年行かなかったのかな、と振り返れば、それはちょうど町田市への引っ越し日と重なって、それどころではなかった、という実情があったのであった。でも今年は!
CafeResJapan2021
左に行くとカフェ&レストラン・ショーで、右に行くとなぜか終活の展示会。なんとも対照的な!

さて、あらかじめ申し込んでいたセミナーは水曜と金曜にあったが、さすがに2日は休めず、金曜のROSTROさんのセミナー「美味しいコーヒー」の定義と作り方を徹底解説、に出るのは断念して、水曜日にあった小川珈琲さんの、カッピングでコーヒーを飲み比べよう! ~エアロプレスコーヒーの抽出体験~と、堀口珈琲の堀口さんご自身による、コーヒーテースティングの仕方 (おいしいコーヒーを味わうためのテースティング方法)に出席してきた。

前者は思っていたよりも豪華な内容で、パナマのエスメラルダ農園のゲイシャ豆を含む5種類の特徴的な珈琲をカッピングしてから、さらにグァテマラ・エルインヘルと農園の水洗式豆とブラジル・ベレーダ農園のナチュラル豆をエアロプレスで淹れて飲む、というものであった。笑顔がチャーミングな小川珈琲のチーフバリスタさんによる講義。なかなか充実した内容であった。
小川珈琲エアロプレス・セミナー

そして二つ目は、堀口珈琲の創始者、堀口さんによるセミナー。こちらは昨年、出版された「THE STUDY OF COFFEE 」の内容そのものであったが、破天荒な堀口さんの講義はとても楽しく、かつインスピレーションを呼び起こす内容であった。熱弁しているとマスクがしょっちゅう外れてしまう堀口さんがなんとなく可愛らしかったな。

堀口さんセミナー

一方、展示会の方は規模的にやはりかなり小さく、珈琲関連のブースだけであれば半日あれば十分に回れるものであったが、その中で気になったものをいくつか紹介する。

まず、家庭焙煎マニアの間では世界的に大人気の台湾Aillio社のBullet R1焙煎機。電気式ながら、IHで窯を熱するというもの。ブタの置物のような可愛い姿の焙煎機は間近で見ると意外と大きい。ただ持ち上げてみるとそれほど重くはなく、十分に一人で移動できる。これが焙煎デモをやっていたので、あちこち触らせてもらいながら見学していたが、お客さんのやった豆のドロップの仕方が悪かったのか、ドラムの内側と外側の間に焙煎豆が挟まってしまい、フラップが閉まらなくなる、というアクシデントが発生。う~む、思っていたより使い辛そう。ただ僕のCR600よりも優れている点は、設定プロファイルに沿って自動運転ができるところ。味の再現、という意味ではBulletに分がある。
Ailio Bullet
Ailio Bullet 豆スタック

次はネスカフェのサブスク焙煎機、ROASTELLIER。これはあらかじめ水抜きした焙煎豆を専用焙煎機で焙煎することで、誰でも失敗なく焙煎出来る、というコンセプトの商品である。要するにダブル焙煎である。こちらは最大250gとは思えない巨大な図体にちょっとびっくり。うーむ、うーむの世界。これ売れてるのかなぁ。
NesCafe ROASTELIER

お次は、生COFFEEという商品。これは先日僕も作ってみたいわゆるホワイトコーヒーのことで、ほぼ生に近い珈琲豆に通常の焙煎豆を少しブレンドしたものを微粉状にしたもの。これをお茶風にして飲んだり、隠し味としてケーキやカレーなどに入れて使うとのこと。生豆に多く含まれるクロロゲン酸が壊されずにそのまま接種できるのがミソ。しかし価格は90gで6400円である。ちょっと高すぎじゃないかなぁ。これじゃ漢方薬だ。
生COFFEE

ブランディング・コーヒーのブースに合ったタイムモア(?)のコーヒースケールは、発売前のものであったが、最高級ブランドのacaiaのスケール並みの性能が1万円以下で売り出されるらしく、発売されたらちょっと欲しいかも。あと、同じくこのブース展示していたKrinderのハンドミルもなかなか魅力的であった。鋳鉄のコニカル刃を装備したミルは軽くて握りやすく、しかもよく切れる。定価12000円はなかなかいい線かもしれない。

タイムモアのスケール新製品


こちらはちょっと際物的な、超音波を使った水出し珈琲抽出機。通常なら一晩かかる水出し抽出を超音波を使うことで5分くらいに縮めることが出来るらしい。しかし試飲した珈琲はちょっと濃すぎて、僕には受け付けなかった。
メガネブク抽出器


そして帰り際に見つけたのがこれ。ローストアナライザー、X-Rite社のCM-100の後継機。これは発売されたらはっきりと欲しいと思える商品である。小型で高性能、価格も10万円を切る予定とのことで、アナライザーとしては破格に安い。なにやら内部にカラーチャートが入っていて、珈琲粉の色とそれと比較することでAgtronのL値を見つけるようにしたことでコストダウンできたらしい。早く発売して欲しいものである。

RM200ローストアナライザー

SandBox3段階焙煎-イルガチェWashed編

本日は仕事に出掛ける前の朝飯前、ならぬ昼飯前の1時間で、SandBox内のプリセット3段階連続焙煎のテストを行った。昨日はナチュラル精製豆を使ったため浅煎りでも綺麗に膨らんだが、本日は綺麗な豆面に焙煎するのが困難な高地産ウォッシュト精製豆、その代表ともいえるエチオピア・イルガチェフェ・ウォッシュトである。というのもSandBox本体とは別に昨日、なぜか珈琲問屋からこのイルガチェとコロンビアナリーニョがSandBoxの付録として送られてきたので、早速これを焙煎してみた形である。

Sandbox付属生豆

まず、300gのイルガチェフェ生豆から完全に欠点豆を取り除いて、3分割したものを用意。これをSandBoxのプリセット・プロファイル(Normal3段階)で自動焙煎する。
イルガW生豆3分割

今回観察していて気が付いたのは、この焙煎プロファイルでは浅煎りほど時間をかけて1ハゼ開始にもっていっている、ということである。一方、1ハゼ後のカウントダウンは以下のように当然ながら深煎りほど長いため、結果としてトータルの焙煎時間はどれも近いものになる。また、Sandboxのプロファイルは、いずれも焙煎開始からRORが一貫して減少していくものであるが、僕は最近CR600でもこの形を目指すようにしている。
SanBox3段階焙煎プロファイル比較


一方、焼き上がったものは以下のように豆の色だけでくっきりと違いが分かるものである。
イルガ3段階焙煎bySandbox

焙煎による重量変化、焙煎指数は以下のとおりである。

浅煎り:88.7% (1.127)
中煎り:85.9% (1.164)
深煎り:82.7% (1.209)

さて、明日はこれをカッピングして、それぞれの焙煎度による味わいの違いを比べてみようと思う。

<追記> 2021/5/30
1日置いて3種類を飲んでみた。結果は断トツで中煎りが美味しく、イルガチェフェ・ウォッシュトらしい爽やかな柑橘系の酸味とティーライク・フレーバーが心地よい。次が浅煎りでこれもティーライク・フレーバーは出ているが、フレーバーの強さや味わいの点で中煎りに比べて見劣りしていることは否めない。最後の深煎りであるが、これはもう完全にイルガチェフェ特有のモカフレーバーを失っており、普通に美味しい珈琲、といった具合である。ここまで焙煎度に差があると味の差は分かりやすいが、サンプルロースターとして使うならば、焙煎度についてはせめて5,6段階は欲しいところである。自分で作った焙煎プロファイルが保存できるのかなど、使いこなすにはもう少し研究が必要である。

Sandbox Smart ロースター

2月半ばにマクアケ・クラウドファンディングで申し込んだ台湾製の小型焙煎機 SandBox Smart Roasterが先日ようやく届いたので使ってみた感想を少しばかり報告したい。この焙煎機が画期的なのは、このサイズと価格でスマホとBluetoothで繋がって、焙煎中のプロファイルを管理できる点である。

最大焙煎量100gに対して、マクアケ先行価格でも88000円というのは少し高いと思う人も多いかもしれない。しかし各種焙煎機を持っている僕にとってはサンプルローストするのに都合が良いサイズである。同様なことができるIKAWA/Panasonic The Roastの本体が20万円以上することを考えると、まぁ安いとも言える。実際、マクアケ達成率は6000%となっており、採算分岐点の60倍も人気があったようである。この焙煎機は分類的には「電気式&直火式 」であり、僕のコレクションにはないタイプであることも購入動機となった。
SandBox_Laos比較準備

<僕の焙煎機コレクション>
----------------------------------------------------------------------------------
手網(普通の手網、Dr MAHN) 直火、ガス
手網  (煎り上手) 半熱風に近い直火、ガス
Union 手廻しロースター 半熱風、ガス
GeneCafe Roaster 完全熱風、電気
Cormorant CR600 直火/半熱風切替、ガス、
SandBox Smart Roaster 直火、電気

さてSandBoxの話に戻って、使い勝手はどうかというと、これがなかなか微妙である。
電気式小型焙煎機の課題は一般的に焙煎豆の冷却性能であるが、SandBoxはここをあっさりと諦めて外で冷却する方式である。これは焙煎している者から見れば良い決断だと思うが、初心者にとっては恐らく以下の点でハードルが高くなると思われる。
SandBox生豆投入

1) 予熱で熱くなった焙煎機本体に焙煎カゴを手で入れるのがちょっと原始的
2) 熱い焙煎機から焙煎カゴを取り出して、焙煎豆を冷却機に移す作業が大変
3) 焙煎機の内部や外に飛び散ったチャフの掃除が煩雑
SandBoxチャフ汚れ

特に2番はトリッキーで、実際僕は初回焙煎では慌ててしまい、焙煎カゴを開ける際に熱い焙煎豆をログハウスのベランダにぶちまけてしまった。付属のグローブが馬鹿デカく指先が不自由なせいでもある。でもこれは、熱い焙煎カゴをまず冷却装置のザルにそのまま乗せてから、落ち着いて蓋を開けることで解決した。

SandBox焙煎豆冷却

一方で、焙煎自体は開始から終了までスマホでモニターしながら、お任せもできるし、慣れれば少し自分の味付けで制御も可能な点はとても快適である。

ただしお任せとはいっても、この焙煎機は一ハゼ開始のタイミングを自分で入力してあげる必要がある。従来の小型焙煎機は温度と時間だけで自動的に焙煎度合いを決めて豆排出まで行うのに対して、より実際の焙煎士が行う作業に近いことをやらせる点が第2の画期的な点である。一ハゼ開始ボタンを押すと焙煎停止までのカウントダウンが始まるが、これはDTR (Development Time Ratio)の概念を取り入れたのかもしれない。つまり1ハゼ開始~豆排出までの時間(Development)が焙煎トータル時間の何パーセントかが大事、という考え方である。
SandBox焙煎モニター

付属のプロファイルでは、RORは焙煎開始時に高く、その後は単調に減っていくようになっている。

SandBox焙煎度設定

ということで今回は、随分前に珈琲問屋のバーゲンで買って少しだけ残っていたラオスのナチュラル精製を、浅煎り、中煎りの2つに煎り分けてみた。この豆は正直、相当オンボロで、欠点豆のオンパレード、浮豆だらけ、というものであるが、丁寧にこれらを取り除いたものを同量に分けたものを用意した。

自動焙煎モードは3段階のみ、それを通常スピード、スロースピードの2段階に分けて6種類が選べるようになっている。なお、VIP会員という有料サブスクに入ると、珈琲豆の産地毎に開発した特別焙煎プロファイルを使えるようになるが、今ある選択肢はとても限られていてサブスクまでする価値は薄いかもしれない。
Sandbox焙煎度メニュー

結論から言って、焼き上がった豆に浅煎り、中煎りともムラは全くなく大変綺麗である。また、3段階だとさすがに浅煎りと中煎りで、かなりくっきりと差が分かる色合いとなった。
SandBox焙煎度比較1


予熱の設定は初期設定では190度となっており、到達するのに4分弱の時間がかかった。2回目の焙煎では、Coolingプロセスを途中で止めて直ぐに次の焙煎に入ることで半分以下の時間に短縮できる。この手の小さな電気式焙煎機で、Back to back焙煎OK、と明言しているものは意外と珍しいかもしれない。
SandBox焙煎開始合図


次は同じ生豆を100gずつ6セット作って、それらを6種類の自動焙煎モードで焙煎して、見た目の違いや珈琲液にした時のカップの違いなどを確かめてみようと思う。

White Coffee

White Coffeeと聞けば、日本人なら大半がミルクの入った珈琲を思い浮かべるだろう。しかし北米では、特に健康志向の高い人達の間では別のものを意味し、それは超浅煎りの珈琲のことである。健康志向の高い僕としては急に実験してみたくなり、たまたま見つけた以下のサイトの情報を元に早速作ってみた。

What is White Coffee? | Poverty Bay Coffee Company

使ったのはコスタリカの豆で、焙煎機への投入温度はかなり低めの100度、取り合えず書かれていたレシピどおり、BT(豆温度)が華氏325度(摂氏163度)になったところで煎り止めした。焙煎時間を長めにするために、Diffuerを閉めて半熱風焙煎モードにして、ガス圧はずっと低いままにした。
WhiteCoffeeRoastProfile

焙煎後の珈琲豆はいわゆる Yellow Pointに近い状態で、当然この温度ではハゼなど起こるべくもなく、水分重量減はわずか5%程度である。さて、どんな味がするのか。
WhiteCoffeeCostRica

White Coffeeはかなり硬いので、生半可なコーヒーミルでは挽けない。しかし僕は ZProという高性能ミルを持っているので、これを使ってガリガリと挽いてみた。さすがにちょっとハンドルを回すのは重かったが、まぁあっさりと挽けた。

WhiteCoffeeGround

これを、V60を使って90度のお湯で普通にペーパードリップしてみた様子が以下のとおり。
WhiteCoffeeBrewed1

もちろん粉は全く膨らまない。出来上がった液体はもう全くコーヒーの体をなしていない。しかし飲んでみると、酸味は全くなく、むしろ仄かに甘い。カスカラティーの味に近いもので、まぁ普通に飲める、といったところ。

昨今、しばしば話題になる健康成分、クロロゲン酸は熱で大半が分解されてしまうため、元々生豆に豊富に含まれていたそれは、普通に焙煎すると浅煎りでも半減、深煎りではほぼ消失してしまうらしいが、White Coffeeなら豊富に含まれたままである。そしてカフェインは普通に含まれている。ということで、抗酸化作用や血糖値上昇の抑制、脂肪吸収の抑制などを期待してのコーヒーの飲み方としてWhite Coffeeは一つの有効な選択肢なのかもしれない。ただ、まったりとしたとした味は珈琲の味を期待しているとちょっと腑抜けな味なので、現地では深煎り珈琲と半々にしたりして、主にエスプレッソで飲むという話である。機会があれば、本場のバリスタさんが淹れてくれたWhite Coffeeを飲んでみたいものである。

ロピア&丸山珈琲

関東圏、特に神奈川で展開しているロピアという食品ディスカウントスーパーがある。我が家からは古淵店が近く、先日初めて行ってみた。ここは元が肉屋さんということで、食肉売り場の広さとバラエティの多さは、なかなか目を見張るものがある。全般に他の食料品も安く、ディスカウント食品スーパーの王者、オーケーストアにもタメを張れる、と言っている人もいる。というか、売っているものがかなり異なるので、なかなか比べるべくもないが、まぁとにかく安い。特に大きめのパッケージには定評があるようである。

それはさておき、ちょっと驚いたことに、ここにはあの、丸山珈琲の豆・粉が置いてあるのである。丸山珈琲と言えば、僕もたびたびカッピングイベントなどでお世話になっていた、表参道のシングルオリジン店(昨年末閉店)をまず思い出し、どちらかと言えば高級な豆を高くで売っているイメージを持っていた。
ロピア&丸山珈琲

その丸山珈琲がロピアにある。よく見るとブレンド豆だけで、全て頭に「ロピアオリジナル」とついており、どのブレンドも100g当たり398円である。ネーミングもどちらかと言えば安易なもので、なんだか丸山珈琲のイメージとは合わない気がして奇妙な感じでもある。

 マイルドブレンド、バランスブレンド、深煎りビター、深煎りスイート、
 爽やかブレンド、バランスブレンド

そういえば先日、Clubhouseで丸山健太郎氏が生産地での珈琲豆買い付けの冒険談を語っていたのだが、これが奇想天外、まるでインディ・ジョーンズのようで大変面白かった。丸山氏が良い珈琲を入手するために文字通り身体を張ってきたこと、そして彼の気さくな性格を再認識させられた。想像するに、こういう丸山氏の性格を知っていて、ロピアの商品企画担当が交渉したのだろう。

最近、丸山珈琲オンラインに「マルケンの恩返し」という珈琲豆があるが、こちらは100g当たり300円とかなので価格的にはあり得ると思うが、やはりロピアと丸山珈琲というのがなんとなくチグハグだと思ってしまうのは僕だけであろうか。
ロピア&GEISHAブレンド

丸山珈琲の横には、ハマヤのGEISHA Blendなんていうのも置いてある。ゲイシャをブレンドにしているのも珍しいが、他にも他店であまり見かけないブランドの豆が少なからず置いてあり、ロピアの企画担当者はきっと相当な珈琲好きなのではないかと想像してしまった。

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